陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

青学大・近藤幸太郎、最後の箱根路へ 怪我から復帰、さらに強くなった頼れるエース

怪我を乗り越えパワーアップした近藤は、力強い走りで常に仲間を鼓舞する(すべて撮影・青山スポーツ新聞編集局)

青山学院大学のエース、そして大学長距離界のエースの一人として多くの人が近藤幸太郎(4年、豊川工)の名前をあげるだろう。4年間地道に練習を積み重ね、人一倍努力してきた近藤は、今では誰もが認めるエースへと成長した。

1年から箱根駅伝の16人のエントリーメンバーに入り、2年次の全日本大学駅伝が三大駅伝初出場となったが、2区区間13位とほろ苦いデビューとなった。その後の駅伝はすべて出走し安定感は抜群だ。そして3年次に5000m(13分34秒88)、10000m(28分10秒50)の青学記録を樹立した。

頼れるエースの大復活! 怪我で出遅れた最後のシーズン

3年間怪我なく走ってきた近藤にとって、ラストシーズンは苦しい始まりとなった。第98回箱根駅伝から1カ月後に控えていた別府大分毎日マラソンに出場予定であったが、左のかかとの疲労骨折により棄権した。4月には記録会で姿を見せるも、またも怪我に苦しめられ長期離脱を余儀なくされた。

時は流れ、9月11日。近藤は第91回日本学生陸上競技対校選手権大会(全日本インカレ)5000mに姿を現した。実に5カ月ぶりのレースであった。近藤は前回大会の覇者ということで注目を浴びていたが、久々のレースということもあり「内心不安で仕方なかった」と言う。目標は8位、あわよくば優勝であった。

試合は32度の猛暑の中で行われたが、暑さが得意な近藤はものともしない。余裕があったという近藤は留学生にぴたりとつけレースを進める。4000m付近でロングスパートをかけると独走状態に。力強い足取りで後続を引き離しにかかる。見事2連覇を果たし、駅伝シーズンへ弾みをつけた。

5カ月ぶりのレースで見事優勝し、満面の笑みを浮かべた

悔しさが残った出雲駅伝

待ちに待った駅伝シーズン。三大駅伝初戦の出雲駅伝では、前回大会で区間賞を獲得した1区ではなくエース区間と呼ばれる3区を担った。同期の横田俊吾(4年、学法石川)から4番手で襷(たすき)を受け取る。駒澤大学の田澤廉(4年、青森山田)が先頭を走る中、2番手まで上がりたいと考えていた。かなり突っ込んで入り順天堂大学と中央大学を抜き、田澤との差が広がらないようにという思いで必死に走っていたという。

結果的に田澤が胃腸炎明けとはいえ、区間記録はわずか1秒差に迫った。しかし、「他の選手ともあまり秒差がなかったため、少し不安の残る結果だった」と話す。チームとしては4位となり三冠の夢は途絶えた。

自信につながった、全日本大学駅伝での走り

二冠を懸けて臨んだ全日本大学駅伝では、昨年と同じ7区を任された。当日は日差しが強く「ずっときつかった、5kmでやめようかなと思ったくらい」と笑うが、やはり近藤は暑さに強い。かなり調子が良かったという近藤は、スタートして早々に順天堂大と國學院大学に追いつき差を広げていったが、突っ込んで入ったという感覚はなかったという。「出雲駅伝では田澤の背中が見えていたため意識していたが、全日本大学駅伝ではいかに後続の大学を離して2位を守れるかということだけを考えていた」と話す。

大幅に区間新を更新する好走で、区間2位となった。出雲駅伝とは異なり他の大学の選手に圧勝することができたので、かなり自信になったという。また、アンカーの宮坂大器(4年、埼玉栄)主将との襷リレーには胸が熱くなるものがあった。真面目なキャプテンでありながら、ずっと怪我で苦しんでいる姿を側で見ていた近藤は、「やっと宮坂が三大駅伝を走れると決まった時は本当にうれしかった。宮坂が襷を待っている瞬間が見えた時は、こみ上げてくるものがあった」と語る。

駅伝で抜群の安定感を持つ近藤、箱根駅伝ではどんな走りを見せてくれるのだろう

青学のエースとして、最後の舞台で最高の走りを

安定して駅伝でも結果を残している近藤だが、実は区間賞は3年次の出雲駅伝での一回しかとったことがない。「最後の箱根駅伝では区間賞を狙って頑張りたい」と闘志を燃やす。

箱根駅伝の希望区間を聞くと、「競らなくていいし気持ち的に楽だから10区を走りたい」と笑顔で答えたが、どんなにタフなコースでも走り出すと別人のようにスイッチが切り替わるのが近藤だ。きっとどこに配置されても、任された区間で力強い走りを見せてくれるだろう。青山学院大学のエースとして、最後の箱根駅伝で有終の美を飾ってほしい。

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