東西16大学の主将は出場枠拡大に期待感、日程面には警戒感 甲子園ボウルへの新方式
2024年の関西学生アメリカンフットボールリーグDiv.1は8月30日に、関東学生アメリカンフットボールリーグ1部のTOP8は翌31日に開幕する。大学日本一を争う全日本大学選手権は、トーナメントへの出場校が今季から12校に拡大され、関東・関西の両リーグからは3位までが出場できるようになった。4years.が両リーグ所属の16大学に行った主将インタビューでは、「日本一へのチャンスが増えた」と歓迎する声が目立つ一方、甲子園ボウルまでの試合数が増加し日程も厳しくなったことへの対応を模索する姿も見られた。また、今季から試合の前後半残り2分になったところで時計が止まる「2ミニッツタイムアウト」が導入されることが決まった。
関西・関東は3位まで全日本へ 日程はタイトに
昨季までの全日本大学選手権は、全国の8学生連盟から1校ずつの出場だった(19年と21年は関西のみ3位まで出場する形だった)。関東・関西の代表は初戦が準決勝とシードされていたとはいえ、他連盟と同様にリーグの1位校しか出られなかった。今季からは実力面を勘案し、両リーグは出場枠が3位までに拡大された。これにより、決勝の甲子園ボウルが関西・関東の戦いではなく、関西勢同士・関東勢同士の組み合わせとなる可能性が生まれたことが、今回の変更の最大のポイントだ。関西の2位vs.関東の3位、関東の2位vs.関西の3位という、これまで見られなかった対戦も準々決勝で実現する。
その一方、関西勢・関東勢のトーナメント登場は準々決勝からと早まり、決勝の甲子園ボウルへの試合数は1試合増えた。また、準々決勝の開催日は11月23・24日だが、これは昨季だと東西のリーグ戦最終節の時期にあたる。このため、昨季は両リーグとも実施しなかった2週連続の試合開催を、今季は2回実施することで、リーグ終了を約2週間早めた。全国トーナメントの準々決勝と準決勝も2週連続の試合となる。関西勢・関東勢にとっては、出場枠が増えたものの、甲子園ボウルまでの試合数は増え、日程もタイトになった。
大学でも「2ミニッツウォーニング」導入
また、日本アメリカンフットボール協会の公式規則変更を受けて、今年から大学の試合でも「2ミニッツタイムアウト」が導入される。米NFLの「2ミニッツウォーニング」と同じもので、試合の前半後半(第2Q、第4Q)が残り2分となった時点で時計が止まる。
前後半の終盤にタイムアウトが一つ増えるのと同等の効果があるため、特に時間を消費しやすいラン攻撃主体のチームから歓迎の声が上がっている。勝負の行方を左右する場面での規則変更のため、より劇的な展開が期待される。
「甲子園ボウルが真の日本一決定戦」評価
主将インタビューで4years.は、全員に共通して「この変更に対する受け止めや、対応策などについて教えて下さい」という質問を投げ掛けた。16人の主将からは、変更を前向きに捉える声が多かった。
京都大学の上田大希主将(4年、須磨学園)は「甲子園ボウルへの道が広がったことはチャンス」、東京大学の小城陽人主将(4年、大阪教育大附属池田)も「常勝軍団ではない我々東大にとっては日本一になれるチャンスの増えた変更」、桜美林大学のQB近田力主将(4年、佼成学園)も、「日本一へのチャンスが増えたという印象」と、東西のリーグ戦で1位とならなくとも日本一の可能性が残る新方式を評価した。
特に関西の現場やファンからは、関西勢同士の甲子園ボウルが可能となった今回の変更を歓迎する声が上がっている。桃山学院大学の岡田吉城主将(4年、立教新座)は「『真の日本一』を決められると考えていますので、個人的には大賛成」と話す。
