アメフト

桃山学院大・赤迫甲惟 兄のけがを機にアメフトへ レギュラー初出場で躍動3TD

ボールに飛びつき、エンドゾーンに転がりこむ。不器用ながら必死なプレーぶりが目をひいた(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関西学生1部リーグは、10月26日に東大阪市花園ラグビー場で近畿大学と桃山学院大学が対戦した。リーグ戦序盤で優勝候補の一角関西大学を破った近畿大と、ここまで勝ち星がない桃山学院の試合は、桃山学院が終盤に猛追撃を見せて盛り上がった。試合は48-39で近畿大が勝ったが、桃山学院大のWR赤迫甲惟(かい、2年、府立渋谷)の、全力の奮闘が光った。

競技始めて2年目 乱打戦でチーム得点の半分を稼ぐ

先制したのは桃山。第1クオーター(Q)10分にK藤井龍馬(4年、神戸弘陵)のフィールドゴールで3点を奪った。しかし近大QB勝見朋征(4年、近大附属)のパスがさえ、すぐに逆転される。桃山はQB井上遼祐(3年、宝塚東)がWR赤迫にTDパスを決め、21-10の近大リードで前半を折り返した。

後半も点の取り合いに。第3Q6分、桃山はWR赤迫の2本目のTDレシーブで点差を詰める。最終第4Qにも赤迫へのパスを皮切りに3本のTDを追加した桃山。一時は41-39と2点差まで詰め寄ったが、最後に近大がTDを取って48-39で近大が乱打戦を制した。

桃山は敗れたが、82番の赤迫はガッツあふれるプレーで得点の約半分を稼いだ。

まだ線の細さが目立つが、がむしゃらに取って走った

ロングパスを落とすミスを取り返し、人生初のTD

「大学入ってからアメフトを始めて、今日初めてTDを取ったんです。そのまま流れで三つ取れました」

試合に負けた悔しさはありつつ、確かな爪痕を残した赤迫は、少しだけうれしそうに試合を振り返る。今年に入り、WRユニットのフィールドサイドのNo.2(外から2番目につくWR)の2番手になった。しかし、No.1(大外につくWR)の先発がけがでアウトしたので、この日はそのポジションに繰り上がって試合に出た。

シーズン序盤は、強豪チーム相手にローテーションで試合に出てきたが、ゲームに絡むようなプレーはなかった。メインメンバーの一員として試合に出たのはこの試合が初めてだった。

第2Q、TDの直前のプレーでロングパスを落としてしまった。その後、同じルートを走って今度はTDにつなげた。「こっちの方を狙ってくれてたんで、捕らなヤバいなとおもって......」。必死の思いで公式戦初のTDレシーブを決めた。その後もがむしゃらにやり、TDを稼いだ。

落球の直後、ロングパスを取ってエンドゾーンへ駆け込んだ

「スピードは結構自信があるんですが、周りと比べたら埋もれてる感じですね」。WRとしては、まだ模索中だ。

けがでアメフトを断念した兄「だから大学では僕が」

大阪府立渋谷高校では、野球部だった。近鉄バファローズで活躍した中村紀洋さん(51)の母校でもある同校では、レギュラーでセカンドを守った。「甲子園へ行ったノリさんのことはもちろん知ってます。渋谷は公立でそこそこ強かったので目指しました。僕がいたときは、ベスト32止まりでしたが」

2歳年上の兄、李空さんが近大附属高でアメフトをしていた影響で、大学ではアメフトに挑戦しようと思った。「兄は高校のときに靭帯(じんたい)を切ってしまって、それからやらなくなったんです。だから大学では僕がアメフトをやろうと思って。兄は今日も見にきてますが、あっち(近大)側にいます(笑)」

この日兄は、かつてのチームメートの応援で花園に来た。

3本目のTD。ボールを頭上に上げてガッツポーズ

誰にも負けない向上心 入れ替え戦へ「勢い逃さない」

アメフトをすると決めて指定校推薦で桃山に入学した。野球ではセカンドでボールを捕るのが好きだったから、ポジションは迷わずWRを選んだ。しかし、ここまでは結構苦労した。

「去年は全く試合に出てないです。体も小さいですし、当たり負けしちゃって。まだまだアメフトには全然慣れてなくって、今日もマンツーマンでめちゃくちゃやられました」と苦笑い。

中学の先輩にあたる坂本壮梧(4年、関大北陽)が近大でWRをしているので、去年は「教えてもらってもいいですか」と連絡し、公園でリリースのやり方などを教えてもらったという。向上心は、誰にも負けない。

TDをとるたびに仲間が全力で祝福してくれた

「今けがしてる同期のWR2人は、僕よりも試合に出て活躍してるんです。それを見てずっと悔しいと思ってきたので、これからは2人に並べるように頑張っていきたいですね」

次はリーグ最終戦の大阪大学戦。その先に、入れ替え戦も控えている。

「もう絶対勝つっていう意識でいます。勢いを逃さずに、ここからチームの雰囲気を上げていきたいです」

土と芝で人一倍汚れた82番は、そう誓った。

まだあどけなさが残る。兄の分もアメフトを頑張る

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