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特集:2024年 大学球界のドラフト候補たち

バッテリーから内外野まで、全部網羅 佐藤柳之介、麦谷祐介ら富士大学のドラフト候補

昨年の明治神宮大会でプレーする佐藤柳之介(左)と麦谷祐介(撮影・井上翔太)

山川穂高(福岡ソフトバンクホークス)や外崎修汰(埼玉西武ライオンズ)らNPB選手を多数輩出している富士大学。今年は現時点で7人がプロ志望届提出の意向を示している。ドラフトまで約3カ月。最後のアピールの機会、そしてリーグ2位に終わった春の屈辱を晴らす場である秋に向け、それぞれが調整を進めている。

【特集】2024年 大学球界のドラフト候補たち

「一番上でいきたい」と同世代を強く意識する左腕

投手陣の筆頭は左腕の佐藤柳之介(4年、東陵)だ。しなやかなフォームから、140キロ台後半の直球と変化量の多いスライダーなどを繰り出す。昨年は全日本大学野球選手権で計11回無失点と好投し、明治神宮野球大会では上武大学打線を相手に3安打で完封勝利を収めるなど、大舞台でも結果を残した。

これらの活躍を評価され、昨年12月には大学日本代表候補合宿に初招集された。大学球界トップレベルの投手たちとキャッチボールをした際、「ボールの強さ」を実感。中でも同じ左腕で、今年3月に侍ジャパンのトップチームに選出された関西学院大学・金丸夢斗(4年、神港橘)には「腕が鞭(むち)のようにバッと出てきて、これまでに受けたことのないような威力のあるボールが来る」と衝撃を受けた。

「普段動画で見るような選手を目の前で見て、自分もドラフトにかかるなら一番上でいきたいと思うようになった。自分の立ち位置が分かって、『あとどれだけやれば追いつけるか』を認識することもできました」。全国大会と代表候補合宿を経て、NPB入りへの思いがより一層強まった。

富士大・佐藤柳之介 ドラフト見据える左腕は頼ること辞め、「考える力」を鍛えた
佐藤は昨年の経験を経て、プロへの思いが一層強くなった(以下すべて撮影・川浪康太郎)

今春は本領を発揮しきれず、全国大会出場を逃した。「個人としてもチームとしてもふがいなかった。全国で活躍している投手と比べて評価は変わっていないというか、むしろ下がっていると自分では思っている」と佐藤。最後の秋に向けて「チームを勝たせられるピッチングをして、誰にも文句を言わせないくらい圧倒的な結果を残したい」と力を込めた。

大学で進化を遂げた、伸び盛り真っただ中の右腕

右腕では安徳駿(4年、久留米商)、長島幸佑(4年、佐野日大)の名前が挙がる。安徳は最速152キロ、長島は最速151キロの速球を武器にしている。

安徳は昨年の全国大会で150キロ台を計測して注目を集めた。新たに習得したスプリットなど、変化球にも磨きをかけた今春は最優秀防御率賞とベストナインのタイトルを獲得。高校時代は無名ながら大学で急成長を遂げた右腕は「(佐藤と長島と)3人でプロに行くなら、一番上の順位でいきたい」と意気込む。

富士大学・安徳駿 母子家庭で育ち、覚悟を持って福岡から岩手へ 母に誓う「恩返し」
母子家庭で育ち、大学で急成長を遂げた安徳

長島は昨春、リーグ戦デビューを果たした。ここまで通算5試合の登板ながら、身長187cm、体重92kgの恵まれた体格を生かし、ポテンシャルの高さを見せつけている。今春の八戸学院大学戦では初先発し、5回2安打8奪三振、無失点と好投。下級生の頃の課題だった制球力が改善され、フォークを習得したことで奪三振能力の高さも際立つようになった。

