アメフト

立教大WR平本清耀 前週復帰のルーキーが勝利に導くTD、ぶっつけ本番の開幕戦で

謙虚で冷静。勝負強さが光る、ルーキーWR平本清耀(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関東学生TOP8は、9月1日の第1節第2試合で立教大学と東京大学が対戦した。前半終了間際には一時雨が降り、両校のオフェンスは決め手を欠く展開。タッチダウン(TD)は、第2クオーター(Q)に立教大のルーキーWR平本清耀(しょうよう、佼成学園)がパスレシーブした1本のみ。昨年TOP8の2位に躍進した立教が15-3で勝って、初戦を飾った。

1TD、2FG、1セーフティーで東大に勝利

先制したのは立教。第1Qの2シリーズ目のオフェンスで、エースRB星野真隆(4年、立教新座)のランを軸に自陣深くからロングドライブ。TDとはならなかったが、K野田悠生(4年、桐光学園)のフィールドゴール(FG)で3点を挙げた。

立教は、ディフェンスが東大のオフェンスを抑えると、次のシリーズでQB平本優真(4年、立教新座)からWR木邨陽(ひなた、4年、立教新座)へのロングパスを2本決めて敵陣へ。第2ダウン5yd toゴールのシチュエーションで、左サイドからエンドゾーン内に走り込んだルーキーWR平本に、QB平本がTDパスを決めた。キックも成功し、7点を追加した。その後、東大が前半終了間際にFGで3点を返し、10-3の立教リードで前半が終了した。

練習では失敗していたというプレーを、本番で成功させた

後半は、第4Q初めに立教がFGの3点を追加し13-3。次のシリーズで東大が立教陣15ydまで攻め込んだが、ボールをファンブル。リカバーした立教大SF丸山幹太(2年、立教新座)が61ydリターンした。

東大は立教オフェンスを自陣2ydで抑えたが、回ってきたオフェンスでセーフティーを許して15-3。このまま試合終了となった。

急きょスタメンで、チーム唯一のTD決める

リーグ初戦の我慢比べで光ったのが、立教のルーキーWR平本だった。エースWR木邨の5キャッチと比べると記録では劣るが、ここぞの場面でパスをしっかり捕球し、今季のチーム初TDを決めた。

「ラインぎりぎりだったのでTDになったか不安であまり喜べなかったんですが、みんなが集まってきてくれたので、(TDが)決まったとわかってうれしかったです」。平本はTDのシーンを振り返る。

仲間が祝福に集まってくると、「(TDが)決まったとわかって」うれしくなった

「ほぼ、ぶっつけ本番です」。実は、試合に出られるかどうかも危うかった。報道向けに配られたスターティングメンバー表にも名前は入っていなかったが、急きょのスタメン登場だった。

夏に体調を崩して、夏季合宿にも参加できなかった。試合前週の日曜の練習から復帰し、Bチームでのスタート。ブランクがあってうまくいかないことも多かったが、スターターになったからには覚悟を決めていた。

「(TDパスは)自分に飛んでくるのはわかってました。練習で失敗してたのであまり自信はなかったんですが、同じミスはしたくないなと。絶対に捕るしかないと思って、捕りました」。そう言うと、安堵(あんど)を見せるように笑った。

名門高出身 高い視座からチームを分析

高校の全国選手権クリスマスボウルの常連校、佼成学園の出身。「日本一を目指しながら日々練習していく中で、プレーヤーとしての技術と共に、人としても大きく成長したいと思ったから」

強豪チームでもWRのスタメンで試合に出ていた。しかし高校3年時は、オフェンスがラン重視のパッケージを組んでいたため、なかなか活躍の機会がなかったという。

「自分にはスポーツ推薦の話があまり来なくて、自己推薦で受けられる大学を探していました。高校の頃、立教の練習にも参加させてもらう機会があって、チームの上下関係とか仲の良さの部分は自分に合ってるかなと思い、立教を受験しました」

