立教大が早稲田大に10年ぶり勝利 古庄直樹氏がDCに就任、成長速度増す選手たち
関東学生アメリカンフットボール春季オープン戦
5月21日@アミノバイタルフィールド(東京)
立教大学 24-21 早稲田大学
5月21日、アメリカンフットボールの関東学生TOP8の立教大学と早稲田大学が春季オープン戦(交流戦)で対戦した。ともにこの春は勝ち星がなく、同じリーグで秋にも対戦するため、春とはいえお互いの力量と現在地をはかる大事な試合だった。両チームターンオーバーが複数発生する守り合いの末、第4クオーター(Q)6分に立教がTDを決め、試合時間残り1分に早稲田のパスを立教のディフェンスがインターセプトで断ち切った。24-21で勝った立教は、2013年の秋季リーグ戦以来、10年ぶりに早稲田を破った。
立教の守備が粘り3ターンオーバー奪取 終盤に逆転勝ち
先制したのは立教。第1Q8分過ぎに早稲田のQB八木義仁(3年、早大学院)が投げたフラットへのパスを、立教LBの八木皇太郎(3年、立教新座)がインターセプト。直後の攻撃シリーズでQB宅和勇人(4年、立教新座)がフィールド左サイドに駆け上がってタッチダウン(TD)を決めた。その後は第2Qに早稲田がフィールドゴール(FG)を2本成功、立教のRB星野真隆(3年、立教新座)がスクリーンパスから73ydを独走して14-6に。立教はFGを2本外すなど好機を逸しながらも14-6とリードして前半を折り返した。
第3Qに早稲田が追い上げる。RBにエース格の花宮圭一郎(4年、足立学園)と安村充生(4年、早稲田実業)が投入されてランが出始めた。7分過ぎに八木がWR高橋晟希(まさき、3年、早大学院)にTDパスをヒット。2ポイントコンバージョンも成功させて14-14の同点に追いついた。第4Qに入り立教がFGを決めるが、直後のキックカバーで早稲田の堀口拓馬(3年、早大学院)がビッグリターン。このシリーズで早稲田がショートydを押し込むTDを決め、17-21と逆転した。
この時点で試合時間はまだ7分強残っていたが、立教は敵陣深くのターンオーバーやビッグゲインからの一発TD、攻めきれずFG止まりと攻撃のドライブに一抹の不安があったのも事実。ここでリターナーに入った荒竹純大(2年、立教新座)が38ydのビッグリターンでハーフライン付近まで戻し、一気に逆転への機運を高めた。宅和がWR陣に投げ分けるパスと、RB大庭響(4年、立教新座)のランでダウンを更新し、最後はWR川村春人(4年、立教新座)へ19ydのTDパスを決めて24-21と再逆転。川村は昨秋の日本大学戦でもラストプレーで逆転TDパスを捕っていたこともあり、立教のサイドラインの盛り上がりは最高潮に達した。
終盤にモメンタムを掌握した立教は、逆転を狙う早稲田のドライブをDBの武中虎汰朗(2年、足立学園)がインターセプトに仕留め、試合を決めた。
元オービックHCの古庄氏、週に4回ほど指導
立教は攻撃の決定力と、キックカバーをはじめとしたキッキングゲームに課題が見られた。勝利の立役者は粘り強く守り、チャンスをつくってピンチを断った守備陣だろう。昨秋は上位チームに押し切られ、今春は関西大学と同志社大学相手に接戦を落とした悔しさを正面からぶつけた。早稲田戦の勝利は、アグレッシブに攻める姿勢の守備が呼び込んだ。
今季、立教はチーム始動時に守備のコーチ体制を強化した。守備コーディネーター(DC)に古庄直樹氏(立命大卒、前・オービックアシスタントヘッドコーチ)、シニアアドバイザーに有澤玄氏(法政大卒、前・法政大学監督)らを迎えた。
DCの古庄コーチは昨季をもってオービックを退団。「これからどうするかな」と考えていたところ、オービックで長年一緒に取り組んできた奥村宏仁ヘッドコーチ(HC)から「古庄どうするの? 一緒にやろう」と誘われた。そして中村剛喜監督と話を進める中で「このメンバーでやりたいな」と思い、立教入りを決意した。
古庄コーチは週6回ある練習のうち、4回ほどグラウンドに足を運び、学生の考え方から守備のシステムにいたるまで、大いにテコ入れをしてきたと話す。これまで、色んなことに気が散ってしまい後手に回りがちだった弱点を改善するため、個々の役割を明確化。同時にファンダメンタルの強化にも注力し、1対1の勝負で負けない力をつけるための取り組みをしてきたという。
「前はにぎやかなところ(オービック)にいたんで。立教の学生の印象は、おとなしい、真面目、静かです。みんなとてもよく頑張るので、変化や成長速度はびっくりするくらい速いです」
はじめて学生を教える古庄コーチ。最初は手探りだったが、綿密なコミュニケーションで学生との信頼関係をつくり、確実に手応えを得ていると話す。そして同時期にチームに加わった、有澤シニアアドバイザーがチーム全体の組織改善やフレッシュマンコーチを担当しているため、自分は守備に専念できることも大きいという。一番大事にしているのは、コーチからの一方通行ではなく、学生と一緒に良い守備をつくることだ。
今季、守備リーダーを務めるSFの金子湧(3年、佼成学園)は「古庄さんはこっち(選手)の立場に立って話をしてくれるので、成長意欲が格段に上がりました。SFがプレーに多く絡むシステムになったことも楽しい」と変化を前向きに捉えている。
オービック時代、古庄コーチとともに守備をつくってきた仲の奥村HCは、「(古庄コーチは)選手との関わり方、モチベーションの上げ方が本当にうまい。現に伸び悩んでいた選手もイキイキと成長してくれた。さすが日本最高峰のコーチという感じです。あとは選手がどれだけ食らいついていくかじゃないですか」とコーチへの期待、選手への発破を口にする。
昨季加わった、渡辺雄一DBコーチ(専修大卒、オービック、米アリーナフットボール)らとともに、オービックで鉄壁の守備を築いた布陣でさらなるレベルアップに取り組んでいる。
課題の攻撃、ブレークの兆し WR川村の成長に期待
好調の守備に対して、春序盤の2戦でTDを上げられなかった攻撃陣。課題はあるものの、調子は上がっている。早稲田戦はOLのコンビネーションが向上し、RB星野のランを後押しした。星野はランで117yd、パスレシーブ(スクリーンからのラン含む)で94ydの計211ydの力走。攻撃全体の6割強を稼いだ。RBの層は星野に加え、荒竹や大庭と豊富で、昨季の絶対エース岩月要(パナソニック)が卒業しても決して遜色はないという。
スタート4年目の宅和のパスも勝負所で決まった。この日も勝負所で登場したWR川村が早稲田守備との競り合いに勝ち、逆転のTDパスをレシーブ。宅和は「勝負所は川村に投げようと決めていた」と厚い信頼を語った。奥村HCも「バスケ出身ということもあり、ボールへの強さがピカイチ。ルート取りやアサインメント理解がまだ足りないが、春夏でどれだけ突き抜けるかですね。無双するだけのいいものを持ってます」と期待を寄せる。WRのレギュラー陣に川村が食い込んでいけば、立教のパス攻撃はさらに勢いを増すだろう。
オープン戦は近年力をつけている明治学院大学につづき、学生王者関西学院大学との対戦も控えている。早稲田戦の勝利で掴(つか)んだ自信をぶつけ、さらなるレベルアップで秋シーズンの上位進出を狙う。