ラグビー

帝京大学がスクラムで上回り4連覇・13度目V 青木恵斗主将は4年間、王座渡さず

表彰式を終え、歓喜を爆発させる帝京大選手ら(撮影・斉藤健仁)

1月13日、東京・秩父宮ラグビー場で61回目の全国大学ラグビー選手権大会の決勝が行われた。5大会ぶり17度目の優勝を目指す早稲田大学と、2度目の4連覇を狙う帝京大学の激突となった。秋の関東対抗戦では早稲田大が48-17と大勝して優勝、帝京大は2位と明暗を分けた。しかしその敗戦から大きく進化を遂げた帝京大はこの日、スクラム、接点で早稲田大を上回り、33-15で快勝。2度目の4連覇、そして明治大学に並び2位タイとなる13度目の大学王者に輝いた。

帝京が2トライ先行 スクラムの布陣を工夫し主導権

両校は今季3度戦っており、春季大会は帝京大が60-7で快勝し、夏の菅平高原での練習試合では早稲田大が38-14、さらに対抗戦でも早稲田大が48-17で勝利していた。試合のキーポイントは、帝京大が強みとしていたスクラム、そしてタックルを含めた接点だった。早稲田大は昨季の準々決勝で京都産業大学に大敗してからその2点を強化したからこそ、今季秋以降無敗を貫いていた。

注目のファーストスクラムは、試合開始早々の2分だった。早稲田大ボールのスクラムに帝京大がプレッシャーをかけて反則を誘い、試合の主導権を握った。その後の一連の攻撃で、キャプテンFL青木恵斗(4年、桐蔭学園)が力強いランで突破、PR森山飛翔(2年、京都成章)が右に先制トライを挙げた。

帝京大の青木主将は早大・服部(左)らを吹き飛ばしながら突進、先制トライにつなげた(撮影・西田哲)

実は帝京大学はスクラムに対策を施していた。左PRに押しの強い梅田海星(4年、秋田工業)を、HOには対抗戦開幕戦以来の先発となる知念優来(4年、常翔学園)を起用。フィジー人留学生で体重120kgのカイサ・ダウナカマカマ(2年、大分東明)はNO8ではなくLOとして先発し、背番号は4番だったが5番(右LO)の位置に入った。このスクラムでは右の位置に入ったFL青木とともに右PR森山を押すことで、相手の1番(左PR)の反則を誘った。

青木は「早稲田大もスクラムには自信があったと思うが、自分たちがやるべきことをやって勝負できて(ファーストスクラムで)ペナルティーをもらえたことで、チームとしての勢いがついた」と胸を張った。一方の早稲田大のキャプテンHO佐藤健次(4年、桐蔭学園)は「最初のスクラムで逆にペナルティーを取っていたら自分たちの試合になったと思う。僕の責任」と肩を落とした。

ファーストスクラムでペナルティーを奪った帝京大FW陣(撮影・斉藤健仁)

さらに12分にも帝京大はゴール前でFWにこだわり、FL青木が中央にトライを挙げて14-0とリードを広げた。

後半開始早々、早稲田がPGで逆転

しかし、秋から9連勝中の早稲田大も意地を見せる。15分にラインアウトを起点としてFB矢崎由高(2年、桐蔭学園)が、24分にはNO8鈴木風詩(4年、國學院栃木)がトライを重ねて12-14と2点差に追い上げ、前半を終えた。

さらに後半開始早々の2分、早稲田大はCTB野中健吾(3年、東海大大阪仰星)が落ち着いてPGを決めて15-14と逆転に成功した。

早稲田大FB矢崎が反撃ののろしを上げるトライ(撮影・斉藤健仁)
早稲田大NO8鈴木がタックルをはじき飛ばしてトライ(撮影・斉藤健仁)

帝京が連続3トライ 後半は早稲田にトライ許さず

しかし、ハーフタイムに青木主将から「前半は真っ向勝負で挑み続けたが、後半はもっと賢くラグビーをしよう」と声を掛けられた帝京大フィフティーンが慌てることはなかった。

5分、相手選手をタックルで止めた後のカウンターラックから、SH李錦寿(4年、大阪朝鮮)の裏へのキックで攻め込むと、最後は再びFWにこだわり、LO本橋拓馬(4年、京都成章)が中央に飛び込んで、15-21と逆転に成功した。また、10分の後半最初のスクラムでも再び反則を誘うなど、FW戦で優位を保った。