高校3年時はランファーストのチーム方針で、ボールが飛んでくる機会は少なく活躍できなかった(全国選手権クリスマスボウル)

立教は部員の多くが内部進学生。合宿に行けなかったこともあって、まだ完全にチームになじめている感覚はない。「チームワークのためにも、もっとコミュニケーションを取っていく必要性は感じています」と平本。

コーチング体制については、やりやすさも感じているという。WR担当の岡田義己コーチ(10年卒)、先日就任が発表されたばかりの西村有斗コーチ(日大16年卒)がほぼ毎週末練習にきてくれて、親身に指導してくれる。「練習面で不安も多少あったんですが、コーチがパート練習からすごく親身に教えてくださります。立教に来てよかったと感じてます」

近年立教は、OB・他大OBにかかわらず、Xリーグで経験豊富なコーチを多く招聘(しょうへい)。最新の技術や戦術を学べる、恵まれた環境にある。この面では、高校時代とはまた違った学びがあると平本は話す。

一方で課題感もある。「一人一人の本気というのは、ラッシャーズももちろんありますが、佼成の方が上回っているなと感じることは多いです。日本一を目指す以上、そういうレベルに合わせていきたいなとは思っています」。口ぶりは謙虚だが、新人らしからぬ高い視座を持っている。

平本についてエースWRの木邨に聞いた。「体、体幹の強さでいうと僕と変わらないくらいですね。マンツーもうまいですし、キャッチングセンスもあります。球際がもっと強くなれば、ロングゲインもできる選手になると思います」

立教大学WR木邨陽 QB平本優真と高校以来の阿吽の呼吸、期待のパスユニットが躍動

平本は、間違いなく今後の立教を担う存在になるだろう。

エースWR木邨とは逆サイドのNo.1 WR(一番外に付くWR)としてワイドユニットを引っ張る

日本一経験者の叔父の教え「ボールは目で捕れ」

アメフトを始めたのは小学3年生のとき。母親の優子さんの弟にあたる、叔父の阿南孝仁さん(立命06年卒、オービック)に誘われて、オービックシーガルズのフラッグフットボールチーム、ジュニアシーガルズの練習に参加したのがきっかけだ。

阿南さんはWR/TEで学生、社会人と全国優勝(日本一)を経験している一流選手。叔父の影響で、平本はずっとWRをしてきた。ジュニアシーガルズの練習に行くと、毎週のように阿南さんからWRのアドバイスを受けた。

ボールは目で捕る。WRとして、一番大事にしている考えだ

「ブロックでCBとSFのダブルリードをするときのアタックの仕方、マンツーマンやルート取りでしっかり相手を押してから仕掛けること、ブレーク(ストップしてから切り返す)時の動作など、WRの基礎は徹底的にたたき込まれました。あとキャッチするときは、必ず正面で捕ること。『ボールは目で捕れ!』と言われてました」

当時受けたアドバイスが、スラスラと口をつく。理屈ではなく、練習の積み重ねで身につけたであろうことが伝わってくる。以前よりも会う頻度は減ったが、阿南さんとは親戚の集まりなどで今も定期的に会っているという。

1年生らしく思いっ切りプレーで貢献

尊敬しているWRの選手は、佼成学園の1学年先輩にあたる岩崎充希(日本大学)だ。「高2から試合に一緒に出ていて、勝負で負けてるとこを見たことがないんです。僕もあんな感じに、自信満々に動けるような選手になりたいです」

平本に1年目の目標を聞いた。「やっぱり1年生ということで、思いっ切りやることが大事だと思うんで。いつも面倒を見ていただいている4年生が気持ちよく卒業できるよう、試合でサポートして貢献していきたいです」

ラッシャーズのルーキーWRが、シーズン中にどれだけ成長するのか。活躍に注目したい。

初戦勝利と初TDにも、緩むことはない

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