大阪人間科学大の木本桜子・木本桃子 持ち味が異なり、大きな可能性を秘める双子姉妹
7月14日に幕を閉じた「第2回全日本大学バスケットボール新人戦」(新人インカレ)で、女子は大阪人間科学大学が準優勝した。高校バスケの強豪・大阪薫英女学院の系列校で、実際に薫英女学院出身のメンバーが多くコートに立った。中でも今大会で輝きを放ったのが、木本桜子・桃子の双子姉妹だ。
アグレッシブな妹、冷静にゲームをコントロールする姉
早稲田大学との決勝。妹の桃子はスタートから、姉の桜子はチームの司令塔で新人インカレのキャプテンを務める熊谷のどか(2年、大阪薫英女学院)と交代する形で第1クオーター(Q)の途中から出場した。桃子がアグレッシブにドライブで仕掛けたり、リバウンドに絡みにいったりする一方、桜子は冷静にゲームをコントロール。熊谷がコートに戻って桜子とともにプレーする時間帯は、フォワードとしての役割に回った。
第1Qこそ6点のリードを得たものの、第2Q以降は早稲田大の身長193cmセンター・福王伶奈(1年、桜花学園)の高さに苦しんだり、菊地実蘭(2年、桜花学園)や衣川璃来(2年、埼玉栄)といった相手の中心選手にフィジカルで当たり負けしたりする場面も目立った。
「ハードな部分で削られていっちゃったという感じですね。力負け」とは安藤香織コーチ。前半を35-35で折り返すと、第3Qに逆転を許した。最終Qは熊谷が3ポイントラインから大きく離れた位置でシュートを沈め、意地を見せたものの、最終スコアは80-85。熊谷は「走るバスケットをしよう、と試合に入って、途中で動きが止まってしまったところで相手にやられてしまった」と振り返った。
大学は高校以上に自主性が促される
決勝こそ熊谷が33分以上のプレータイムを獲得し、桜子は23分弱だったが、白鷗大学との準決勝は熊谷は14分台で、桜子は34分台。前回大会の覇者で、関西のライバルでもある大阪体育大学との準々決勝は、熊谷が23分台、桜子は24分台だった。これは相手のサイズが自分たちより大きかったためと、安藤コーチは言う。「どうしても(身長158cmの)熊谷のところでミスマッチが起きたり、ポストアップされたりというところがあった。双子のディフェンスはかなりいい部分があるので」。対して決勝は「点を取らないといけない」から、熊谷のプレータイムが長くなった。
大阪人間科学大は先述の通り、ウインターカップ出場36回、全国高校総体(インターハイ)出場54回を誇る高校バスケの名門・大阪薫英女学院の流れをくんでいる。早稲田大との決勝に出たメンバーでは熊谷、木本姉妹のほか、島袋椛(1年)、仲江穂果(2年)、細川未菜弥(2年)が薫英女学院出身。安藤コーチは高校の指導にも携わっており、「同じようなバスケットができる」(熊谷)ことを一つの強みにしている。
ただ、選手との接し方では、異なる面もある。「高校生には人間性の部分や生活面とか、イチから全部言うところもありますけど、大学生は『大人と大人』として接しているので、彼女たちの考え方やアイデアを尊重して、結構任せています」と安藤コーチ。高校バスケと大学バスケが重なったら、高校を優先する。そのときは4年生キャプテンの中村真湖(4年、大阪薫英女学院)をはじめ、熊谷も練習メニューを組み立てる。これも大学生の自主性が促される一つの理由なのだろう。「二足のわらじを履くことは、どちらにも申し訳ないという思いもあるんです。大学生は一人ひとりが自立してやれている。身長の低いチームがここまで来たことは、本当に褒めてあげたいなと思います」と安藤コーチは感慨深そうに語った。
プレースタイルが分かれる起因となった桜子のけが
ともに身長167cmの木本姉妹は、今大会で収穫と課題の両方をつかんだようだ。桃子が「スピード感のあるドライブはできていたけど、体で負けている部分もあった。そこは帰ってから、もう一度鍛えたい」と言えば、桜子は「3ポイントに関しては、結構自信がついたかなと思います。全国の強いチームと試合をする機会は少ないので、今回の新人インカレで出た課題を改善していきたいと思います」と総括した。
2人は小学2年からバスケを始めた。双子だとプレースタイルも似通うイメージを持つが、樟蔭中学2年のときに桜子が左ひざの前十字靱帯(じんたい)を故障してから、2人のスタイルが異なってきたという。「けがをしてしまってからは、ドライブよりはジャンプシュートを磨き始めたので、そこからちょっとずつ分かれたのかなと思います」と桜子。それまで以上にチーム全体を見渡すようになり、高校の最終学年でキャプテンを務めたのは桜子の方だった。
2人とも1、2年生で構成される新人戦のみならず、全学年がそろったチームでもプレータイムを得ている。桜子は3位だった全関西大学女子バスケットボール選手権で新人賞を獲得。桃子は今回の新人インカレで敢闘賞に選ばれた。今後チームの中心を担うことは間違いなく、世代を代表する選手になる可能性も大いに秘めている2人に、これからも注目したい。