法政大学のRB星野凌太朗、連発するビッグプレーは謙虚に地道な努力の成果
アメリカンフットボールの関東大学1部TOP8で、今、最も観客を沸かせられる選手は法政大学のRB(ランニングバック)星野凌太朗(3年、日大三)だろう。昨季、リーディングラッシャーに輝き、上級生になってさらにプレーの幅を広げている点取り屋から目が離せない。
「四刀流」のタッチダウン
星野は開幕戦(10月3日)の日本大戦で圧巻のプレーをみせた。昨季、甲子園ボウルに出場した王者に対し、パス、パスレシーブ、キックオフリターン、ランと4つの異なるプレーでタッチダウン(TD)を挙げた。日大戦の第2クオーター(Q)、相手ゴール前でボールを受け取った星野はスペシャルプレーでTE中木隆平(4年、法政二)へパスを投げ、逆転のTDを成功させた。
実は、野球少年だった星野は肩には少なからず自信がある。横浜市出身で小さい頃は剣道とともに野球に親しんだ。高校野球の強豪の日大三に憧れもあり、日大三中へ進んだ。軟式野球では遊撃手などで活躍したが、三高のレベルは想像以上に高かった。「中学に入るまでは知りませんでしたが、厳しいということで高校で何をしようかと考えた時、三高にアメフト部があり見学に行きました」
初めての試合からビッグプレー
高校1年での今でも忘れられないプレーが、星野のアメフトの原点だ。2016年4月、アメフトをはじめて初めて試合に出た。春季東京都大会、強豪の駒場学園戦で独走のTDを決めた。「ルールも全然知らなかった。がむしゃらにやって、タッチダウンが取れたのですごく印象的でした」
そこから、長い距離を走り切るようなビッグプレーが星野の代名詞になった。法大でルーキーだった19年の早稲田大戦も鮮烈な記憶を残している。優勝に王手をかけていた早大に対し、星野は試合開始のキックオフのボールを捕ると、98yのリターンTDを決めた。試合には敗れたがこの年、キックオフリターンでは1年生ながらリーグ1位の平均33.6ydを記録した。
観客が沸くようなプレーを狙っているわけではない。星野は「自分の役割をしっかりこなすことだけを考えている」と謙虚に話す。ガードをしてくる選手がよりやりやすいコース取りを、常に考えているという。
日大三高時代に、二つ上に厳しいLB(ラインバッカー)の先輩がいた。練習中、その先輩からどうやって逃げようか、どうやってかわそうかと考えていたら、自然と切り返しのステップなどが身についた。三高は人数も限られており、試合では攻守に出ずっぱりでハーフタイムに一息つくような感じだった。それが今のたくましさにつながっている。
9年ぶりの甲子園へ欠かせない
10月の日大戦に話を戻すと、TDパスを投げた後の星野は、前半終了間際にWR小山昭瑛(4年、聖望学園)から後ろへ戻すパスを受け取るスペシャルプレーから右サイドを駆け抜けて2つ目のTD。同点に追いつかれた直後のキックオフでは97ydのリターンTDを決めた。最後は6ydを走って、この日4つ目のTDでダメを押した。2戦目の立教大戦(10月23日)でも第1Qに星野の連続TDランから主導権を握り快勝した。
法大の有澤玄ヘッドコーチは「レベルは相当高い。人間性もよく、痛がらないけがをしないすごくいい選手」と期待をかける。コロナ禍、試合数が限られてきた中で、試合を通してパフォーマンスを発揮できるスタミナなどが課題でもある。
星野は法大の2つ上の先輩RB阿部快斗(ノジマ相模原ライズ)にあこがれ、追いかけてきたという。下級生の時につけていた背番号「30」は阿部の番号を引き継いだものだった。1桁の番号をつけたかったと今年から背番号を「1」に変えた。「上級生になって後輩もでき、自覚を持ってチームを引っ張っていく存在になれればと思いやっています」
法大が甲子園ボウルに出たのは2012年が最後、大学日本一はさらに06年までさかのぼる。17年にチームの愛称を「オレンジ」にして初めての頂点には、一発で局面を打開できる星野の力が欠かせない。
関東大学1部TOP8
11月13日@アミノバイタルフィールド
立教大35-27日本大
11月14日@横浜スタジアム
10:45 東京大-桜美林大、13:30 法政大-中央大、16:15 早稲田大-明治大
11月27日@横浜スタジアム
10:45 5位決定戦、13:30 3位決定戦、16:15 決勝
11月28日@アミノバイタルフィールド
14:30 7位決定戦