陸上・駅伝

特集:2023日本学生陸上競技個人選手権大会

青山学院大学・宇田川瞬矢 2年目の自覚「負けてられない」駅伝メンバー入りを目指す

強気の走りで先頭に立った宇田川(すべて撮影・藤井みさ)

2023日本学生陸上競技個人選手権大会 男子1500m決勝

4月21日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

1位 高村比呂飛(日本体育大3年)3分43秒70    
2位 宇田川瞬矢(青山学院大2年)3分44秒03
3位 大野聖登(順天堂大1年)3分44秒28
※すべて大会新記録

421日の学生個人選手権男子1500m決勝で、青山学院大学の宇田川瞬矢(2年、東農大三)が2位に入った。ラスト1周までトップに立っていたが、日本体育大学の高村比呂飛(3年、敦賀気比)にラストの直線でかわされ2位となった。

 ラスト1周までトップも、最後に差され2位に

「一番取っちゃいけない順位でした」。レース後、宇田川は悔しそうな表情でそう口にした。1日のうちに予選と決勝で2本走るタフなスケジュール。1140分からの予選では余裕を残しながら組トップでゴール。1540分からの決勝では、先輩の山内健登(4年、樟南)と最初から前を引っ張るという指示があり、その通り集団の前に飛び出し山内と2人で先頭に立った。

残り1周となったところで山内が落ちたが、宇田川はペースを保ったまま先頭を走り続けた。しかし一気に切り替えてきた高村に最後の直線で抜き去られると、わずかに及ばず2位となった。

高村のスパートに追いつけず、悔しいゴールに

「先輩にも手伝ってもらってユニバの標準である343秒を切って、1位通過したいと思っていたので、それができませんでした」。ラスト1周で高村が後ろから迫ってきているのはわかっており、残り100mもそのまま行けるかなと思っていたが、「高村さんのスパートがすごかったです」と舌を巻く。12本というハードスケジュールとなったことについては、「青山学院はスタミナの練習がほとんどなので、そこまで苦しくなく、1本目は楽に、2本目にはベストを狙うという形で問題なくいけました」と話す。

 スタミナ不足を自覚し「土台作り」

宇田川は昨年のルーキーイヤー、5月の関東インカレ1500mでいきなり2位となり表彰台にのぼった。このまま順調に箱根駅伝も狙っていきたいと考えていたが、夏を経て先輩たちの練習量やレースを見て、自分とメンバーに入る選手の大きな違いを知った。スピードにはかなり自信があったが、圧倒的にスタミナが足りないと感じ、後期からは土台作りをメインと考えて2年目から駅伝を狙っていこうと切り替えてやってきたという。

本当の敵はチーム内ではなく、外にある。チームの結束をより高めて切磋琢磨していきたい

トラックシーズンが始動してから、宇田川は326日のADIDAS TOKYO CITY RACE 5km49日の絆記録会1500mに出場し、そして今回。次の週末はドイツのアディダス本社で開催されるADIZERO ROAD TO RECORDS 5kmの部に同級生の黒田朝日(玉野光南)、荒巻朋煕(大牟田)、皆渡星七(関大北陽)、先輩の太田蒼生(3年、大牟田)とともに出場予定だ。さらにゴールデンウィーク明けには関東インカレが控えている。なかなかのハードスケジュールですが……と話を向けると、「たぶん問題なく走れると思うので、あまり心配はしてないです」と笑う。

「敵は外にある」 

青山学院大では、昨年度は近藤幸太郎(現・SGホールディングス)や岸本大紀(現・GMOインターネットグループ)ら力のある4年生がチームを引っ張るかたちになっていた。「頼もしい先輩たちに頼り切りになってしまっている部分があったりしました。でもこれからはそういうわけにはいかない、という気持ちが全員にありました」。チームで話し合った結果、目標管理ミーティングを毎月行うようにし、お互いの目標を可視化するようにしたという。「チーム一丸となって話し合って、しっかりやっていっています」

強い選手がひしめき、チーム内のメンバー争いは熾烈だ。しかし、原晋監督は選手たちに「敵は中におらず、外にある」と伝えている。部内の競争はハイレベルだが、一番の敵はやはり他大学の選手たちだ。それをしっかり意識するように、という意味だ。

予選ではともに走ったルーキーの熊井渓人をねぎらう場面も

目標を共有し、全員で話し合うことによって、競技に向かう姿勢が全体的に上がったと宇田川。自身は2年生となり後輩ができた。心持ちが変わったことはありますか? とたずねると、「去年自分が一番下だったときは、やっぱり先輩が強いから負けてもいいや、みたいな気の緩みがあったんですけど」と苦笑しながら答え、「今年先輩になって、今回の大会だけではなく、練習やタイムトライアルもやっぱり後輩に負けてられないという思いはすごくあります」と先輩としての自覚が芽生えつつある。

今年度の目標は、「箱根駅伝への出場を一番の目標にしている」という宇田川。そのために前期は土台作りの時期ととらえている。距離が短くスピードが求められる出雲駅伝への出場が一番可能性があると考えており、まずは出雲のメンバー入りをしっかり狙って、距離を伸ばして箱根駅伝も狙っていきたいと話す。強みを生かし、スタミナを強化して駅伝へ。宇田川の挑戦は続く。

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