アメフト

関西学院大が初陣で明治大に勝利、大村和輝監督「今年はポテンシャルがあるチーム」

試合開始のキックオフで65ydのビッグリターンを演じた池田唯人は、新エース候補だ(撮影・すべて北川直樹)

春季オープン戦

5月3日@アミノバイタルフィールド(東京)
関西学院大学 28-21(7-7、14-0、0-7、7-7) 明治大学

アメリカンフットボールの春季オープン戦があり、関西学院大学と明治大学が5月3日、対戦した。例年、定期戦として行われている両校の対戦は、新型コロナウイルスの影響による春季リーグの縮小開催などの影響もあって、3年ぶりの顔合わせとなった。試合は、関学大が終始先手を打ち、明治大が追いかける展開。第4クオーター(Q)には同点の時間帯もあったが、関学大が終盤に得点して28-21で手堅く勝った。

終始主導権を握った関学

学生王者の関学大が、2022年の初陣を勝利で飾った。キックオフで明治大が蹴り込んだボールを、RBの池田唯人(3年、関西学院)が受けると65ydのビッグリターンで幸先の良い滑り出し。昨年からエースQBを務める鎌田陽大(はると、3年、追手門学院)が先発し、開始2プレー目でチーム最速のWR衣笠吉彦(同、関西学院)にタッチダウン(TD)パスを決める速攻で先制した。

開始2プレー目でTDパスをレシーブした衣笠吉彦はチーム最速の俊足

明治大は、先発2年目の吉田拓郎(4年、日大鶴ヶ丘)を中心に、RBの森川竜偉(るい、同、佼成学園)と廣長晃太郎(2年、箕面自由学園)のラン、WR陣へのミドルパスを織り交ぜながら5度ダウンを更新。廣長がエンドゾーンに飛び込み同点に。学生王者を相手に手応えと自信を得ながら攻める姿からは、ゲーム中でもはっきりと成長が見えた。

21-7で後半に折り返した関学は、攻守メンバーの一部を入れ替えて戦った。この2年、新型コロナウイルスの感染拡大によって春秋ともに縮小開催されてきた影響で、下級生は試合経験を積めていない選手も多く、控え選手の底上げが鍵となる。守備はずるずるとドライブされて得点を許し、攻撃も自陣深くで押し込まれ、パスをインターセプトされるなど決して楽な展開ではなかった。しかし要所を締めて主導権は渡さず、落ち着いて戦った。明治大は、試合終了間際に野村馨(きょう、4年、佼成学園)が2本目のインターセプトを奪って攻撃にボールを回したが、得点にはつなげられずにタイムアップ。関学大が1本差で勝ち切った。

廣長晃太郎はランとパスで2TD獲得。森川とのツインエースで明治オフェンスを引っ張る

ラン戦力、今季も充実

関学大は、下級生時から活躍してきたRBの前田公昭(関西学院)と齋藤陸(江戸川学園取手)のダブルエースが卒業。しかし、池田が6回81ydで1TD、澤井尋(じん、2年、関西学院)が5回48ydで2TDとラン攻撃が冴(さ)え、今季も充実したラン戦力を見せた。中でも澤井は試合初出場ながら試合を決めるTDを奪い、欠場した前島仁(じん、3年、関西学院)らを含めたエース争いが楽しみな活躍だった。澤井は試合を振り返り、「大学に入って初めての試合で、今後の自信にもなったし嬉(うれ)しかったです。1タックルで倒されることが多かったので、そこから3、4yd粘れるようになれれば」と話した。

パスユニットはQBの鎌田をはじめ、WRの糸川幹人(4年、箕面自由学園)、河原林佑太(同、関西学院)、欠場した梅津一馬(同、佼成学園)ら経験豊富なメンバーが充実していて、高いポテンシャルを持つ。守備は、実績豊富なLBの海崎琢(3年、箕面自由学園)を中心に、DLのトゥロター ショーン礼、浅浦理友(ともに3年、関西学院)らの活躍が鍵になる。大村監督は「DLは高校未経験のメンバーで実力がある選手が多い。今日も後半は4人中3人が未経験だったがよく頑張っていた」と期待を寄せる。今季の関学大も、層の厚さで一歩抜けた存在になりそうだ。

澤井尋は試合に初出場。決勝得点含め2TD獲得でスコアリングリーダーとなった

関学大・大村和輝監督の話
「まだまだ弱いですね。今日は連れてきたメンバー(64人登録)を全員出したんで、後半にメンバーを落としたらガクンとレベルが落ちた。これからだいぶ頑張らないと。RBは前田と齋藤の穴を埋められていない。池田も澤井もまだ『えげつなく怖いというほどじゃないでしょ? あとは特にQBとDBは控えのレベルを上げないといけないですね。春の初戦で連れてこなかったけど、QBの星野秀太(足立学園)はじめ1年生にすごい選手が多い。今年は4、5人出るんじゃないですか?  春は前の2年間に比べたら普通に練習も試合もできてるんで、経験不足を補いながらなるべく多くの選手を使って、粘って戦っていきたいです。今年はポテンシャルがあるチームなんで、試合で経験したことを身につけていけば伸びしろはすごいと思います」

関学大QB・鎌田陽大選手の話
「プレー判断とかいろいろと遅い部分があったので、これから練習で詰めていかないといけないですね。はやくシーズンに向けて慣らしていかないと、全然適応できてなかったです。練習からもっと頑張りたいと思います。今日は自分含めてQBが3人出たんですが、下のメンバーをもっと育てていかないといけないなと。去年から抜けたメンバーも多いですがOLもRBも頑張ってるんで、僕は彼らを信じてオフェンスを引っ張っていきたいと思います」

エース2年目でより落ち着きが増した鎌田陽大

明治大・岩崎恭之監督の話
「終始関学さんのペースで進められて、タックルミスだとかがそのまま点差に出た試合でした。強いチームとやると必ずそういうことも起こるので、それを踏まえてどうやっていくのか、学生たちはしっかりと考えてこれからやっていくと思います。森川と吉田は、最上級生になって『自分がなんとかしないといけないという自覚とリーダーシップが出てきた。やっちゃいけないミス、シチュエーション把握という部分がまだ甘いので、4年生中心にしっかりとそこを身につけていく必要がある。まずは次の日大戦にむけてしっかり課題を修正していこうと思います」

エース2年目の吉田拓郎は3Qに自分で飛び込みTD。ウエイトで体の力強さが増し、ランプレーも光った

明治大QB・吉田拓郎選手の話
「日本一のチームに対して、どこまでやれるのかというのはあって、手応えがあった部分も足りない部分もわかった試合でした。最初のドライブがしっかり進められて、雰囲気を上げられたのが大きかったです。前回は3年前に対戦して自分は見てるだけでしたが、4年になって自分の実力と成長を客観的に測ることができたのは良かったですね。ただ、得点差としての1本が具体的にどんな部分なのか、ミーティングでしっかりと振り返りたいと思います。次の日大は実力が拮抗(きっこう)していると思うので、しっかりと全員に勝つ気持ちを伝えて取り組んでいきます」

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