陸上・駅伝

特集:第88回日本学生陸上競技対校選手権

青学・金井まるみ 判定ミスによる「失格」乗り越え、ハードル界で「存在感出したい」

日本インカレで金井は言った。「勝つこと以上に、自分の走りにこだわりたいです」(撮影・藤井みさ)

第88回日本学生陸上競技対校選手権

9月14日@岐阜メモリアルセンター 長良川競技場
女子100mハードル決勝(向かい風0.4m)
4位 金井まるみ(青山学院大4年) 13秒54

陸上の日本インカレ3日目の9月14日、女子100mハードル(H)決勝は田中佑美(立命館大3年、関大一)が13秒40で初優勝。藤森菜那(明治大4年、浜松市立)が0秒01差で2位に入った。決勝進出者の中で藤森とともにこれが最後の日本インカレだったのが、金井まるみ(青山学院大4年、横浜市立南)だ。13秒54で4位。「やっぱり悔しいです。でもいまのベストは尽くしたと思うので、単純に力不足かな」。金井は苦笑いで言った。

100mハードルで躍進の明大・藤森菜那、寺田明日香の日本新にもらった刺激

あの日を振り返るとき、目にうっすら涙

6月の日本選手権で不正スタートの判定を受け、予選敗退となった。2度目のピストルが鳴ったとき、「動いてしまったかな」と思った。金井はこれまで、フライングをしたことがなかった。大会から2カ月も経った8月28日、日本陸上競技連盟は判定に誤りがあったと発表して謝罪し、金井の「失格」は「審判長の誤判定により出走できず」に訂正された。

この一件をどう受け止めたのか。金井に尋ねてみると、少し間を置いてから言った。「確かにレースができなかったのは悔しかったですけど、次はいいスタートを決めて、いい走りをしたいと思いました。自分のフライングがなくなったのはよかったとは思いましたけど、そこまで気にしてなかったです」。目にはうっすら涙が浮かんだが、前向きな言葉を口にした。

日本インカレでは13秒2台を狙っていた(撮影・藤井みさ)

そして最後の日本インカレに臨んだ。コンディションもよく、「仮に前半遅れても、後半に上げられる」という自信があった。9月13日の予選では13秒63(追い風0.3m)でトップ通過。そして翌14日の準決勝、金井の組で、不正スタートを知らせる2度目のピストルが鳴った。「自分ではないよな」と、すぐに気持ちを切り替えられた。再スタートとなったレースで、金井は藤森に次ぐ2着でフィニッシュした。

城下麗奈さんの青学記録を破りたい

決勝では13秒2台での優勝を思い描いていた。しかし、結果は4位。目指していた場所にはたどり着けなかった。

金井は現在、就活をしながら大学卒業後も競技を続ける道を模索している。「(東京)オリンピックに向けていま、選手が盛り上がってるので、その中に自分も入って走りたいなという気持ちはあります」

今シーズンはまだレースに出場する予定だ。金井の自己ベストは今年5月の木南記念で出した13秒52(追い風1.3m)。13秒2台を目標にしているのには、城下麗奈が2009年に記録した13秒26(追い風1.9m)の青学記録を超えたいという思いもあるという。

城下の青学記録は、金井の中にいつか破りたい記録として刻まれている(撮影・安本夏望)

100mHではこのほど、寺田明日香(29、パソナグループ)が12秒97(追い風1.2m)をマークし、金沢イボンヌが00年に樹立した13秒00の日本記録を19年ぶりに塗り替えた。男子110mHでも高山峻野(しゅんや、24、明治大~ゼンリン)が13秒25(追い風1.1m)で日本記録を塗り替えたばかりだ。

日本新記録樹立が続いているいま、金井は「これからずっとレベルが上がっていくと思うので、しっかり自分も存在感を出していけたらいいな」と意気込んでいる。

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