「自分たちを信じ切った」早稲田大学、関西大学の追い上げ振り切り甲子園ボウルに王手
アメリカンフットボールの全日本大学選手権・準々決勝の注目カード、早稲田大学(関東2位)と関西大学(関西3位)の対戦が23日、味の素スタジアムであった。早稲田が前半のリードで試合を優位に進め、後半に追い上げた関大を31-28で振り切った。パスの獲得ydで、早稲田は262ydと、昨年の年間最優秀選手のQB須田啓太(4年、関大一)を擁する関大の238ydを上回った。早稲田は12月1日、ヤンマースタジアム長居で行われる準決勝で立命館大学(関西1位)と対戦する。準決勝の勝者は「甲子園ボウル」に進出する。
序盤は早稲田のキーマンが躍動
早稲田は最初の攻撃シリーズのファーストプレーから最高の結果を出した。QB八木義仁(4年、早大学院)から中央へのスクリーンパスを受けたエースRB安藤慶太郎(3年、早大学院)が79ydを走りきって先制のタッチダウンをあげた。対する関大の最初の攻撃シリーズでは、QB須田がWR溝口駿斗(4年、滝川)へのパスを通し、続くプレーでRB阪下航哉(4年、関大一)が守備隊形を見切っての左サイドのランで第1ダウンを獲得。ただ、早稲田のDL堤祥悟(4年、早稲田実業)、DB鈴木晴貴(4年、鎌倉学園)らで構成するディフェンス陣がQB須田にプレッシャーをかけ、その後はパスを成功させなかった。
早稲田の2回目の攻撃シリーズでもRB安藤が20ydを超えるランで敵陣に進入した。関大の攻撃ではQB須田からWR岡本圭介(4年、関大一)、RB阪下への10ydパスがヒットするも、敵陣まで攻め込んでの第3ダウン2ydでTE凪亮佑(4年、星陵)を狙ったパスを早稲田DB木村大地(4年、早大学院)がインターセプト。ターンオーバーからの攻撃でQB八木はWR角井春樹(4年、早大学院)、WR松野雄太朗(3年、早大学院)へのパスを連続で決めた。敵陣レッドゾーンまで攻め込み、K平田裕雅(4年、早稲田実業)が26ydフィールドゴールを決めた。
八木の好調は続いた。次の早稲田の攻撃では、WR吉規颯真(3年、早大学院)への中央のパスをヒット。吉規はキャッチ後の振り向きざまに相手のダブルカバーを外し、エンドゾーンへと駆け込んでタッチダウンとなった。
早稲田はキッキングチームのスペシャルプレーでも相手のミスを誘ってリカバーするなど、準備してきた作戦を次々に成功させた。第3ダウン4ydではエースWR入江優佑(4年、関西大倉)がワイドオープンでパスキャッチ。60ydを走りきってのタッチダウンとなった。第2Q途中で24-0と早稲田が大量リードする展開となった。
中盤から関大がペースを握る
第2Q残り2分11秒から、関大の反撃が決まった。QB須田は、パスプレーで時間を消費しないように前進。敵陣8ydまで攻め込むと、最後はエースWR溝口が体と地面の間にうまく手を滑り込ませてタッチダウンのパスキャッチ。関大はタイムアウトで早稲田に時間を使わせず、残り0分49秒で再び攻撃権を得た。WR溝口へのパスで第1ダウンを得て敵陣に攻め込んだが、早稲田DB池田啓人(4年、鎌倉学園)が右のディープゾーンでパスをインターセプト。24-7と早稲田のリードで前半を終えた。
後半は関大が追い上げた。第3Q最初の攻撃シリーズでは時間消費をいとわないラン主体で攻めた。RB山嵜紀之(3年、箕面)、阪下が相次いでランで10ydを獲得。第4ダウン、ゴールまで残り2ydで関大はギャンブルを選択。QB須田からTE凪へのパスが通り、タッチダウン。試合時間7分以上を使った長いドライブとなった。これで24-14と10点差に縮まった。
流れが関大に傾きつつあったが、早稲田にはビッグプレーメーカーのRB安藤がいた。次のシリーズ最初のプレーで、左サイドを駆け抜け、75ydのタッチダウンを決めてみせた。試合は再び17点差に。
