陸上・駅伝

駒澤大主将・田澤廉「一人ひとりが考えて、真の強さを見せられるチームに」

昨年の全日本大学駅伝、アンカーで優勝のゴールテープを切る田澤(撮影・朝日新聞社)

年始の箱根駅伝で最終10区に劇的な逆転を見せ、13年ぶりの優勝を飾った駒澤大学。田澤廉(3年、青森山田)はレース後に大八木弘明監督からサプライズで主将に指名された。新チームが始動し、キャプテンとしてどのようにチームをまとめているのか、そして自身のいまについても聞いた。

主将指名に戸惑いも、チームを強くするため行動

田澤が主将になると明かされたのは、箱根駅伝の翌日のテレビ出演の際。その時のことを「『えっ』てなった」と振り返る。「でも言われたからには、しっかりやろうと思いました。監督は僕にも人間的に成長してほしい、1日を通して陸上のことを考えてほしいということだと思います」

まだ新チームは始まったばかりでなんとも言えないが、と前置きしつつ「一人ひとりが力を出せる環境を作ろうと思っています」とチームづくりへの思いも教えてくれた。チームでの目標は「三冠の達成と箱根の連覇」、そしてスローガンは「原点と責任~感謝の心を形に~」と決まった。「一人ひとりが責任を持った行動をしていかないと、もちろん連覇、優勝はつながっていかない」という意味をこめた。

「チームとして底上げが大事だと思っています。優勝チームという自覚をもって行動してほしいし、厳しさを持たないと勝ちにはつながっていかないと思ったので。一人ひとりが自分に厳しく過ごしてほしいと思っています」。それは、言われてやるのではなく、自ら一人ひとりが考えて行動してほしいという意味も含まれている。「言われてやるなら、誰だってできるので。考えを持った行動ができてこそ、上に行ける選手になれると思います」

田澤を中心にどんなチームとなっていくのか楽しみだ(撮影・北川直樹)

田澤はこれまでも自ら、強くなるためにはどうすればいいかを考えて行動してきた。「自分のようにしたほうがいいよ」とは口では言わない。「自分の行動を見てる誰かか悟ってくれて、やってくれる人がいるならいいなと思います」という。

後輩の鈴木芽吹への期待

今のチームは特に、2年生の個々の力が強い。同学年の中での競争心も激しく、誰かがタイムを出したら次は自分も……という雰囲気ができてきている。その中でも田澤は鈴木芽吹(2年、佐久長聖)の力を認めている。「鈴木はまた他とは違うと思います。速さだけじゃなくて、強さを持ってる。何の大会でもある程度自分の力を発揮できるし、外さないです。自分が先に卒業したあと、エースとして認めるなら鈴木かなと思います」

3月の学生ハーフで田澤の期待に応えた鈴木(撮影・藤井みさ)

3月14日の学生ハーフマラソンで、鈴木は2位に入りワールドユニバーシティゲームズの代表権を獲得した(大会は来年以降に延期)。その際に「田澤さんから『ユニバ一緒に行こうよ』と言われた」と答えていましたが……と話を向けると「言いました(笑)。彼なら(代表権を)取れるかなと思ってたんで、期待通りの走りで嬉しかったです。でもその後、自分がけがしたので(4月10日の10000m選考の記録会にに間に合わず)『ごめん、行けないかもしれないわ』とも言いましたけど(笑)」

箱根後に疲労骨折、日本選手権には「不安もある」

昨年12月4日の日本選手権10000mに出場した田澤。27分46秒09は駒澤大記録を更新、現役日本人学生最速のタイムだった。そこから1カ月で箱根駅伝。エース区間の2区を走ったが1時間7分27秒で区間7位だった。タイムだけ見ればもちろん速いのだが、それまでの田澤の快進撃からすると少し物足りなさも感じられる結果にも映った。田澤は「トラックからロードへの調整がうまくいかなくて、箱根ではいい走りができなかった」と振り返る。

箱根駅伝では調子が上がらず、田澤本来の走りができなかった(撮影・藤井みさ)

箱根後にも足の違和感を感じていたが、冬季合宿で練習をし、帰ってきてレントゲンを撮ったら右の大腿部を疲労骨折していることが判明した。「日本選手権で全力を出して、箱根はその疲れがある中で無理やり走ったところもありました。それもあって故障につながったのかなと」。2カ月ほど走れない時期が続いたが、気分が沈むことはなかったという。「逆に、いい気分転換になったかもしれないです」ともいう。3月からジョグ、快調走とつなぎ、4月の頭からようやくポイント練習ができるようになった。

5月3日の日本選手権10000mが彼にとってもっとも狙うべきレースだが、「いまは不安のほうが大きいです」という。以前は27分30秒を目標にしていると語っていたが、「今回は記録とか順位に関してはきついかもとも思っています。(復帰して)3週間で27分30秒まではもっていけないかなと。甘い記録じゃないので。全力を出して行けそうなところまでは行って、最低でも27分台ではまとめたいと思います」と展望を口にする。

昨年12月の日本選手権の前はワクワクしたが、今は不安の方が大きいという(撮影・朝日新聞社)

「最初から最後まで強い駒澤」をつくりたい

個人としての活躍も、主将としての責任ある立場も期待される田澤。昨年は全日本大学駅伝と箱根駅伝でともにチームは優勝したが、「しっくりこない優勝でした」。「どちらも、最後3km未満しかトップに立っていないので……。今年は『最初から最後まで駒澤は強い』と言われるように頑張ろうと思います。しっかりとした、『本当に強い駒澤』をつくっていきたいです」

トラックシーズンが始まり、現在は個々で立てた5000m、10000mの目標タイムをそれぞれが切るようにと動いていると教えてくれた。すでに自己ベストを更新している選手も複数名いる。田澤が先頭に立つ今年の駒澤大学のこれからが、ますます楽しみになってきた。

in Additionあわせて読みたい