青山学院大・志貴勇斗 悔しさ味わってきた新主将、エースに頼らず最強チームをめざす
昨年の駅伝シーズンでは、駒澤大学に出雲・全日本・箱根の三冠を許した青山学院大学。今季、王座奪還を狙うチームの主将を務めるのは志貴勇斗(4年、山形南)だ。志貴は2年のとき、第98回箱根駅伝で1区を走って青学大の総合優勝に貢献。しかし昨年は調子が上がりきらなかった。出雲駅伝は4区に出走したものの区間6位、全日本大学駅伝、箱根駅伝は共にエントリーから外れた。高校時代から部長経験がある志貴が、優勝の歓喜とエントリーから外れた悔しさから得たものをどのように生かし、チームを作り上げるのか。副将の小原響(4年、仙台二華)とどのようにチームをまとめるのか、注目される。
主将になる上で大きかった神林勇太さんの存在
志貴が主将になる上では、2020年度に主将を務めた神林勇太さんの存在が大きい。1年生の頃、同じ部屋の先輩が神林さんだった。2021年の箱根駅伝、神林さんは大学最後のレースをけがのために走れず、給水係に回った。当時から選手に慕われ、背中で引っ張るキャプテンだった。本番でしっかり出し切る実力もある。そんな姿を間近で見てきた志貴は、神林のようなキャプテンを目指すという。
昨シーズンは実力者がそろい、一つ上の学年は「最強世代」と呼ばれるほどだった。しかし出雲、全日本、箱根と故障やアクシデントの影響で、なかなか足並みがそろわなかった。エース区間を走ったのも、アクシデントがあった5区と6区を埋めたのも、シード権争いから3位に順位を押し上げたのも「最強世代」。先輩たちの力に頼る形となった。今シーズンも駅伝は厳しい戦いが予想される。だからこそチーム全員で戦える駅伝へ。一人ひとりが走ることへの自覚を持ち、万全な状態でシーズンを迎えられるチーム作りを目指す。
まとまりがあり、意見を言い合える世代
新4年生は仲が良く、まとまりがある世代。一方で意見を言い合える関係でもある。弱みを挙げるとすれば、駅伝未経験者が多いということだろう。エースには3年連続で箱根を走ってきている佐藤一世(4年、八千代松陰)の名前が挙がるが、原晋監督からは「エースに頼らないチームに」という話があったという。「まずはトラックシーズンで結果を残し、良い流れで駅伝シーズンにみんなで向かいたい」と意気込んだ。新4年生にとって、今年は経験する大会すべてがラストとなる。少ないチャンスをつかみ取り、有終の美を飾る姿を待ち望む。
志貴個人の目標は駅伝で区間賞を取って、チームに貢献することだ。昨年は思うように走れずに苦しんだ。ただ現在の調子は右肩上がりのようだ。本人は「60%くらい(笑)」と絶好調ではないと強調する。前期のハーフマラソンで結果を残して主力の一員として認めてもらい、いい形で駅伝シーズンにつなげられる1年に。そこで120%の力を出せることを期待したい。
別府大分毎日マラソンへの出場も狙う
駅伝では1区を希望する。各大学の選手たちと一斉にスタートを切り、レースの流れを作る重要な区間だ。一般的に1区は、集団走でライバル校の顔色をうかがいながら走るため、自分本来の力を出しづらい。難しさも伴う中、志貴は2年のときの全日本と箱根で1区を走り、全日本は区間4位、箱根は区間5位と好成績を残した。自信を持って堂々と走る志貴の姿は、続く走者たちに元気を与えたことは間違いない。「集団で走ることは得意ではないが、本番で力を出し切れることは長所」と話してくれた。
また別府大分毎日マラソンの出場も、大学生活での最終目標に掲げる。志貴は今年3月の高知龍馬マラソン2023で、初マラソンに挑戦。「率直にいうと、長かった。とりあえず長かった。でも応援の中で走れたことは楽しかったし、別大マラソンの前に1回走れたことはいい経験になった」。マラソンではこの春に卒業した横田俊吾(現・JR東日本)が2時間7分47秒の学生新記録をたたき出し、それがいい刺激となっているという。この1年間で志貴が成長し、横田の記録を破ることが出来るのか楽しみだ。
1年生が練習に加わり、新チームでの活動が本格的に始まる。志貴は合宿を経て「主力にも故障者は出ているが、少しずつみんなが練習に参加できていければいいなと思う。トラックで青学の存在感を示し、駅伝では必ず王座奪還を」と強い意思を示した。負けを知った青山学院大学は強い。駅伝シーズンでは、また強さを見せつけてくれるだろう。