駒澤大・鈴木芽吹 3大駅伝区間賞は「最低限」、優勝を引き寄せる走りを
5月の日本選手権10000mで27分41秒68の3位で走り、大学2年にして学生トップレベルの実力を示した鈴木芽吹(2年、佐久長聖)。高いレベルのレースに出続けた前期を振り返ってもらい、秋の駅伝シーズンに向けての目標を聞いた。
田澤の背中を追って好記録
鈴木は今年の箱根駅伝で5区を走り区間4位。1年生最後のレースとなる3月13日の学生ハーフマラソンでは、強風の中ラストスパート勝負で2位に。4月10日の日本学連10000m記録会では28分00秒49で学生2位。5月3日の日本選手権10000mには田澤廉(3年、青森山田)とともに出場し、27分41秒68で3位と表彰台にあがった。その後5月23日の関東インカレ2部5000mでは、同期の唐澤拓海(2年、花咲徳栄)に競り負けて4位(日本人2位)。7月10日のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会で13分27秒83をマーク。駒澤大学記録も更新した。
「今年のはじめに立てた目標が、5000m13分35秒切り、10000mで27分台だったので、それを前期シーズンで達成できたのでいいシーズンになったと思います」。トラックシーズンを振り返って、鈴木はそう口にした。特に日本選手権で27分台、それも41秒で走ったことについてたずねると「あそこまでいけるとはまったく思ってなかったです」という。「自分で自信をつける結果になりました。普段ずっと練習を一緒にやっている田澤さんを目標に走りました。しっかり背中を追って走ったから結果につながったんだと思います」。一時、先頭に立つ場面もありましたが……と聞くと「余裕があったので前に、積極的にいこうと思っていました」と大舞台でも自分らしい走りができたことをうかがわせた。
関東インカレのあとには「試合が続いたので少し休みたい」と取材に答えていた鈴木。試合の予定を入れず、練習に集中したことで日本選手権前よりもいい練習ができ、ホクレンを走る前には「13分25秒ぐらいはいくかな」という手応えがあった。「だから27秒でも日本選手権のときのような驚きはなかったというか、これぐらいは当然かなという感じがしました」。明らかに1段階レベルがあがったという感じでしょうか? と思わず口にすると「そうですね」。関東インカレが終わってからは少し距離走にも取り組んでいたというが、スピードを磨いてきた成果がしっかりと発揮された。
目標はオリンピック、自分でも目指せる
ホクレンのレース後のインタビューで鈴木は「日本選手権で走ってみて、オリンピックに出たいなと思った」と初めてオリンピックについて言及した。「それまでは現実的には全然考えられてなくて。でも日本選手権で3位に入って、まだ届かないけど自分でも目指せるんじゃないかなと思いました」。その意識の変化には、やはり先輩である田澤の存在が大きい。田澤は昨年から東京オリンピック出場を目指し、今年も最後までチャレンジを続けた。「オリンピックを目指してるけど、田澤さんをずっと追いかけていったら、最終的にはオリンピックに行けると思っています。いつかは田澤さんに勝ちたい、という思いがあります」
だが先日のホクレンでは、鈴木が13分27秒83、田澤が13分29秒91とタイムでは勝った。しかし「走ったレースも違う(網走と千歳)ので、結果的には僕がタイムでは上回りましたけど、タイムではわからない力の差があります。タイムで勝ったから田澤さんに勝っているとは、まったく思っていないです」という。具体的にどこに差を感じるのだろうか? 「最近は同じ練習をこなせるようになってきたんですけど、田澤さんは余裕度が違います。本当に全然違うなと思います」
鈴木のいまの弱点は、「体力がないこと」だという。「1回レースを走るごとにダメージがきちゃって、休まないと次の練習にいけません。これからの駅伝に向けて体力をつけていきたいです」。今年3月からの連戦は「勢い任せでいけた部分がある」といい、本当の意味での体力が必要だと考えている。逆に伸ばしていきたいところはスピードだ。「駅伝はある程度スタミナがあれば走れますが、スピードがないとオリンピックなどの上のレベルの大会では戦えないです。駅伝だけじゃなく、トラックでも強化していきたいです」。取材時は夏の強化練習のさなかだったが、とにかく距離を踏むことを意識して取り組んでいると答えてくれた。
チーム内では唐澤の成長が目覚ましいが、鈴木にとって唐澤の存在とは。「田澤さんには、ただ『勝ちたい』という感じなんですけど、唐澤には『負けちゃいけない』と思います。ある意味、彼のほうが怖い存在です。でも仲間としては心強いです。力も同じぐらいなので、練習も競い合いながらやれていると思います。すごくいい環境です」。他の2年生や1年生も力を伸ばしてきており、鈴木が特に気になるのは篠原倖太朗(1年、富里)だ。「今の時期を見ると、去年の自分よりできてると思います」。自分が田澤の背中を追うように、1年生もまた鈴木の背中を追っている。だからこそ駒澤大学は毎年強くなるのかもしれない。
3大駅伝での区間賞は最低限
鈴木は昨年度2つの駅伝を走ったが、全日本大学駅伝では3区区間5位、箱根駅伝は5区区間4位と、本人としては満足のいかない結果だった。「3大駅伝で全部区間賞をとるのは、最低限だと思っています。全日本も箱根も、去年はただ無難につないだだけでした。今年は自分が優勝を引き寄せる走りをしたいと思っています」
全日本のときは直前に足をひねってしまい、箱根の前はお尻が痛くなってしまったことも影響した。「調整がうまくいかなかったというのもあり、心残りでした。そこをしっかりしないと目標を達成できないので、準備をしっかりしていきたいです」
田澤の背中を追い、駒澤のエースとしての自覚をしっかりと持っている鈴木は、チーム目標の「三冠の達成と箱根の連覇」には欠かせない戦力だ。さらにレベルアップした姿を駅伝シーズンに見せてくれるはずだ。