阪下が自慢の快足を見せたパントリターンで敵陣からの攻撃とした第3Q終了間際からの関大の攻撃シリーズ。QB須田は華麗な足さばきでスクランブル発進し9ydを獲得。WR溝口へのパスも決まり、最後はTE凪へのタッチダウンパスを決めた。これで再び10点差に。早稲田の攻撃を3回で止め、再び関大の攻撃権。ここでもQB須田がパス主体の攻撃をまとめ、エースWR溝口へのタッチダウンパスがヒット。ついに3点差まで追い詰めた。
「ファンダメンタルでも負けていない」
第4Q残り5分49秒、関大のキックオフ。早稲田リターナーが自陣10yd付近でタックルを受け、関大スタンドが大いに盛り上がる。早稲田OL小林亮生主将(4年、早大本庄)は「春は力で負けていた関大に、(ヒットやタックルなど)ファンダメンタルでも負けていない。自分たちを信じ切れば勝てると思った」と振り返る。
第1ダウンでRB長内一航(2年、早稲田実業)が右サイドを駆け抜け8ydを獲得。さらにRB安藤がランで細かくヤードを刻む。第3ダウン2ydでは再び長内が左サイドへのスイープで25yd前進した。敵陣に入っての第1ダウンで、ショットガン隊形から安藤が中央を突くランプレーで更に19yd前進した。最後に狙ったフィールドゴールは外し、試合時間1分5秒を残したものの、9回のランプレーを重ねて相手レッドゾーンまで進入した攻撃は早稲田の勝利を大きく近づけた。
関大の最後の攻撃を無得点に終わらせたのは2人の早稲田DBの活躍が大きかった。森慶太郎(3年、鎌倉学園)は左サイドにスクランブルに出たQB須田をロスタックルで止め、粕田俊(4年、早大学院)は右サイドを狙ったパスを2回ディフレクトした。須田はこのシリーズでもWR溝口へのパスを2回決め、50yd付近まで前進したが、無念のタイムアップとなった。
早稲田大・小林亮生主将の話
「オールユニット、チームとしての成長を感じました。自分たちのやってきたことを出せば勝てるとみんなに言ってきました。用意してきたプレーも機能しましたし、相手のメンツが変わっても対応できました。八木は調子にムラのある選手だとは思っていませんし、今日もやってくれるだろうと信じていました。最初のタッチダウンは安藤がエンドゾーンまで持っていきましたが、このプレーも安藤の力だけではなくオフェンスチームの総合力だと思います。この試合では強いオフェンスを見せることができました。うちはディフェンスのチームと言われているが、試合では点を取ることが大事です。チームの意識は、リーグ戦で法政大学さんに負けた後から変わってきました。どんな展開になっても気持ちを変えない、ということをチームで実践できるようになってきました。次の相手(立命館大)には、関大さんの気持ちも背負って頑張っていきたいです」
関西大・須田啓太主将の話
「ここで終わるつもりじゃなかったので、悔しいという気持ちが一番かなと思います。キックが外れて、残り1分5秒で、全然自分たちならできるっていう状況で。誰一人信じて疑っていなかったと思うので、最後そういうのを持っていけなかったっていうのは本当に僕の責任だなと思います。早稲田さんはしっかりスカウティングしていて、イメージと違うことはなかったですね。序盤から点差が離されましたけど、OLも頑張っていましたし、レシーバーも頑張っていたんで、僕がしっかりちゃんと自分のプレーを取り戻すだけだと思いながら、冷静にと自分を言い聞かせてやっていました。チームは、点差が離されてもオフェンスが掲げているスローガンである『ビリーブ』をすごく体現できていたかなと思います。シーズンが深まるごとに4回生で話す回数が増えたりとか、練習も止めて、これで大丈夫かっていう話を僕が言わなくてもやるような雰囲気ができて、いろんな話を詰めることができたので、それがチームの成長かなと思います」