昨季関東を制し甲子園ボウルに出場した法政大学の山田晋義主将(4年、日大鶴ヶ丘)は、「2017年を最後に、関東は関西に負け続けており、昨年我々も関西学院に大敗しました。(我々に対して)厳しい言葉も寄せられましたが、これでようやく正真正銘本当の日本一が決まると思うので楽しみです」と、「西高東低」の現状を率直に認めた上で、大学アメフト界全体を俯瞰(ふかん)する視点から、新方式に期待している。
試合数増加に備え、けが予防と選手層強化に注力
シーズン直前とあって、負担増とそれに伴う故障者増への警戒感と、そこを乗り切る対策に触れる声も多かった。
関西大学の須田啓太主将(4年、関大一)は、「すごくタフに感じます。開幕がはやまり1週間ごとの試合(2週連続の試合)も増えるので、デプス(選手層)の厚さがより大切になってくることは間違いありません」。
同様の意見は特に関東に目立った。立教大学の金子湧主将(4年、佼成学園)が「試合数が増えることで、体が疲弊してけがのリスクが上がるため体作りやケアが必要不可欠です。またけが人が出た際に他の人間が出場しても遜色ないように個人のレベルを上げることが大切」と述べたほか、「選手層の厚さがより大切になるため、選手の育成に注力している」(明治大学の深尾徹主将=4年、啓明学院)、「試合の数が増え間隔が短くなっているため、よりチーム力が試されるリーグ戦になる」(慶應義塾大学の石塚大揮主将=4年、慶應)という意見があった。
昨年の関東TOP8は、日本大学が出場停止(のちに廃部)となった関係で例年より1試合少なかった。今年は8校総当たりに戻り、トーナメントの試合増と合わせると2試合増加することになるため、関西勢よりも日程面での警戒感が強いのかもしれない。
「自分たちらしさ」徹底、目の前の1戦に全力
一方、関西勢から目立ったのは、「特にありません」という大阪大学の元木怜達主将(4年、関西大倉)のように、自分たちらしさを大切にし、従来と特に対応は変えないという声だ。
近畿大学の大西勇樹主将(4年、大阪産業大学附属)は「トーナメントの有無関係なく(略)目の前の1戦に全てを捧げ続けようと決めています」。立命館大学の山嵜大央主将(4年、大阪産業大学附属)は、「『リーグ戦を1位で通過する』、そして、『甲子園ボウルを制覇する』というゆるぎない目標の達成に向けて、パンサーズらしく様々なチャレンジをしたいと考えています」。神戸大学の丸山碧澄主将(4年、豊中)も、「関西の三強に勝つための準備をすればいいという点では対応策の方針として今までとはぶれない」と、これまで通りの戦い方を選択した。
関東勢からも、「日本一になるために関西勢に勝たなければいけないことは今まで通り変わりません」(早稲田大学の小林亮生主将=4年、早大本庄)、「まずは初戦に勝つために、できうる準備を徹底したい」(中央大学の前田裕音主将=4年、佼成学園)と、新方式への対応よりも自らの路線の徹底を選ぶ声が上がった。
12月15日の甲子園ボウルまで10試合
昨年、前人未到の6連覇を達成した関西学院大学の永井励主将(4年、関西大倉)からは、図らずも全ての主将の総意のような意見が寄せられた。
「私たちの目標は『日本一』です。トーナメントの制度に大きな変革があっても私たちのやることは変わりません。相手がだれであろうと一戦一戦勝つために慢心ない準備をし続けて、自分たちのフットボールをして勝ちます。トーナメントの制度が変わることで例年よりもタフさが求められると思いますが、それでもチーム全員が一貫してチームスローガン『No limit』を体現すべく、勝つための徹底した準備に限界を決めずやり続けることを大切にしていきます」
東西両リーグ所属の大学は、リーグ戦・トーナメント合わせて10試合目が甲子園ボウルとなる。100周年を迎えた甲子園。第79回甲子園ボウルは、12月15日に開催される。今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。