陸上・駅伝

特集:うちの大学、ここに注目 2022

青山学院大・宮坂大器 大学駅伝未出走の主将が抱いた、箱根駅伝連覇記録への夢

青山学院大の主将は下級生の頃から駅伝で活躍してきた選手が担うことが多かったが、宮坂は大学駅伝をまだ走っていない

2022年の箱根駅伝、青山学院大学は2位以下に10分以上と圧倒的な差をつけ、2年ぶり6度目の総合優勝を果たした。この箱根駅伝をもって陸上部は代替わりとなったが、世間の注目の的となったのは飯田貴之元主将(現・富士通)の後任である。

青山学院大の主将は、下級生の頃から駅伝に出走してきた実績のある選手が選ばれることが多かった。しかし、今年度の主将になった宮坂大器(たいき、4年、埼玉栄)は、これまで大学駅伝の出走歴がない。ではなぜそんな彼が主将に選ばれたのか。そして主将になった彼の思いを聞いた。

自分の伸びしろにかけて長距離へ

宮坂が陸上を始めたのは中学生の頃。小学校6年間、水泳をやっていた宮坂は、球技がとても苦手な男の子だった。中学校に進級する際、走るか泳ぐかで迷っていたというが、進学した中学校に水泳部がなかったため、陸上を選んだ。

次の選択肢は長距離か短距離。宮坂はリレー選手に選ばれるほど短距離が得意ではあったが、選んだのは長距離だった。宮坂本人はその当時、長距離に伸びしろを感じていたという。そして実際に長距離の練習をしてみるとぐんぐん記録が伸び、やりがいを感じて競技にめり込んでいった。これが宮坂の陸上人生の一歩目だった。

中学・高校で養ったキャプテンシー

ではなぜ、宮坂は青山学院大陸上部の主将に選ばれたのか。そこには同期からの厚い信頼があった。

宮坂は中学校と高校で主将を務めてきた。中学時代は全中の1500mで優勝し、高校時代は名門埼玉栄高校の主将として全国高校駅伝(都大路)に出場している。こうして育まれてきたキャプテンシーは同期の中、そして青山学院大陸上部の中でも遺憾なく発揮されており、それを見てきた同期に推薦されて主将となった。

宮坂自身、主将をやるのであれば、1回は駅伝に出走してから主将になると決めていたという。そのことは主将を決めるミーティングの場でも同期に伝えていた。それでも同期からの信頼は揺るがず、たくさんの推薦を得た。宮坂は自分の決めていた道とは違うが、自分の強みや長所を生かしてチームに貢献することでチーム全体が得られるメリットを考え、自分から立候補してやるべきだと思い、主将就任を決断した。

宮坂は同期からの絶大な信頼を受け、伝統校の主将になった(写真提供・青学大体育会陸上競技部長距離ブロック)

主将として、ときには可愛い後輩にも厳しく指導

伝統校の主将になり、宮坂はかつてないほどのプレッシャーを感じている。青山学院大陸上部はメディアへの露出も多く、広く一般にも認知されている。主将の自分が担う責任は大きい。それでも「そのプレッシャーがマイナスの方向に働いているとは感じてなくて、プレッシャーのおかげで気が引き締まっています」と宮坂は言い切った。

飯田元主将が部を離れて約3カ月、ミーティングの場で話をまとめるなど、主将として部を引っ張る中でこれまでの経験が生きているという。だが、後輩を指導する時に心苦しさがあるようだ。宮坂にとっても後輩は可愛い存在。それでも日々の生活の中で下級生にミスがあった時は、主将として目をつむるわけにはいかない。「厳しくしないといけないところは厳しくする。それが主将になって難しいところです」と明かす。 

青山学院大を伝説のチームに

宮坂には夢がある。箱根駅伝の連覇記録は、中央大学が1959年から1964年にかけて成し遂げた6連覇。その偉大な記録に向け、確実に連覇できるチームを作り、未来の後輩につないでいきたい。

普段の生活面では、先輩たちが築き上げてきた1年生でも4年生でも楽しく話すことができるようなフラットな環境を継承する。練習では、しっかり集中してそれぞれが意識を高く持って臨み、オンオフを切り替える。そんなチームを目指している。

熾烈な部内競争を勝ち抜き、ラストイヤーこそは駅伝で活躍したい

宮坂個人の目標は何と言っても駅伝出走。学生3大駅伝一発目の出雲駅伝まではトラックシーズンが続くが、常に駅伝のことを頭に入れる。そしてトラックシーズンでも駅伝を見据え、「トラックに向けて走り込みを減らすといった思考を持たず、駅伝に向けてどう練習を組み立てていくかを意識したい」と話す。最後の箱根駅伝こそはメンバー入りし、区間賞の走りでチームに総合優勝をもたらしたい。

青山学院大は大学駅伝界で抜きんでた層の厚さを誇る。そして今年の箱根駅伝優勝メンバー10人のうち8人がチームに残っている。熾烈(しれつ)な部内競争を勝ち抜き、宮坂は駅伝を走ることができるのか。宮坂大器は断固たる決意をもって、伝統校を支えていく。

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