後半5分、帝京大LO本橋が飛び込んで再逆転した(撮影・西田哲)

ディフェンスでも早稲田大のアタックを止め続けて、後半はトライラインを越えさせることはなかった。岩出雅之前監督が、9月から毎朝の練習でA~Dチーム全員のタックルを鍛えてきたという。

早稲田大のアタックを止め続けた帝京大ディフェンス。後半はノートライに抑えた(撮影・斉藤健仁)

帝京大は27分にLOダウナカマカマ、37分にもWTB日隈太陽(3年、大分東明)がトライを追加してノーサイド。自分たちの強みを出した帝京大が5トライを挙げ、33-15で見事に対抗戦のリベンジを果たし、2度目の4連覇を達成した。

終了間際、WTB日隈(中央)がダメ押しのトライ。FB小村(右)らが飛びつく(撮影・西田哲)

早稲田・佐藤主将「監督を胴上げしたかった」

惜しくも準優勝に終わった早稲田大の大田尾竜彦監督は、「結果は残念でしたが、チームを作ってくれた佐藤健次以下4年生に本当に感謝しかない。昨季の(準々決勝の京都産業大戦の)大敗から立て直してくれたのは彼らの力かなと思いますし、持てるものを全部出しました。ただ帝京大学さんの方が素晴らしかった」と相手をたたえた。

キャプテンの佐藤は「全員で最後に優勝という結果をつかみたかったんですが、帝京大学さんの方が強かった。4年間、大田尾監督の下でラグビーができて幸せだったし、この1年、監督を胴上げするためだけにラグビーを頑張ってきたのに、そうならなかったので申し訳ない気持ちでいっぱいです。これを糧に今後のラグビー人生を頑張っていきたい」と目を赤くした。

佐藤主将はスタンドへのあいさつ後、チームメートから離れ嗚咽(おえつ)した(撮影・斉藤健仁)

帝京・青木主将「11月に負けてから修正できた」

監督就任から3シーズン連続で胴上げされた帝京大の相馬朋和監督は、「全員が全力で、目の前の瞬間瞬間を必死でプレーした。選手たちの姿を見ているのがうれしかった。対抗戦で早稲田大学に敗れて、学生たちは負けと向き合って、本当に大きく成長した。このチームはいろんなことがあるたびに強くなって立ち上がる青木キャプテンがチームを引っ張って、優勝までたどり着いた。本当に素晴らしいシーズンだった」と振り返った。

ノーサイド直後、うれし泣きしたキャプテン青木は「(昨年の)11月3日、対抗戦で早稲田大学に負けて悔しかったが、そこから修正し、大学選手権決勝の舞台で勝利できたことは本当にうれしい。同じ相手に何度も負けたくなかったし、チームで一番体を張ろうと思って、80分間プレーした。キャプテンをやるのは初めてだったが、みんなが支えてくれて、今ここに立てていると思うので、本当に人生で一番うれしい」と破顔した。

青木主将は表彰式後、相馬監督らに続き仲間から胴上げされた(撮影・西田哲)

桐蔭学園同期の両主将「お互いがいたからこそ」

決勝戦は、キャプテンが桐蔭学園の同期ということでもファンの耳目を集めた。

高校での連覇と大学選手権4連覇を合わせ、個人として「全国6連覇」を達成した帝京大の青木は、「(佐藤)健次は高校のときからずっと一番近くで刺激をもらえる存在で、負けたくないという思いが心の中にあった。健次がいるから僕もここまで頑張れましたし、お互い主将になって、リーダーシップも負けたくないと思ったからここまで成長できた」。

早稲田大の佐藤も「(恵斗には)優勝おめでとう、ということを伝えました。僕自身はやっぱり恵斗がいなかったらここまでのプレーができなかったですし、お互い切磋琢磨(せっさたくま)したからこそ、互いに大学の主将で、最後に決勝という舞台でやれたのかな。リーグワンでやり返そうかなと思います」と前を向いた。

試合終了後、両主将は健闘をたたえ合った(撮影・斉藤健仁)

夏・秋とやや苦しみながらも、青木キャプテンが最後までプレーで150人近い部員を引っ張り、接点とスクラムという強みを前面に出した帝京大学。最後に会心のゲームで早稲田大に秋のリベンジを果たしてV4を達成し、今季の大学ラグビーは幕を閉じた。

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