陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・岸本大紀が10000mで日本人トップ「パワーアップした自分」を見せる

岸本は「エースとして」という思いを胸に、関東インカレに挑んだ(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部10000m決勝

5月19日@国立競技場(東京)
1位 ノア・キプリモ(日本薬科大4年)28分28秒58
2位 岸本大紀(青山学院大4年)     28分28秒94
3位 カマウ・パトリック(上武大1年)28分31秒41
4位 大川歩夢(東京経済大4年)   28分35秒51
5位 中西大翔(國學院大4年)    28分35秒87
6位 平林清澄(國學院大2年)    28分36秒32
7位 丹所健(東京国際大4年)    28分36秒72
8位 篠原倖太朗(駒澤大2年)    28分41秒13

関東インカレ初日の5月19日、男子2部10000m決勝が行われ、青山学院大学の岸本大紀(4年、三条)が28分28秒94で日本人トップの2位につけた。「今回のレースで青学は駅伝だけではないとしっかり見せることができ、エースとしての走りができたのではと思う」と岸本は言い、自信を深めた。

冷静にレースを進め、最後にスピード勝負

今大会は旧国立競技場で開催された2013年以来、9年ぶりとなる国立競技場での開催となった。レースではまず東京国際大学の村松敬哲(3年、浜松商)が先頭に立ち、その後ろに岸本が続き、大きな集団でレースは進んだ。最初の1000mは2分52秒。次の1000mは2分58秒とペースが落ちたが、日本薬科大学のノア・キプリモ(4年)と國學院大學の平林清澄(2年、美方)が前に出ると2人で集団を引っ張り、3000mでは1000mのペースは2分47秒に上がった。その後は2分50~58秒ペースとなり、岸本は3番手をキープした。

7000mほどで駒澤大学の篠原倖太朗(2年、富里)が3番手に上がると、上武大学のカマウ・パトリック(1年、札幌山の手)も岸本の前へ。1000mのペースは2分46秒に上がり、先頭集団は5人に絞られた。8000mを過ぎると岸本が3位に浮上。平林、キプリモ、岸本、パトリックの順でラスト3周へ。ラスト2周を前にしてキプリモが前に出ると岸本もその後を追う。ラスト1周でパトリックがスパートをかけて前に出たが、最後の直線でキプリモが一気に抜き去り、岸本もあとに続く。そのままキプリモが逃げ切り、岸本は2位でフィニッシュした。

岸本(右)はキプリモと0.36秒差での2位だった

続いたケガ、その間もトレーニングを積み重ね

岸本自身、大会を前にして調子の良さを感じていたという。苦手意識があるスローペースでレースが進んだが、冷静に流れを見定め、最後のスピード勝負にかけていた。優勝にはあと一歩届かなかったものの、「陸上人生で、トラックレースで結果を出せていないので、いい結果を残そうというイメージをもって走り、それを体現できて良かったです」と手応えを感じられるレースとなった。

関東インカレは1年生の時に5000mに出場しただけで、記録は14分34秒39での13位だった。その1年目に学生3大駅伝を全て走り、特に箱根駅伝では1年生ながら2区を任され、7位から1位に浮上。岸本は日本人の1年生としては歴代最高記録の1時間7分3秒をマークし、青山学院大は2年ぶり5度目の優勝をつかんだ。

「1年目はどうしてもがむしゃらに走っていたけど、積み上げてきたきたことでスピードに余裕が出てきたのかな」と岸本(前から2人目)は振り返る

だが2年目は大腿(だいたい)骨の疲労骨折などとケガが続き、昨年は全日本大学駅伝に出走したが、仙骨の疲労骨折で練習ができない日々も続いた。今年の箱根駅伝も万全な状態ではなかったが、当日変更で7区を任され、区間賞の走りでチームの優勝に貢献した。2、3年生の時は思うように練習ができない日々が続いたが、気持ちを切らすことなく積み重ねてきたからこそ、4年目の今があると岸本も実感している。

「近藤幸太郎におんぶにだっこ状態」だったから

ラストイヤーの目標は結果を出すこと。5000mで13分20秒台、10000mで27分台、そして駅伝ではエースとしての走りを見せる。特に最後の箱根駅伝では再びの2区を視野に入れている。「これまでは近藤幸太郎(4年、豊川工)におんぶにだっこ状態だったので、その意味でも自分がエースとしての走りをしたいです」。チームのエースとしての自覚を胸に、トラックシーズンから結果を狙う。

もう一つ、最上級生になってから心がけていることがある。青山学院大では目標管理ミーティングとして月に1回、自分の目標を立てて発表しているが、岸本はケガで苦しんできたことやケガに対してどのような対応をしてきたかなど、自分の経験を積極的に発信している。「自分の経験を伝えることが、来年、再来年にまたつながっていくんじゃないかなと思っています」と、これからのチームを見据えて後輩たちへ知見を残し、普段の行動でも後輩たちに背中を見せている。

1年間走りきるためにも、岸本(中央)は日々のトレーニングからケガをしない体作りを心がけている

今大会はまだ第一フェーズ。「これまで積み重ねてきた分、さらにパワーアップした自分を見せられるのではと思っています」。ラストイヤーこそは、悔いのない走りをトラックシーズンから貫く。

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