早稲田大3年ぶり関東制覇 雨の激闘を地上戦で制し、甲子園ボウルへ一歩
アメリカンフットボール関東学生TOP8の今季の覇者を決める上位リーグの首位決定戦で、前年覇者の法政大学と早稲田大学が11月23日に対戦。雨の中での試合は、早稲田が前半の5点差を逆転して30-18で勝った。早稲田は3年ぶり7度目の関東優勝で、全日本選手権・甲子園ボウルトーナメントに出場する。3年ぶりの甲子園ボウル出場に向け、12月4日に岐阜・長良川球技メドウで東北代表の東北大と対戦する。
今季の早稲田の強みを象徴するような試合だった。強力な守備フロントが法政の攻撃スキームを崩して抑え、攻撃ではランナーが力強い走りで得点を重ねた。両チーム、雨でパス攻撃の精度がおぼつかない中、早稲田の地上戦での強さが際立った。
法政が前半リードも、ランのキーマン負傷
第1クオーター(Q)、ファンブルとインターセプトで連続してボールを失った法政に対して、早稲田もQB国元孝凱(3年、早大学院)が積極的に投げるが効果的なパスは通せず。雨の影響もあり、互いに得点につなげられなかった。
法政QB平井将貴(4年、千葉日大一)は序盤のミスもあり、プレーを決めようと力が入りがちになった印象を受けた。また、攻撃のジョーカーである星野凌太朗(4年、日大三)が5回走って早々に負傷アウト。法政にとっては痛い出来事が重なった。
第2Qに入り、早稲田はランのタイミングが合い始めて、RB花宮圭一郎(3年、足立学園)が粘りのある走りで先制タッチダウン(TD)を獲得。法政も、星野に替わって入った宮下知也(4年、法政二)と岩田翔太郎(3年、法政二)が交互に走ってTD。続くキックカバーでボールを抑えて加点し逆転した。ただ、1本目のTFPキックが早稲田にブロックされて失敗し、2ポイントを狙いにいった2本目も決められず。法政が7-12の5点リードで前半を折り返したが、心理的な動揺がないとは言えない状況だった。
悪天候の中、ランの差で早稲田が逆転勝利
後半は早稲田が試合の流れを掌握する。国元がWR佐久間優毅(4年、早稲田実)に19ydのTDパスをヒットし逆転。そして、QB石原勇志(4年、足立学園)とRB2人を入れたオプションプレーがよく出る。第4QにはTDを狙ったパスをインターセプトされるミスもあったが、その後の法政の攻撃を止めると、1プレーでRB萩原奎樹(4年、早大学院)が22ydを走り切ってTD。力みから攻守とも後手に回った法政とは対照的に、早稲田のランが出まくる。試合終盤にはRB安村充生(3年、早稲田実)がTDを追加し30-12と試合を決めた。法政はその後11分に岩田が3本目のTDを返したが、遅かった。
被ターンオーバーはともに2回だが、法政に対してよりシビアな結果が出た。パス獲得は早稲田が108ydで法政が123ydと互角だったが、ランは早稲田の262ydに対して法政が111ydと大差がついた。ランの差が、勝敗に直結した。
戦前、雨で空中戦が制限されると、RBが粒ぞろいで豊富なランパッケージを持つ早稲田が有利、という見立てがあった。法政の星野が健在なら話は単純ではないが、これまでけがが少なかった星野が、この大一番の序盤で抜ける不運。パスに頼らずともランでゲインを重ねられる状況をつくれた早稲田が、主導権をつかんだ。厳しいコンディション下で手堅さを見せた早稲田をたたえたい。
雨での敗戦から…大雨でも練習
主将のOL亀井理陽(4年、早稲田実)は、悲願の勝利をかみ締めながらいう。「今年1年間、法政を倒し、そして日本一という目標を掲げてやってきた。まだ途中だが、法政に勝って関東優勝できたことは素直にうれしい」
今年のチームは、4年生が威厳を発するというよりは、下級生も含めて全員が同じ方向を向くことを大事にしてチームづくりをしてきたという。プレーでも、全員が集まることを大事にしてきた。
現在の4年が入学する2年前。2017年の日大戦は大雨の中の試合で負けた。監督からこのときの話を常日頃から聞いていて、雨での試合はずっと意識してやってきた。夏合宿でも大雨の中で練習を実施。関東最終戦の大舞台、そのときの経験がしっかりといきた。
エース不在でも主将中心に一丸
就任6年目の高岡勝監督は、今年のチームをこう評価する。「今年のチームはエースが不在で特徴がないと思われていたかもしれないが、亀井が中心になって「一丸」という目標を立てた。3年の目黒(歩偉、佼成学園)が中心になって、下級生がどうチームに貢献していくかを日々真剣に考えた。その結果が今日の結果につながったと思う」
タレント豊富な法政にどうやって勝てるかを、日々コーチと考えて取り組んできた。監督に就任して関東優勝は3度目。しかし、甲子園ボウルは創部以来いまだに勝利がない。
「今年はさらに上を目指している。ここで勝ってどう兜(かぶと)の緒を締めるかという部分で、その先をどうしようかと考える優勝になった」。まだ見ぬ景色を目指し、抜かりはない。
創部初の甲子園ボウル制覇を目指す
一昨年は新型コロナウイルスのクラスターが発生、立教戦を辞退して勝ち点が足りず。昨年は関東決勝で法政に負けて涙をのんだ。前回甲子園ボウル出場時に1年生だった部員は4年生になり、今年甲子園ボウル出場を逃すと、出場経験者が途絶える。
なんとしてもつかみたかった1勝を、快勝で締めくくった早稲田。見据えるゴールは、創部初の学生王者だ。