ラストイヤーに開花した法政大・豊田将樹、400mハードルで世界に挑む
第15回トワイライト・ゲームス
7月28日@慶應義塾大学日吉陸上競技場
男子400mH 1位 豊田将樹(法政大4年)50秒15
陸上のトワイライト・ゲームスが7月28日、慶應義塾大学日吉陸上競技場であった。400mハードル(H)に出場した法政大の豊田将樹(4年、洛南)はタイムレース決勝で1位となった。すでにドーハ世界選手権の参加標準記録を突破している男はいま、何を思うのか。
豊田は前日の実業団・学生対抗オールスターナイト陸上、この日のトワイライト・ゲームスと連日走った。イタリアでのユニバーシアードから帰ってきた際の時差ボケ、そして帰ってからすぐ大学の試験もあり「体調があまりよくなかった」という。その言葉通り、オールスターナイトでは51秒35のタイムで6人中最下位。「最悪なレースをしちゃったんで、とにかく修正して、勝てなくてもいいから元に戻すつもりで」と臨んだトワイライトでは、50秒15で1位。「今日はぎりぎり合格ライン」と語った。
最終学年で芽生えた自覚
今年の豊田の活躍はめざましい。5月3日の静岡国際陸上で49秒84の自己ベストをマークし、リオデジャネイロオリンピック代表の野澤啓佑(早大~ミズノ)についで2位に入った。5月19日のセイコーゴールデングランプリ大阪では野澤を抑えて優勝。さらに5月26日の関東インカレでは49秒25と、またも自己ベストで優勝し、ドーハ世界選手権の参加標準記録49秒30を突破した。このときは「49秒台中盤を出せるぐらいにはトレーニングしてきたけど、さすがにこのタイムはちょっとびっくりです」と驚きを口にしていた。
京都の洛南高校3年生のとき、豊田は日本ジュニア選手権で2位。世界ユース選手権のメンバーに選ばれ、銅メダルを獲得した。「いつかまた世界で戦いたい」という気持ちはあったが、大学3年生までは高校時代の自己記録を更新できなかった。昨冬、ウェイトトレーニングを見直した。それまで「今日はこれをやりたいから」と気ままにやっていたが、初めて計画的に取り組んだ。高校3年生からずっと68kgだった体重は5kg近く増えたという。最終学年になって短距離ブロック長も任され「しっかりいい結果を出して引っ張っていかないといけない」という自覚が芽生えた。
世界選手権の参加標準記録を突破したことで、6月の日本選手権で優勝すれば出場が内定するという状態になった。しかし、日本選手権ではこの種目の日本の第一人者である安部孝駿(中京大~デサント~ヤマダ電機)が48秒80で優勝。豊田はまたもや自己ベストを塗り替える49秒05を出したが及ばず、レース直後は悔しさをあらわにした。
イタリアで実感した海外経験の不足
日本選手権のあとはイタリア・ナポリでのユニバーシアードに出場。「飛行機に乗ると気圧の変化で肺が苦しくなっちゃって、長い時間座ってたりとかもあってヘロヘロになっちゃって」と苦笑い。その影響もあって予選では50秒88だったが、準決勝では49秒80、決勝では49秒27で4位だった。「準決勝からは修正できたんですけど、移動疲れとかそういうのも考慮して調整メニューを組まないといけないかなと思いました。まだ経験が足りないと、自分で感じました」
豊田はまだ世界選手権の出場内定はもらっていないが、参加標準記録を突破しているため、日本陸連の定める「参加標準記録を満たし、2019年9月7日時点の IAAF ワールドランキングにおいて日本人上位の競技者」という条件でドーハへ行ける可能性が高い。8月1日時点での豊田の世界ランキングは20位で、世界陸上に出場できるのは40人。「まだ内定はもらってないのでなんとも言えないけど、一回調子が落ちちゃってるのでしっかり世陸に向けてトレーニングします。休養をとって、ウェイトもやらないと。もう一回トレーニングで体をつくり直したいです」
もう1度法政でワンツーフィニッシュを
次のレースは9月の全日本インカレになる予定だ。今回2日連続でともに走った法政のチームメイト、高田一就(4年、法政二)も出場する。「関東インカレではワンツーフィニッシュしたんで、できれば全カレでもワンツーできたら。まあ、僕が勝ちますけど」。前日のオールスターナイトで1位を取り、この日も自己ベストを出した同期へのライバル心ものぞかせた。
豊田は世界選手権について何度も「どうなのかなー、出られるのかな」と口にし、報道陣に「大丈夫ですよね?」と逆質問していた。東京オリンピックを目指す上では、世界選手権に出場し、できるだけ高いラウンドに進んでポイントを稼ぎ、ランキングアップを目指したいところだ。今年のブレークで「自分は変わってない、周りが変わった」と言っていた豊田。よりよい結果を求められることに、当初は苦しさもあったというが、だんだん気持ちが追いついてきた。「自分は世界を目指していかないと」という思いになったという。
ジャンプアップを果たしている豊田の学生ラストイヤーから目が離せない。