佐野日大で指導を受けた麦倉洋一監督が元プロ野球選手ということもあり、高校時代から多くのNPBスカウトが視察に訪れていた。しかし、2年から3年にかけて伸び悩み、高卒でのプロ入りは断念。2年冬にコロナ禍で自宅待機を強いられて十分な練習時間を確保できず、2年秋に計測した最速143キロを最後まで更新することができなかった。長島は「自分の甘さが出てしまって、努力が足りなかった」と省みる。

大学では自主性を身につけ、ひじを故障して離脱した2年時にトレーニング方法や投げ方を見つめ直した結果、3年春に球速が150キロを突破した。先発起用も視野に入る秋に向けては「自分がゼロに抑えて勝ちをつけるピッチングをすれば、おのずと評価も上がってくるはず」と話す。成長を続け、ドラフトには「プロ一本」の覚悟で臨むつもりだ。

長島は大学で自主性を身につけ、成長を遂げた

実績十分、全国クラスの実力を誇る左打者たち

野手では麦谷祐介(4年、大崎中央)に指名の期待がかかる。走攻守、三拍子そろった右投げ左打ちの外野手。同じポジションのライバルは多いが、昨年は全国大会で青山学院大学の下村海翔(現・阪神タイガース)、常廣羽也斗(現・広島東洋カープ)から本塁打を放つなど、自らの力でその名を全国区に押し上げた。

全国大会での対戦を機に、親交を深めた青山学院大の西川史礁(4年、龍谷大平安)とは頻繁に連絡を取り合っている。西川からは動画とともに打撃のアドバイスを求められることもあるという。「史礁はほぼ100%指名されると思うけど、自分はまだまだ可能性が低い。追いつきたいし、自分だけプロに行けないというのは、なしにしたい」と闘志を燃やす。

富士大・麦谷祐介 大学日本代表の落選をプラスにとらえて「プロ一本」で臨むドラフト
麦谷は3年時、全国大会で活躍し、その名が知れ渡った

左のスラッガー・佐々木大輔(4年、一関学院)もプロ志望。もともとは高校までで野球をやめるつもりだったが、当時の指導者に勧められて富士大に進学した。1年時から出場機会をつかみ、打撃フォームを改造した3年時は春3本塁打、秋4本塁打と長打力が開花。全国大会でも一発が飛び出し、気づけばNPB入りが確固たる目標になっていた。

3年時からは小学生以来という遊撃手に転向し、可能性を広げてきた。今春は右ハムストリングを痛めた影響でアピール不足に終わっただけに、秋は「3年時の成績を超えられるように頑張りたい」と再起を図る。

佐々木は可能性を広げるため、3年時から遊撃手に転向した

捕手のライバルだった2人が磨いた個性

2年春から正捕手を務める坂本達也(4年、博多工)は強肩と勝負強い打撃が売り。2学年上の先輩・金村尚真(現・北海道日本ハムファイターズ)とバッテリーを組む中で「試合の組み立て方」も学び、投手陣から絶大な信頼を得るほどの「リード力」を手に入れた。

富士大・坂本達也 日本ハム金村尚真の助言受け、たどり着いた「信頼される」捕手の姿
坂本はリードやブロッキングなど、捕手としてのスキルが高い

右の強打者・渡邉悠斗(4年、堀越)は小、中、高と捕手で、富士大にも捕手として入部した。しかし、坂本のプレーを見て「ブロッキングがうまく、肩も強くて、俊敏。自分とは真逆のタイプのキャッチャーで、かなわないと思った」。3年時からは一塁を守り、自慢の長打力を磨いて4番に定着。今春は4本塁打、13打点をマークして最多本塁打賞、最多打点賞など四つの個人タイトルを獲得した。

NPB入りを見据えて捕手の練習も続けており、現在は三塁の守備にも挑戦中。坂本に引けを取らない強肩を持ち合わせる。「高校生の頃までは遠い存在だったプロ野球という世界に、少しは近づけたと感じている」。今春まで社会人野球に進む道も考えていた渡邉。プロ志望に絞り、決死の覚悟で大学ラストイヤーを過ごしている。

渡邉は自慢の長打力を磨き、春は四つの個人タイトルを獲得した

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