青学大・石川優が女子1部100mで3年ぶり優勝 がむしゃらから冷静に変わった姿勢
第103回 関東学生陸上競技対校選手権大会 女子1部100m決勝
5月10日@国立競技場(東京)風+0.5
優勝 石川優(青山学院大4年)11秒75
2位 佐藤瑠歩(法政大4年)11秒92
3位 佐藤葵唯(青山学院大2年)11秒95
4位 飯田光咲(東京女子体育大3年)12秒023
5位 鷺麻耶子(早稲田大4年)12秒028
6位 井上瑞葵(青山学院大1年)12秒05
7位 阿部璃音(山梨学院大4年)12秒08
8位 佐藤美里(中央大3年)12秒15
5月10日に開催された第103回関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)2日目の女子1部100m決勝で、青山学院大学の石川優(4年、相洋)が11秒75で優勝を果たした。関東インカレでこの種目を制したのは、1年生だった2021年以来。何度もケガに悩まされてきたスプリンターは、大学ラストイヤーで自己ベスト更新をめざす。
今シーズンは「冷静に走る」をテーマに
前日の予選で11秒77をマークして組1着に入り、決勝の日の午前に行われた準決勝からコンディションは良さそうだった。「準決勝のリアクションタイムがすごく良くて(0.125)決勝も悪くなかった。後半も自分の伸びを生かして、しっかり大きく走れたと思います」
5レーンに入った石川。決勝のリアクションタイムは出場8選手の中で最も早い0.148だった。スタート直後の低い姿勢での走り出しから、上体を上げたときには、すでに他の選手より前に出ていた。最後まで流すことなくゴールすると、笑顔でガッツポーズ。トラックに一礼し、同じく決勝に残っていたチームメートの佐藤葵唯(2年、市立船橋)や井上瑞葵(1年、東海大相模)と喜び合った。
「自分の中でずっと『冷静に走る』ということを心がけて、今シーズンはやっています。その結果が実って、1年生の時ぶりに優勝ができたことはすごくうれしいです。国立の高速タータンだったので、タイム的にはちょっと悔しい結果ではありますが……」。優勝を喜びつつも、自分はまだまだやれるということをにじませる、レース後の受け答えだった。
前傾気味に走ってしまう癖を防ぐため
高校3年のときに日本選手権の女子100mで3位に入り、インターハイでは100mと200mの二冠。大学1年目から関東インカレで100mと200mの二冠を達成し、東京オリンピックには4×100mリレーのメンバーにも選ばれた。学生短距離界で突出した存在の石川だったが、その後は右ハムストリングスの肉離れに悩まされるようになった。
2年目の関東インカレはスタートラインに立つことができず、4月の学生個人選手権を制して復活の兆しが見られた昨年は、予選を11秒67(追い風3.6m)で通過したものの準決勝を棄権した。「2、3歩目ぐらいで肉離れをしてしまって……。その後のアップとかで動いてはみたんですけど、どうしても痛みがあって走れなかったです」。対校戦としてチームで戦っているのに、貢献できない自分がもどかしかった。
原因は「前傾気味で走ることがある」ことだと自己分析している。「前傾で前に振り出しちゃう癖があって、そうするとハムストリングスが突っ張ってケガにつながるんです」と石川。少しでも防ごうと、体幹を鍛え、腹圧をきちんと入れてから走るようになった。
昨年9月あたりからは、座骨のあたりに違和感が出るという別の悩みも出てきた。準決勝で敗れた日本インカレのときには痛みもあり、かばおうとすると、再びハムストリングスを痛めてしまうことがあったという。今でも練習は続けられているが、まだカーブを曲がるときに不安が残るため、関東インカレは100mと4×100mリレーの4走に専念した。「うまく自分と向き合いながら、ハムには絶対に負担がかからないようにやっています」
後輩たちからも絶大な信頼
今シーズンは4月の織田記念で11秒77を出し、日本人トップに入った。関東インカレも制し、次なる目標は6月の学生個人選手権、さらには同月末に開催される日本選手権での優勝だ。「まずは自己ベスト(11秒48)を絶対に更新したいですし、11秒3台を出して兒玉芽生さん(ミズノ)や君嶋愛梨沙さん(土木管理総合)に近づきたいです」
1年生の頃は、がむしゃらに走るだけだったが、幾度となくケガを繰り返したことで「今の状態だったらどのようなアップをしたらよいか」と冷静に考える力が身についたという石川。後輩3人と挑んだ4×100mリレーは44秒95を出し、「バトンを渡せば優勝できるという感じがしたので、安心して渡しました」(3走の井上)と絶大なる信頼を得ていた。本来の走りを少しずつ取り戻し、再び国内トップの舞台へ返り咲く。