陸上・駅伝

特集:第90回日本学生陸上競技対校選手権大会

青山学院大・近藤幸太郎 5000mVに「うれしい」 秋の駅伝シーズンにいい流れを

近藤は終始積極的なレース運びで勝ちきった(すべて撮影・藤井みさ)

第90回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子5000m決勝

9月19日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

1位 近藤幸太郎(青山学院大3年) 13:46.98
2位 篠原倖太朗(駒澤大1年) 13:48.57
3位 丹所健(東京国際大3年) 13:48.78
4位 アニーダ・サレー(第一工科大3年) 13:54.55
5位 杉山魁声(筑波大4年)14:02.24
6位 今江勇人(千葉大院2年)14:04.16
7位 伊豫田達弥(順天堂大3年) 14:05.48
8位 新家裕太郎(創価大3年)14:08.92

日本インカレ最終日となった9月19日、男子5000mで青山学院大の近藤幸太郎(3年、豊川工)が優勝した。日本インカレの長距離種目で青山学院大の選手が優勝するのは初めて。「学生駅伝三冠」を目標にしているチームにとって、勢いをつけるタイトル獲得だった。

「積極的にいけ」監督の言葉通りのレース

前日までの台風の影響が去り、差すような日差しの中で開催されたレース。スタートしてすぐに山梨学院大のボニフェス・ムルア(3年)が先頭に立つと、近藤は集団の2番手にぴったりとついた。1000mの通過は2分50秒、そこから2分46秒、2分50秒と先頭集団は速いペースを維持したままラップを刻んだ。

ムルアは次第にペースを落として後退し、残り4周の手前で東京国際大の丹所健(3年、湘南工科大付)が先頭に。優勝争いは近藤、駒澤大の篠原倖太朗(1年、富里)第一工科大のアニーダ・サレー(3年)の4人に絞られた。ラスト1周で篠原がスパートして前に出たが、残り200mのところで近藤がギアを上げて一気に先頭へ躍り出る。最後は両手を広げ、笑顔で優勝を決めた。

優勝は「素直に嬉しい」と笑顔で話した近藤。チームに勢いをつける結果となった

近藤は4月の日本学連10000m記録会で28分10秒50、7月のホクレンディスタンスチャレンジ士別大会で13分34秒88をマークし、いずれも青山学院大記録を塗り替えた。名実ともに青学のエースとして臨んだこの大会、原晋監督からは「積極的なレースをしろ」と言われていた。「最初からバッといって、2番手につけて、それが自分の勝ちパターンでもあるので。いいレースができたと思います」と充実した表情で振り返った。

最後の400mでは篠原を先に行かせたんですか? と聞かれると、「(残り)400mじゃこの暑さではもたないなと思ったので。200mでいこうかなと思いました」。余力がまだあり、ラストでいけるという自信があったと話す。学生タイトルという称号には「優勝することってあんまりできないので、素直にうれしいです」と大きな笑顔を見せた。

充実した夏合宿が自信に

夏合宿は距離走をメインに、改めて土台作りに取り組んだ。近藤自身はけがをしないことを第一に考え、補強やトレーニング、ケアなどに人一倍気をつけて取り組んでいたという。走る量というよりも全体の練習の質が上がったと感じており、「本当にいい合宿でした」。その夏の充実が、今回の結果にもつながったと実感している。

今年のチーム目標は、学生駅伝三冠。「三冠をするためには、自分がしっかりエース区間で区間賞を取ることが重要だと思う」と駅伝シーズンに目を向ける。走りたい区間を問われると、「監督に任されたエース区間」。何区となるのかは「監督が何を考えてるのか、自分もわからないんで」と笑う。エース区間で、となると駒澤大の田澤廉(3年、青森山田)や東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(3年、チェビルベルク)ともマッチアップする可能性があるが……と話を向けられると、「いやちょっとやっぱ勝てないので、実際(タイム差は)30秒から1分はほしいですね」と笑って答える。

原監督からも「積極的に」と言われており、その通りのレースになった

いま、チームの雰囲気はとてもいいと近藤。特に主力層にけが人が出ずにここまで来られていることが大きい。チーム内には13分台をマークしている選手が20人以上と、今までになく充実した選手層ができている。昨年は無冠に終わったが、2016年度以来の三冠に向けていい流れができているという。「いつの間にか前にいるのが青学の駅伝であり、選手層(の厚さ)なので、みんなで勝ち取る駅伝をしていきたいですね」

エースとして自分の走りを

先日、主将の飯田貴之(4年、八千代松陰)は取材に対して、「近藤はエースとして必ずやってくれると思っている」と期待を口にしていた。改めて本人に、エースとして期待されることについて聞いてみると、照れ隠しなのか一度大きく笑ったあとに「エースと呼ばれる機会が増えてきて、飯田さんを含めみんながエースだと思ってくれてるので、それはうれしいことですし、しっかり恩返しというか、自分の走りで返していきたい」ととはっきり口にする。

青学のエースと呼ばれることは「プレッシャーにはなりますね」とまた少し冗談めかして笑うが、そこまで気にしている様子もないようだ。「自分の走りをして負けたなら仕方がないので、しっかり自分と向き合って練習して、それをそのまま走りにつなげたいです」

自分がエース区間を走って活躍する、その自覚は充分に持っている

ライバルになるチームは? という質問には駒澤大をはじめ、早稲田大、順天堂大などの名前を上げ「気の抜けない戦国駅伝だと思います」。あと3週間足らずと迫った初戦の出雲駅伝に向けては、チームとしてやるべきことに取り組みたいと語った。

18年の日本インカレでは吉田圭太(現住友電工)が5000m、吉田祐也(現GMOアスリーツ)が10000mで日本人トップ、19年の日本インカレでは5000mで吉田圭太が日本人トップを取り、いい流れをもって駅伝シーズンにつなげた。今回の近藤の優勝が、チームに勢いをもたらしたことは間違いない。チーム一丸となり、フレッシュグリーンの襷(たすき)が今年、頂点を奪還するだろうか。

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