駒澤は5連覇を目指す 青山学院・國學院も優勝狙う 全日本大学駅伝監督アンケート
いよいよ11月3日に開催される第56回全日本大学駅伝。全国から27チームが日本一をかけて名古屋・熱田神宮から三重・伊勢神宮8区間の106.8kmを駆け抜ける。大会前に全日本大学駅伝事務局が行ったアンケートから、各大学の監督・チームの目標についてまとめた。レース前日には監督の会見が予定されており、各チームのエントリーや戦略に注目が集まる。
※回答は10月9日締め切りのチームエントリー時点のもの。
優勝を狙うのは駒澤大ら3校
「優勝」を目標に据えるのは、駒澤大学・青山学院大学・國學院大學の3校。
駒澤大は大会史上初の5連覇がかかる。監督就任2年目となる藤田敦史監督は、チームの特徴として「全日本大学駅伝は相性が良い。エース区間、つなぎ区間も外さない走り」と分析する。歴代のエースが走ってきた7区は「精神的支柱」と評される篠原倖太朗(4年、富里)か。ロードの強さに定評がある山川拓馬(3年、上伊那農業)や「今年の成長株」といわれる伊藤蒼唯(3年、出雲工業)も主要区間への起用が予想される。昨年までのチームを支えた鈴木芽吹(現・トヨタ自動車)らが卒業し、初駅伝となる選手も多いが、藤田監督は「すべての選手を信頼し期待をかけています」。あと一歩で優勝を逃した出雲駅伝の雪辱を果たせるか。
青山学院大の原晋監督は「チーム全体が強くなりたいという思いで陸上競技に向き合っている」という。最も期待をかけるのは「爆発力はチームナンバーワン」と評価する鶴川正也(4年、九州学院)。出雲駅伝にはエントリーされなかった主将の田中悠登(4年、敦賀気比)も、今大会にはエントリー。昨年は惜しくも2位でゴールテープを切る結果となったが、今年はどうか。
出雲駅伝を制し、勢いに乗る國學院大學。前田康弘監督は「層の厚さ」が特徴だという。前回大会を走った選手が7人残り、経験も豊富。主将としてチームを率いる平林清澄(4年、美方)は、1年時から3年連続エース区間の7区を任されているため、順当にいけば今年も7区への出走が予想される。最長区間である8区は3年連続で伊地知賢造(現・ヤクルト)が担っていたが、今年は誰が走るのかにも注目したい。全日本大学駅伝を初優勝で終え、3大駅伝三冠へ王手となるか。
■目標が「優勝」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
駒澤大学 1位/29大会連続31回目/16回
青山学院大学 2位/12大会連続14回目/2回
國學院大學 3位/10大会連続12回目/0回
中央大、創価大、早稲田大が表彰台を目指す
「3位以内」と回答したのは、中央大学、創価大学、早稲田大学の3校。
10月19日に行われた箱根駅伝予選会では、エースの吉居駿恭(3年、仙台育英)や溜池一太(3年、洛南)が不在の中、6位で本戦出場を決めた中央大学。短い調整期間で全日本大学駅伝までにどれだけ調子を合わせてこられるか。藤原正和監督は今年のチームを「4年生を中心にまとまりがあるチーム。各学年に核となる選手がおり、世代間でも競い合う意識が強く、それが今季好調の要因である」と評価する。吉居は「今季駅伝に燃えている」。東海林宏一(4年、山形南)には「4年目にして開花した。苦しんできた分、やってくれそうな雰囲気がある」といった興味深い回答もあった。
創価大学の榎木和貴監督はチームの雰囲気について「吉田凌(4年、学法石川)を中心に明るい雰囲気の中にも、競争力、向上心がありチーム全員が仲が良い」という。8月にはケニア合宿に6人が挑戦し「陸上王国ケニアの強さを肌で感じて帰ってきた」。10月の出雲駅伝では、10000mで27分41秒52の自己ベストタイムを持つスティーブン・ムチーニ(2年、ミクユニ)が、ケガの影響で欠場したが、チームは4位。チーム全体の走力が上がっていることを感じさせた。
早稲田大の花田勝彦監督は「どこかで先頭に立つ場面があった中で、総合3位以内」と目標を立てた。出雲駅伝では、1区に山口智規(3年、学法石川)、2区に伊藤大志(4年、佐久長聖)とエース格を置くオーダーだったが、はまらず2区終了時点で11位と落ち込んだ。しかし「今年一番伸びた選手」と評価を受ける4区の藤本進次郎(3年、清風)、5区区間3位の長屋匡起(2年、佐久長聖)、6区区間2位の工藤慎作(2年、八千代松陰)で一気に巻き返して6位でフィニッシュ。出雲駅伝への出走がなかった10000m27分台ランナーの石塚陽士(4年、早稲田実業)が、全日本大学駅伝を走れるかどうかもポイントだ。
