陸上・駅伝

特集:第103回関東学生陸上競技対校選手権

筑波大・高橋亜珠が100mハードルと200mで二冠、飛躍のきっかけをつかんだ冬季

4×400mリレーで力走する筑波大の高橋(すべて撮影・井上翔太)

第103回 関東学生陸上競技対校選手権大会 女子1部100mハードル決勝

5月10日@国立競技場(東京)風+0.5

優勝 髙橋亜珠(筑波大2年)13秒28
2位 林美希(早稲田大1年)13秒40
3位 安井麻里花(青山学院大3年)13秒43
4位 前田光希(筑波大2年)13秒44
5位 川越美咲(法政大4年)13秒52
6位 柳田夏希(駿河台大4年)13秒56
7位 片山心菜(青山学院大1年)13秒62
8位 大野瑞奈(山梨学院大4年)13秒66

5月12日に幕を閉じた関東インカレ女子1部で、筑波大学の高橋亜珠(あみ、2年、山形市立商業)が、専門にしている100mハードルと200mで二冠を飾った。100mハードルでは自己ベストを出し、200mでは大会記録を更新。今後の成長ぶりも楽しみな選手が出てきた。

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決勝で自己ベスト大幅更新の13秒28

9日の100mハードル予選と10日午前の同準決勝で、いずれも組トップとなり、危なげなく決勝に駒を進めた高橋。特に準決勝では13秒52の自己ベスト(向かい風0.1m)をマークし、好調を維持したまま決勝に臨んだ。「前日よりは確実に動けていたので、ベストを更新できるんじゃないかという感じはつかめていました」

決勝のリアクションタイムは0.176。8選手の中で最も遅れたが、172cmの身長を生かし、持ち前のインターバルの速さで5台目あたりから前に出た。2位に入った早稲田大学期待のルーキー・林美希(1年、中京大中京)に0秒12差をつけ、13秒28(追い風0.5m)と準決勝に続いて自己ベストを大幅に更新。筑波大学歴代2位、U20日本歴代2位という好記録が生まれた。高橋はレース後、林やチームメートの前田光希(2年、立命館守山)とお互いをたたえ合い、笑顔がはじけた。

100mハードル決勝で自己ベストを大幅更新し、笑顔がはじけた

「目標がまずPB(自己ベスト)の更新で(13秒)28が出たというのは、自分でも結構驚いているんですけど、すごくうれしいです。日本選手権の参加標準(13秒55)は切っていたんですけど、ターゲットナンバーがギリギリだったので『13秒3台が出たらいいね』という話をしていて、それも達成できて良かったです」

「走る延長線上にハードルがある」意識で

飛躍のきっかけは、冬季につかんだ。左のハムストリングスを軽く肉離れし、約1カ月間走れない時期があった。「みんなと同じような出力の練習ができないことに関して、最初は焦りもありました。ただ、私自身の課題は動き作り。まだ基礎の部分が完璧にできていないという面があったので、その期間に取り組むことができました。今ではプラスだったかなと思っています」

上半身がぶれてしまうことと、腕振りが十分ではないことが、高橋の課題だった。「足を動かせない分、上半身を鍛えたり、ずっと腕振りをしたりしてました。あと、抜き足も遅れてきちゃって、ぶれることがあるので、その形を定めることもしていました」。走れるようになってからは、練習やレースで自身の動きを動画でチェック。これまでは「タイムが良かったらいいレース、悪かったらダメなレース」という考え方だったが、より動きを重視するようになり「タイムはそんなにだったけど、ここの動きが良かった」と自己分析できるようになった。これらの取り組みをすべてぶつけ、勝ちきった決勝だった。

ハードルを跳び越えるのではなく「走る延長」を意識する

決勝の後、今シーズンはどれぐらいまで記録を伸ばしたいですか? と尋ねられると、さすがにまだ、自身の記録に実感がなかったのだろう。「今回のタイムをあまり想定していなかったので、難しいです」と返ってきた。ただ、さらに記録を伸ばすために必要な要素は心得ている。

「もともとスタートは課題です。今シーズンに入ってからは後半の動きも、ハードルを越えている状態が長いというか、もっと『走る延長線上にハードルがある』ぐらいの感じで、できるようになるのが今後の目標です」。まだまだ伸びしろ十分であることを感じさせる言葉だった。

伸びしろはまだまだ十分にある

あくまでハードルに主軸、200mの経験も生かす

12日の関東インカレ最終日には200mに登場し、準決勝で23秒67(追い風1.1m)をマーク。自己ベストを出すとともに、2009年に平成国際大学の高橋萌木子さんが樹立した大会記録を100分の2秒更新した。「準決勝で『決勝への自信をつけたい』と思って、最後も流さずにいきました。その結果、好タイムも出たので良かったです」。さすがに決勝は疲れもあったか、残り2、30mは加速を維持できなかったが、23秒87で優勝。100mハードルとの二冠に輝いた。

本人は、あくまでハードルに主軸を置いている。昨年は100mに出場することもあったが、この冬季に150mや200mといったタイムが伸びたことから、200mにも出るようになった。「気持ちの話になっちゃうんですけど、200の後半は『気合』とか『根性』みたいなのが大事で、そういう面での成長も考えています」。100mハードルを専門にしている以上、100mを走れることは大前提。より距離が長い200mでの経験を、ハードルにも生かそうとしている。

200mでも優勝を果たし、二冠を達成した

最終日には4×400mリレーで2走も務め、ライバル校に引き離されることなく、3位表彰台に貢献する走りを見せた。「練習を含めて400mを走るのは2年ぶりでした。高校のインターハイ予選でマイルリレーに出たとき以来です。正直めちゃくちゃ不安で、レースが終わって安心しています」。女子1部の最優秀選手にも選出され、高橋の長くて濃密な今年の関東インカレが終わった。

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