アメフト

品川CC・池田唯人と桃山学院大・池田知暉 仲良しRB兄弟は舞台違っても二人三脚で

高校大学とけがに苦しんだ兄・唯人(左)と、兄にあこがれてアメフトを始めた弟・知暉(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの秋季シーズンも終盤戦。異なるカテゴリーでRB“池田兄弟”の走りが光った。兄の唯人は関西学院大学を今春卒業。社会人1年目の今年、XリーグのX1エリアに所属する品川CCブルザイズのRBとして大活躍。弟の知暉(4年、仁川学院)は、今季から関西学生1部リーグに昇格した桃山学院大学のRBとして、TDランを走り今季初勝利に貢献した。

兄は大けが乗り越えX1エリアのリーディングラッシャーに

品川CCブルザイズに所属する兄の唯人は、今年、X1エリアのリーディングラッシャーになった。スピードに乗ったその走りを見るのは約2年半ぶりで、とても新鮮だった。

関西学院大時代はけがに苦しんだ。下級生のときから試合に出場し、3年時にはRBのパートリーダーになって春シーズンに活躍した。その年のエース候補になったが、伸び悩んだ。

関西学院大が初陣で明治大に勝利、大村和輝監督「今年はポテンシャルがあるチーム」

「リーダーという立場でちょっと考えすぎてしまって、あまり良いプレーができなかったです」。その年は、同期の前島仁と、1学年下の伊丹翔栄(現4年、追手門学院)が試合に多く出ていた。

3年春の明治大戦では大活躍だった

「3年の秋はうまくいかなくて悔しかったんで、4年ではやり返そうと思ってたんです」。しかし、練習中に大けがを負ってしまう。高校3年のときにも同じ場所をけがしていた。原因は、タックルを受けるなど外的なものではなく、自分の走りが負担になったからだった。

「高校に次いで最終学年でけがをするのが2回目だったので、正直なえてしまった部分もあって。一方で乗り越え方もわかってたんですが。最終的には100%じゃない自分が試合に出るよりも、後輩らが出る方がチームのためかなと思っていたので、そこは」。下級生の頃は試合に出ることばかり考えていたが、この頃はチームが勝つための最善を考えていた。リーグ戦の終盤と甲子園ボウルは、数プレー出場した。ボールを持ったのは2回で、9yd走った。

4年時は自分のリハビリと仲間のバックアップに徹した。リーグ戦終盤と、甲子園ボウルは数回走った

卒業後も現役続行「ゼロから作っていく面白さ」

この春卒業を機に上京し、関学大の1学年先輩でもある福井柊羽と同じ会社に就職した。元々、社会人でフットボールを続ける気はなかったが、福井が所属する品川CCブルザイズに誘われて入団。唯人は、初年度から圧倒的な存在感を放つ。リーグ戦を通して72回走って457yd、5TDを決めた。難敵の警視庁イーグルスを破り、電通キャタピラーズには惜敗したが、あと一歩のところまで追い詰めた。「ブランクがあったので初戦、2戦目は様子見だったんですが、進むにつれて実力は出せてきたんじゃないかなと思います」。納得の口ぶりで唯人が言う。

社会人1年目で仕事も多忙だが、始業時にその日やりきる業務を決めて、トレーニングと両立しているという。「筋トレは歯磨きみたいなもんですね。ブルザイズ入るってなってからは、週6でジムに行ってました(笑)」

今は、大学とは真逆の環境でフットボールを楽しんでいる。「ファイターズは環境が整っていましたが、ブルザイズはグラウンドも決まっていない環境なんで。去年も1勝しかできなかったチームで、試行錯誤しながらゼロから作っていくのは、大学のときとはまた違った面白さがあります」。知暉よりも一足先にシーズンを終えた唯人は、1年目をこう振り返った。