■目標が「3位以内」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
中央大学 4位/4大会連続31回目/0回
創価大学 6位/3大会連続3回目/0回
早稲田大学 10位/18大会連続30回目/5回
シード権争いも激しい争いに
シード圏内の順位を目標にしたのは、城西大学、大東文化大学、東京国際大学、東海大学、東洋大学、日本体育大学、立教大学、帝京大学、神奈川大学、そして関東以外からで唯一、京都産業大学。
城西大学はシード権内だけでなく「昨年のチーム(5位)を超える成績」が目標だ。櫛部静二監督は「『もっと早く、もっと強く、もっと楽しく』をスローガンとして掲げていることから、とても明るく雰囲気の良いチームである」と話す。主力となるのは10000m27分台の自己ベストを持つ斎藤将也(3年、敦賀気比)、出雲駅伝で3区を走り7人抜きの快走を見せたヴィクター・キムタイ(3年、マウ)、主将として「日ごろから競技への取り組みや競技会の成績によって、チームをけん引し、チームメイトからも一目置かれている」と評価される平林樹(4年、拓大一)。出雲駅伝は目標に届かず7位だったが、全日本大学駅伝では修正できるか。
前回大会は選考会からの出場ながら本戦7位とシード権を獲得した大東文化大学。チームのエース、西川千青(4年、九州国際大付)を中心に、「選手として、人としても成長した3年目。長い距離への適正は抜群」だという入濵輝大(3年、瓊浦)や1年生ながら出雲駅伝2区区間3位で「将来楽しみな選手」と目される大濱逞真(1年、仙台育英)らが名を連ねる。
東京国際大学の横溝三郎監督は「必ずシード権を獲得する」と意気込む。期待しているのは「全選手」としながらも、特に「3年ぶりに自己記録を更新した中山拓真(3年、青森山田)や1年生で(10000m)29分00秒をマークした小柴裕士郎(1年、水城)に勢いがある」と回答した。
前回大会9位でシード権を落とした東海大学。駅伝主将の梶谷優斗(4年、滋賀学園)や「チームの絶対的エース」花岡寿哉(3年、上田西)らがエントリー。箱根予選会ではアクシデントにも見舞われ14位と本選出場を逃した。1カ月を開けずしてのレースにはなるが、今年こそシード権を獲得し、次につなげたい。
全日本大学駅伝関東地区選考会では1~3組で組トップを取った東洋大学。酒井俊幸監督は「4年生の安定感と1年生の突き上げ、3年生の主力選手としての自覚が出てきたことが特徴」と話す。主将の梅崎蓮(4年、宇和島東)ら4年生が夏合宿で故障・体調不良と満足に練習を積めなかったが、3年生に自覚が芽生えて成長したという。「例年行っている能登合宿が震災の影響で行えなかった。復興のために一役を担いたい」と意気込みを語った。
3大会ぶりに本戦に出場する日本体育大学。主将の分須尊紀(4年、東農大二)を中心に、チームエントリー16人中9人が4年生。関東インカレ1部1500m、日本インカレ1500mともに優勝の世代屈指の力を持つ中距離ランナー・高村比呂飛(4年、敦賀気比)もエントリー。出走に期待がかかる。
髙林祐介監督就任後初の駅伝、そして大学としても初の出場となる立教大学。関東インカレ2部ハーフマラソンでは、稲塚大祐(4年、高岡向陵)が箱根駅伝強豪校と肩を並べる5位入賞と前半シーズンから成績を出してきた。主将の安藤圭佑(4年、豊川)や副将の林虎大朗(4年、大牟田)、エース格の馬場賢人(3年、大牟田)を中心に、シード権獲得も夢ではない顔ぶれとなっている。
帝京大学の中野孝行監督は練習方針を「できないことを嘆いても仕方がないのでやれること、できることを重視したのと、ネガティブ思考を排除し、常にポジティブな考えを優先した。勝つことの大切さを重視した」という。エースで主将の山中博生(4年、草津東)のほか、中野監督が「この夏大きく飛躍した」と期待する廣田陸(2年、北海道栄)と「何かよくわかりません」という意味深なコメントがあった原悠太(2年、大阪)の2人にも注目したい。
2大会ぶりに本戦出場を決めた神奈川大学。今年監督に就任した中野剛監督は「出るからにはシード権を狙いたい」と話す。「エース。他大学と渡り合える、うちでは唯一無二の選手」と絶賛する宮本陽叶(3年、洛南)を中心に入賞ラインを狙う。
関西勢から唯一「シード権獲得」を目標に挙げたのは京都産業大学。出雲駅伝でも関東勢を除く中で最上位の12位につけ、好調ぶりがうかがえる。「4回生を中心にしたチーム」で、絶対的エースの小嶋郁依斗(4年、滋賀学園)は、「20数年ぶりに京産大記録を更新」したそう。関東勢に一矢を報いることができるか。
