福岡大・兒玉芽生、100mで日本歴代3位&インカレ3冠 日本女子短距離界に勢いを
第89回日本学生陸上競技対校選手権大会
9月11~13日@新潟・デンカビッグスワンスタジアム
兒玉芽生(福岡大3年)
女子100m 優勝 11秒35(向かい風0.2m)☆大会新記録
女子200m 優勝 23秒68(向かい風0.8m)
女子4×100mリレー 優勝 44秒92(城戸/兒玉/渡邊/加藤)
福岡大学の兒玉芽生(3年、大分雄城台)は今年の日本インカレにおける主役のひとりだった。今大会に100m、200m、4×100mリレーに出走し、すべてで優勝。100mは日本歴代3位、学生歴代2位となる11秒35(向かい風0.2m)をマークした。
走りを解析し、スタートから中盤までの加速を強化
今大会は3日間で開催され、兒玉は初日に100m予選と4×100mリレー予選で2レース、2日目に100m準決勝と200m予選と4×100mリレー決勝と100m決勝で4レース、最終日に200m準決勝と決勝で2レース、計8レースに挑んだ。とくに4×100mリレー決勝の50分後には100m決勝が続くという日程となっていた。
兒玉は昨年の日本選手権200mで優勝しているものの、過去の日本インカレでは、1年生の時は100mと200mはともに予選敗退、2年生の時は100m準決勝敗退で200mは予選敗退。そのためこれほどの過密スケジュールはインターハイ以来だったが、「他の大学より練習が積めていて、質の高い練習ができていると自分の中でも自信がありました」と兒玉は言い切った。
100mと200mではともに、スタートから中盤までの加速を課題にしていた。日々の練習では光電管を用いて一つひとつ動作の確認をしながら走りを解析し、兒玉自身も自分の走りをより理解できるようになったという。
「信岡(沙希重)先生はひとつの枠にとらわれるのではなく、選手一人ひとりの特徴に合わせて指導をしてくださいます。私と先生でズレがあった時はそのままにするのではなく、先生の意見を押しつけるのでもなく、一致してかみ合うまで話をするようにしたり、走ってみて感覚を合わせたりしています。そこは私が福岡大学を選んでよかったところですし、信岡先生の指導の元で陸上ができているから、これだけ結果につながっているのかなと思っています」
8月のセイコーゴールデングランプリでもスタートから中盤までの加速を意識して100mに挑み、11秒62(向かい風0.9m)で当時の自己ベストを更新した。しかしアップまでは意識した動きができていたが、レース本番では思うような動きができなかったという。そこからまた課題に向き合い、今大会に臨んだ。
過密スケジュールを好記録で走り抜けた
初日の100m予選は11秒67(向かい風1.2m)、2日目の準決勝では11秒51(追い風1.2m)で大会新記録を樹立。決勝での走りに期待が寄せられた。その前にはこの1年、兒玉もここで勝つことを思い描いてきた4×100mリレー決勝が控えていた。「日本一になる」と毎日口に出して仲間と目指してきた舞台だ。2走の兒玉はバトンを受け取るとエースとして圧倒的な走りを見せ、トップに立った。アンカーの加藤汐織(1年、大分雄城台)は先輩たちから託された思いも受け止め、そのままフィニッシュ。44秒92と2位の甲南大学に1秒以上の差をつけての快勝だった。
その50分後の100m決勝で兒玉は11秒35(追い風0.2m)をたたき出し、会場には驚きの声と拍手が響き渡った。兒玉自身、今大会は記録よりも自分の走りに集中することに意識を向けていたこともあり、「このような記録が出て非常にうれしく思います」と笑顔で応えた。
最終日には連戦での疲労でだるさを感じていたが、「1点でも多くとって福岡大学に貢献したい」という気持ちで200m準決勝と決勝に臨んだ。決勝でもスタートから中盤にかけての加速を意識。23秒68(向かい風0.8m)で3冠を達成した。1本に集中して速度を上げることは得意な反面、本数を重ねると走れないという弱みを自覚していたが、今回の過密スケジュールの中、記録も出して走り切れたことは自信につながった。
世界リレーで芽生えた世界への意識
同じデンカビッグスワンスタジアムで10月1~3日に開催される日本選手権では、100mと200mで好記録を出しての優勝を目指している。「0.1秒でも0.01秒でも、私自身が自己ベストを更新していくことが、日本女子短距離界のレベルを上げていくことにもつながると思っています」
兒玉は昨年5月の世界リレーで4×200mリレーの日本代表に選ばれ、1分34秒57の日本新記録で4位入賞を果たしている。この時から世界を見据えて陸上に取り組み、日本女子短距離界をけん引してきた高橋萌木子(ワールドウィング)や福島千里(セイコー)へのあこがれは、目指すべき場所に変わっている。
そして思いは東京オリンピックへ。「自己ベストでの優勝で、少し世界に近づいたのかなと思っています」。1歩1歩着実に、夢に向かって歩み続ける。