アメフト

京都大LB石田凜 偶然の出会いに導かれアメフト部へ チーム1の練習量で3年目開花

石田は、山本コーチによると「普段から最初に練習に来て、最後まで残って練習をしています」(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関西学生1部リーグは、9月28日に京都大学と桃山学院大学の試合があった。試合は京大が17-3で桃山学院に勝ち、前節の大阪大学戦につづいて2勝目を挙げた。京大は守備が3失点に抑えたことが勝因として大きく、中でもLBの石田凜(3年、佼成学園)の成長と活躍が著しい。

パスカット・タックルで2勝目に貢献

開幕2連敗と厳しい戦いを強いられてきた京大が、2勝目を勝ち取った。桃山の得点をフィールドゴール(FG)の3点に抑え、攻撃が第1クオーター(Q)にQB浦田紘佑(3年、岡崎)からWR廣田悠人(2年、四日市)へのパス、第2QにRB平原大輔(4年、西京)のラン、K宮出青葉(4年、三国丘)のFGで加点した。第4Qには桃山に自陣まで攻め込まれたが、桃山のパスをLB石田、DB井村蒼太(4年、大手前)がインターセプトに仕留め、京大が終始ペースを握った。中でも石田はパスカット、タックルと守備の中心となる活躍で、モメンタムをつくった。

第4Q、桃山に攻め込まれたシーンでインターセプトを決めて断ち切った

「ズルズルといかれるシリーズもあったり、やったらあかんミスもありました。内容としては悪かったですね」。試合後、石田がストイックに振り返った。良かったプレーについては、「僕の役割がハマっただけで、サイン勝ちかなという感じです。インターセプトについては、普段の練習が生きたかなと思います。実は去年の甲南戦でインターセプトをミスっていて、ASの山本(悠生、3年、北野)やQBの中西(聡大、2年、高槻)にパスを投げてもらって練習をしていました」。

以前の課題をしっかりと克服し、ナイスプレーにつなげた。阪大、桃山とこの2戦は、良いイメージで試合に臨んでプレーできているという。

連敗後に連勝 チームの一体感醸成中

今年の春シーズン、京大は大いに苦しんだ。5試合組まれたオープン戦は全敗。課題ははた目からも顕著で、当時からすでに入れ替え戦への出場を悲観する声すら上がっていた。そして秋は開幕から2連敗——。石田が振り返る。

「苦しい。春はもうずっと苦しくて。変えよう、変えようってみんなで言ってたんですが、秋の初戦も2戦目も、あと1本のところまで行って最後にしょうもないミスがあって。振り返ると、夏以降は、すこしずつ成果が出始めてたのかなと思います。それがそのあとの、勝てた試合につながってるので」

攻守がかみあってきている。京大の一体感は、節が進むごとに確実に増している。

LBの基本、タックルもめきめきと上達している

合格報告に行った予備校でQB泉と出会う

石田は、高校アメフトの名門校・佼成学園の出身。しかしアメフトではなく、野球をしていた。石田は特進クラスだったが、120人いる野球部に所属。レギュラーではなかったが、ピッチャーをしていた。佼成学園の野球部は、石田が3年時の2020年、コロナ禍の西東京独自大会で準優勝した強豪校だった。

「京大を目指したのは、高いレベルで勉強しながら一人暮らしをしたかったからで、もともとアメフトをしたかったからではないんです。ただ、クリスマスボウルには毎年応援に行っていて、王子スタジアムでやった逆転勝ちの試合も見ていました。アメフト部も、野球の試合には来てくれていて、身近な存在ではありました」

一浪を経て京大に合格したときは、入学後に野球を続けるのか、別のスポーツを続けるのか、そんなことをぼんやりと考えていた。

ボールの近くにいるシーンが多い

現在関西大学4年のSF寺田了とは中学(和光中)時代に同級生で、高校も同じだった。また、佼成学園野球部出身で、大学でアメフトを始めている選手がそれなりにいて、先輩や同期の活躍を目にすることはあった。

しかし最終的な決め手になったのは、浪人時に通っていた河合塾新宿校へ合格報告にいったときだという。「泉(岳斗、QB、24年卒)さんとか京大の人たちが予備校に来ていて、熱に引かれた感じです。アメフトにそんなに詳しくない僕でも、泉さんのことは知っていたので」。なんとここで泉さん(現・コーチ)に出会っていたというから、驚きだ。

京都大学の泉岳斗 本場仕込みのオールラウンダー「早く日本で一番のQBに」

山本コーチ「中核にならないといけないプレーヤー」

京大に入ってから、石田はとにかくハードに、ストイックに練習を重ねてきた。コーチ、仲間らからも一目置かれるほどだという。京大のディフェンスコーディネーター就任2年目の山本睦コーチが言う。

「石田は京大の中で一番練習する選手です。誰に聞いてもそう答えると思います。普段から最初に練習に来て、最後まで残って練習をしています。強豪野球部出身で、京大生にはない感じのガッチリした体つきをしていたので、最初はフットボールの動きは全然でしたが、かなり理解度も上がってきて、速いスピードでプレーできるようになっています」

リードブロッカーのさばき方もうまくなってきているという

先発に定着したのは今年に入ってから。都立西高出身のLB友井幹太、前更斗真(ともに4年)らに、未経験の石田が食い込み、ディフェンスユニットの良い材料になっているという。

チーム1の練習の虫で、アサイメント理解が進み、必然的に良いポジショニングを取れる選手になった。ゆえに、ボールに絡める機会が増えており、それがインターセプトやパスカットという好プレーにつながっている。

「LBとしてボールキャリアにタックルできるのは当然だと思っていて、ブロッカーに対しても、フリーになれる能力が最近ついてきています。避けるにしても、ヒットして処理するにしてもうまくできるようになってきてるので、それを次の関京戦で見せてくれたら」。次節の関西学院大学戦に向け、山本コーチは石田に期待をかける。

「石田はチームの中核にならないといけないプレーヤーだと思っています。もっとビッグプレーを起こせる選手になってもらいたいです。今もちょくちょく出てますが、それをもっと発揮できるよう、日々の努力を地道に続けてほしいですね」

リーグ戦も序盤戦を終えて、上位校との対戦に進む。京大守備の中心にいる石田の活躍に、京大ギャングスターズの命運がかかっている。

この日は佼成学園野球部の友人が試合を見にきてくれた。次の試合だった中高の同級生、関大の寺田とも声を交わした

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