■目標が「シード権」または「入賞ライン」のチーム(前回順位/今大会出場回数/過去優勝回数)
城西大学 5位/2大会連続11回目/0回
大東文化大学 7位/3大会連続45回目/7回
東京国際大学 8位/6大会連続6回目/0回
東海大学 9位/11大会連続37回目/2回
東洋大学 14位/17大会連続32回目/1回
日本体育大学 -位/3大会ぶり44回目/11回
立教大学 -位/初出場
帝京大学 12位/2大会連続16回目/0回
神奈川大学 -位/2大会ぶり19回目/3回
京都産業大学 -位/4大会ぶり49回目/1回
関西勢は「打倒関東」 国公立大同士の戦いにも注目
「ゴールまでタスキをつなげること」を目標にするのは、札幌学院大学。鹿内万敬監督は「4年生が主体のチーム。そこに各学年厚みを増し、調子を上げてきている。夏場の走り込みを通じて、安定感が増してきている」といい、伊勢路で力を出し切りたい。
2大会ぶりの出場となる東北大学は目標を「何度走っても更新できなかった36回大会の部記録(5時間41分20秒)の更新、他の国公立大学に勝利すること」に据えた。東北地区選考会での東北学院大学との熱戦が、部員全体に深い感動をもたらしているといい、向田祐翔(4年、日大東北)を中心に、ほかの国立大3校との戦いにも注目だ。
北信越地区選考会で2位の信州大学をわずか「1秒5」差で上回り、本戦出場を決めた新潟大学の目標は「北信越地区増枠」だ。前回大会で出走した8人全員が登録されているのが強み。前回、前々回はともに24位にとどまったが、10000m北信越記録保持者のエース・中戸元貴(3年、黒沢尻北)を軸に今大会では浮上を狙う。
2大会ぶり7回目の出場となる皇學館大学。今季好調の岩島昇汰(4年、益田清風)、曽越大成(4年、木本)、毛利昂太(4年、神港学園)を中心にしたチーム編成で18位以内に入り「東海地区増枠」を狙う。
「関東圏の大学1校以上に勝つこと」を目標にするのは関西大学。吉田有輝監督はチームの特徴を「スポーツ推薦による入部者が27名中9名と非常に少ないが、一般受験等で入学した選手も含めてチーム全体が力をつけることで、全日本大学駅伝への出場権を獲得した」と話し、「打倒関東(DATOKAN)」を掲げ、強豪の関東勢に挑む。
大阪経済大学は「地方勢トップ&関東の一角を崩す」ことが目標。今年は11人の選手が、関東の大学や実業団の強豪チームで練習を積み、それぞれが新たな経験を持ち帰ったという。青木基泰監督は特にエースの新博貴(3年、西宮北)の走りに期待する。
「最低でも関西出場枠の4枠を維持する。1つでも上の集団でレースすること」が目標の立命館大学。関西地区選考会では5位のチームにわずか5秒84という薄氷の差の4位で食い込んだ。山菅善樹監督はチームを「順調に下級生が力をつけてきており、例年以上に学年間のバランスが取れている」と評価しており、伊勢路での躍動を誓う。
全日本大学駅伝初出場となった岡山大学。青山学院大学から編入で岡山大に入学・入部した石鍋颯一(4年、鎌倉学園)が「関東の名門校で培った知識と実力で新しい風を吹かせている」。スポーツ推薦等がない中で、自分たちで考え課題を解決できるところが長所だという。目標は「国公立大最上位」だ。
2大会連続の出場となる鹿児島大学。昨年に39大会ぶりの全日本大学駅伝出場を決めたことで、OBらからの支援体制が強化され、現役選手へのサポートがより手厚くなった。「九州地区増枠と国公立大1位」を目指して、伊勢路を駆ける。
全日本大学駅伝では、毎年成績に応じて翌年大会の地域に割り当てられる枠の数が変動する。各8地区の基本枠は1ずつ。現在はシード枠として1~8位の大学が自動的に次回大会の出場権を得て、9位〜17位の大学の所属地区に成績枠計9を配分する。各地区の出場枠は最大で15とするルールになっている。上位は関東勢が占めることが予想され、関東勢以外は少しでも地方枠を増やすために上位を狙っていく。
■目標その他(前回順位/今大会出場)
札幌学院大学 22位/7大会連続31回目
東北大学 -位/2大会ぶり17回目
新潟大学 24位/3大会連続15回目
皇學館大学 -位/2大会ぶり7回目
関西大学 18位/2大会連続14回目
大阪経済大学 16位/4大会連続26回目
立命館大学 20位/24大会連続36回目
岡山大学 -位/初出場
鹿児島大学 21位/2大会連続10回目