関学と同じ青いヘルメット。ブルーサンダース戦では第3Qに24yd走り切ってTDを決めた

兄を追ってアメフトへ「スピード・力強さ、尊敬」

弟の知暉は今年、桃山学院大の最上級生。1年生のときは1部で戦ったが、2年と3年は2部。今年3年ぶりに1部の舞台で戦った。リーグ戦序盤は厳しい戦いが続いた。第6節の近畿大学戦は39-48と肉薄したが一歩及ばず。11月10日のリーグ最終戦、大阪大学戦でやっと初勝利をつかんだ。

阪大戦はボールを19回キャリー、79yd走ってTDも決めた。知暉が振り返る。「今シーズン初めてのTDだったんです。最後の試合で結果を出せたのは本当に良かったと思います」

関学中学部の頃アメフトを始めた唯人の影響で、仁川学院高校でアメフトを始めた。高校時代はコロナ禍だったこともあって、やり切った感じはなかった。兄とは違うチームでチャレンジしたいと思い、桃山学院に進学。下級生のときはけががちだったが、昨年から試合に出るようになり、桃山のランニングアタックを支える選手になった。小柄で細身ながら、兄譲りのキレのあるカットとスピードが持ち味。ラストイヤーの今年は、エース格としてRBのパートリーダーも務めている。

「RBとして兄を尊敬しているのは、ボールを受けたあとの縦へのスピード、鋭いカット、そして一度で倒れない力強さです。常にポジティブでどんなことも真面目に取り組む姿勢も尊敬しています」。弟は、大好きな兄のことを心から慕っている。

兄は大学1、2年生の頃、練習が終わって帰宅すると、食事を済ませてから夜中までジムに通っていた。試合でミスをしても落ち込まず、けがをした時も決して弱音を吐かなかった。今できることを最大限にやり続ける兄の姿をずっと見てきた。唯人は知暉にとって自慢の兄だ。

知暉はリーグ最終節で今季初TDと初勝利を上げた

今年は上位チームと比べると限られたリソースの中で、1部に残ることを目標に走ってきた。阪大戦は唯人も東京から見にきていて、試合後に2人で初勝利を喜んだ。「12月にある入れ替え戦でも活躍し、1部の舞台を後輩に残したい」と知暉は言う。

「後輩に1部の舞台を残す」兄譲りの走りで残留めざす

年子の唯人と知暉は小さい頃から仲が良かった。「小さいときは家でも出かけ先でもずっとけんかしていましたね(笑)。まあ、“けんかするほど仲が良い”みたいな話ですが。昔っからトモキは僕のケツをおっかけてきてて、色々まねしてましたね。なんというか、好きなのはめちゃくちゃ伝わってきてました。まあ僕も好きだったんですけど(笑)」。唯人が幼少期の思い出を振り返る。

アメフトをはじめてからは、公園に連れ出してキャッチボールをした。「最初は無理やりやったんすけど、そのうちそれが楽しくなったのかなと思います」

弟が高校でアメフトを始めたのは間違いなく兄の影響だが、このときは「気づいたら、しれーっと始めてました」。唯人が笑う。

知暉の走りには、兄も認める気持ちの強さがある

唯人は大学3年から幹部をするようになったため一人暮らしを始めた。離れて暮らすようになってからも、知暉の試合はずっと見ている。連絡は今も頻繁に取っていて、アドバイスを求められることもあれば、見ていて気づいたことを自分から伝えることもあるという。

「トモキは体は大きくないですけど、負けん気とか気持ちの強さはプレーに出ていると思っていて。弟も頑張ってるし自分も負けられないと思います」。唯人も知暉から刺激をもらっている。

「まだ言ってないですけど、トモキの入れ替え戦は見に行こうと思っています。最後の年に1部でやれて、それは先輩が残してくれたものだと思うんです。あいつも1部と2部両方でやっていて、全然違うって言ってたので、後輩たちがいい環境でやれるように勝ち切ってほしいと思います」

桃山学院が出場する入れ替え戦は、12月14日にたけびしスタジアム京都である。その日、唯人と知暉の笑顔は見られるだろうか。

「僕のことは生意気にユイトと呼んできますが、家族や親戚からは『ともちゃん』と可愛がられています(笑)」と唯人

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