陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・山内健登と宇田川瞬矢が1500mで1位と2位、スピードを武器に駅伝を

山内(右)と宇田川がワン・ツーでゴールし、笑顔で互いを称えた(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部1500m決勝

5月20日@国立競技場(東京)
1位 山内健登(青山学院大3年) 3分45秒61
2位 宇田川瞬矢(青山学院大1年)3分46秒92
3位 中原優人(神奈川大1年)  3分47秒23
4位 鈴木景仁(國學院大3年)   3分47秒49
5位 西川魁星(青山学院大4年) 3分47秒72
6位 五十嵐堅太郎(城西大3年) 3分47秒96
7位 望月遥平(創価大3年)   3分48秒36
8位 元村航大(育英大4)    3分49秒04

関東インカレ2日目の5月20日、男子2部1500mの決勝が行われ、青山学院大学の山内健登(けんと、3年、樟南)と宇田川瞬矢(1年、東農大三)がワン・ツーフィニッシュを飾った。5位には同じく青山学院大の西川魁星(4年、太田)が入り、1日目の男子2部10000m決勝で岸本大紀(4年、三条)が日本人トップで2位になったのに続き、青山学院大が中距離でも強さを見せつけた。

青山学院大・岸本大紀が10000mで日本人トップ「パワーアップした自分」を見せる

山内が先制のロングスパート

スタート後、横浜国立大学の石川昌樹(4年、法政二)が集団を引っ張っていたが、800m地点で山内がスッと前に出る。宇田川と西川は集団の後方につけ、ラスト1周を前にしてそろって順位を上げていく。ラスト1周を過ぎてから、一度は創価大学の望月遥平(3年、御殿場西)が先頭に出たが、山内がロングスパートをしかけて一気に追い抜く。ラスト200mでもう一段階ギアを上げ、山内が後続ランナーを引き離す。宇田川も集団の中ほどからグングン追い上げ、2番手まで順位を上げたが、山内には届かず。山内は両手を上げてゴールし、宇田川と西川と肩を組みながら、笑顔でトラックをあとにした。

山内(右端)はラスト1周からロングスパートをしかけた

山内にとって西川と宇田川はチームメートだが、一度レースとなれば勝たないといけない相手だ。2人のラストスパートの強さを知っていたからこそ、早めにしかけないとラストスパートでは勝負ができないと考え、ラスト400mからのロングスパートをしかけた。一度は望月に前に出られたが、「ラストは一緒に勝負するしかない」と考え、腹をくくった。

前回は3分54秒15での6位入賞だったが、今回は3分45秒61と大会記録(3分45秒32)に迫った上で優勝。大会記録の更新こそかなわなかったが、「選手権なので記録というより強さだと思うので、その意味で1位をとれて良かったです」と優勝の喜びをかみしめた。

佐藤や志貴ら同期に並ばないといけない

山内が今大会で希望したのは5000mだったが、チームとして関東インカレを戦うため、原晋監督から「1500mで頑張ってこい!」と送り出されたという。「青学に来たならやっぱり箱根を走りたいので」と山内。1年生の時に全日本大学駅伝に出場し、6区区間9位だった。その後は学生駅伝に出場できていない。1500mで鍛えたスピードを武器に、まずは出雲駅伝を目指し、自身2度目の全日本大学駅伝を経て、箱根駅伝では「花のある区間」として1区や10区を思い描いている。

関東インカレで優勝し、「うれしいことで、今まであまりとったことがないので率直にうれしかった」と山内

同学年には佐藤一世(3年、八千代松陰)や志貴勇斗(3年、山形南)など実績のある選手も多く、山内はそのかげで悔しい思いをしてきた。だが部内競争を勝ち抜くためにも、「(佐藤や志貴に)並ばないといけないので、それに向けて積み重ねていきたい」と今は前だけを見ている。

中距離を主戦場にしながら、いつかは箱根駅伝を

一方、ルーキーの宇田川は今大会で優勝だけを目指していたため、2位という結果を悔しさもって受け止めた。思い描いていたプランはラスト100mでの勝負だったが、それを見越していた山内との差をつめられなかった。「ラストにかけ過ぎたところがあるので、もっと序盤からしかけられるよう、スタミナなどをつけて戦えるようにしたい」と自分の課題が見えた。悔しい気持ちはあれど、「自分の全力を出せるよう、そこまで固くならずに楽しんで走ろうと思ってて、決勝はかなり楽しかったです」と笑顔を見せた。

宇田川は昨年のインターハイで1500mと5000mに出場し、1500mは11位、5000mは予選敗退だった。1500mでも5000mでも佐藤圭汰(現・駒澤大1年、洛南)と同じレースを走り、「絶対に勝つ」という思いで挑んだが、「ボロボロにやられてしまって、悔しい思いしかないです」と振り返る。

宇田川(128番)は中距離に軸を置いた上で、駅伝にも挑戦していく

大学では800mや1500mに軸を置こうと考え、中距離が強い大学への進学も考えたが、青山学院大から声をかけられたことで、駅伝への思いも芽生えたという。そこまで長距離が得意ではないため、今はまだ20km級の箱根駅伝は未知の世界だが、「でも逃げるのではなくて、しっかり視野に入れ、夏合宿の走り込みを経て、箱根のメンバーに食い込めるように頑張りたい」と意気込む。

今の目標は1500mで青学記録(3分45秒31)を更新し、日本選手権で戦える選手になること。3種目(1500m・3000m・5000m)の高校日本記録を塗り替えた佐藤のように、宇田川も1500m以外の種目でも戦える選手を目指す。その上で、出雲駅伝から学生3大駅伝に挑み、駅伝でも実績を残していきたい。「自分の課題を見つめて改善していって、2、3年生あたりでしっかりイメージしてやっていきたい」と、1年目は成長するための土台を築いていく心積もりだ。

夏合宿で走り込み、20km級のレースに対する不安を払拭する

選手層の厚さを誇る青山学院大学。部内競争が熾烈になればなるほど、チームの力は増していく。山内や宇田川などの新しい力がチームに与える影響は大きいだろう。

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