陸上・駅伝

特集:2023日本学生陸上競技個人選手権大会

青山学院大・石川優が女子100mで2年ぶりの優勝 けがから学んだ「焦らない」心得

2年ぶりに女子100mを制し、復活を印象づけた青山学院大の石川(すべて撮影・藤井みさ)

2023日本学生陸上競技個人選手権大会 女子100m決勝

4月22日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

1位 石川優(青山学院大3年)11秒55  
2位 三浦由奈(筑波大4年)11秒67
3位 岡根和奏(甲南大2年)11秒74

青山学院大学の石川優(3年、相洋)が復活を印象づけた。4月22日に開催された2023日本学生個人選手権大会の女子100m決勝で、11秒55(追い風1.2m)をマークし、2年ぶりとなる優勝を飾った。ルーキーイヤーから大活躍してきたにもかかわらず、昨年はけがに苦しんでいた石川が帰ってきた。

独走態勢も焦らず、できることに集中

100mは1日で3本を走って、優勝者を決める。午前10時から行われた予選は11秒91、午後2時前からの準決勝は11秒60とタイムを上げ、いずれも走った組の1位で決勝まで勝ち上がった。この日は気温が終日、15度程度で「思ったよりも寒くて、予選はアップもちょっと足りなかったのかなと思いました。準決勝と決勝は、しっかり体を温めて、服を着込んで、なるべく冷やさないということを意識していました」。

迎えた決勝。4レーンに入った石川は「スタートは出遅れもなくという形で入れました」。リアクションタイムは0秒133。決勝を走った8選手のうち2番目の反応速度で、石川が最大の持ち味としている後半につなげた。50m付近からは、周りの選手が視界に入らないぐらい前に出ている感覚があったという。

50m付近から自分が前に出ている感覚があった

「結構独走できているのではないか」と考えたが、ここから焦ることはなく「最後まで自分の走りで、走りきろう」と自分ができることだけに集中した。2位に0秒12差をつけてトップでゴールすると、両手で頭を抑えて喜びと驚きを表現。タイムが「11秒55」と表示されると、石川は跳びはねて喜んだ。バックスタンドに駆けつけて応援していた仲間たちからも歓声が上がった。

同期のウォーミングアップを観察

高校3年のときにインターハイで100mと200mの二冠。その年10月に行われた日本選手権は100mで3位に入った。青山学院大に入学した翌2021年も石川の勢いは止まらず、関東インカレで100mと200mの二冠に輝き、その年の東京オリンピックでは400mリレーのメンバーとして選出された。

しかし大学2年目の昨シーズンは、けがに泣かされた。

6位に終わった昨年の学生個人選手権の後から、右のハムストリングスが痛み始め、少し治っては再び痛めるということを5、6回繰り返したという。ただ今となると「あのしんどかった時期があるからこそ、今の自分があるのかな」とポジティブに捉えられている。

けがを経験したからこそ学んだことは? と尋ねると「焦らないことです」と答えてくれた。本番への準備段階から「アップ不足なんじゃないか」と不安になり、ついついやりすぎてしまうことがあった。しかし、けがを経て今回は「自分に今必要なことは何か」を冷静に見定め、行動できるようになった。「同期のアップの仕方を見るようにして、けがをしている選手も『そういうときはどうしているんだろう』と観察するようになりました。そこが自分の中ではプラスになったところかなと思います」。昨シーズンの後半はまったく試合に出られていなかったが、昨年12月ごろから練習にも合流できるようになった。

1着でゴールし「復活できた」と笑顔がはじけた

大学1年のときより筋力も技術もアップ

石川の自己ベストは、大学1年のときに日本学生個人選手権でマークした11秒48。復活した今シーズンは「自己ベスト更新」を一番の目標に掲げ、6月に行われる日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)での優勝も狙っている。「11秒48を出したときの感覚と、さっきレースをしたときの感覚が結構同じだった」と石川。ここから順調に練習を積めれば、可能性は十分にある。

また今回マークした11秒55は、7月末から中国・成都で行われる「FISUワールドユニバーシティーゲームズ」への派遣記録と同じだ。石川本人は国際大会への思いも強い。「東京オリンピックのリレーメンバーに選ばれたことは良かったし、うれしかったですけど、実際に走ることができなくて悔しい思いをしました。ただ海外選手たちの走りを生で見ることができたので、もし今回選ばれたらそういった経験を生かしていきたいです」

東京オリンピックで走れなかった悔しさをこれからの舞台でぶつける

華々しいデビューを飾った大学1年のときから本格的にウェートトレーニングに取り組み、筋力もついてきた。走りの技術面は高校のときに培ったものに大学での練習メニューが加わり、走り方の基礎をイチから教わる機会も得た。「大学1年のときよりどちらもアップしていると思います」とさらなる上積みも見込める。

3年生となり、後輩も増えた。「1年生のときに活躍したおかげで、今の1年生も自分のことを知ってくれている選手がいる。先輩もいますが、そこは自分も後輩たちを引っ張っていきたいし、見本にならないといけないです」。一度苦しい経験をした石川が今後、どこまで飛躍するのか、今から楽しみだ。

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