鹿児島県の観光・文化スポーツ部長に聞く「薩摩おいどんリーグ」の可能性とは

鹿児島県内の各球場でキャンプを行う大学や社会人チームだけでなく、福岡ソフトバンクホークスなどのプロも参加した「薩摩おいどんリーグ」。3年目の今年は参加チームが前年の42から、54に増えた。年々規模が大きくなっているリーグの可能性とは――。実行委員会の委員でもあり、交流戦を支援・後援している鹿児島県の観光・文化スポーツ部長・西正智さんに聞いた。
参加チームや試合数が増えたことで、経済波及効果に期待
――実際にリーグ戦を観戦して、どんなことを感じましたか。
西正智さん(以下、西):2月22日のピックアップゲームだったパナソニックと中央大学の一戦を姶良で見ました。野球のレベルの高さを感じるだけでなく、地元の高校の吹奏楽部の皆さんが一生懸命に演奏していて、子どもたちもたくさん駆けつけていました。野球教室も開催され、いい勉強の機会になったのではないでしょうか。別の日には小中高の指導者を対象にした研修会も開かれ、刺激になったと思います。
――どんなところに「薩摩おいどんリーグ」の強みを感じますか。
西:1年目は県内4市で行われていましたが、2年目は鹿屋市、枕崎市が、今回さらに指宿市、阿久根市、出水市が加わり、たくさんの市町村が関与する形でゲームができています。市町村が増えると、それだけ多くの方が試合を見られる。鹿児島は南北600kmの県土がありますので、将来的には離島まで広げてできればいいですね。この春も種子島や奄美大島、徳之島などの離島でも合宿が行われています。南国の暖かい気候で、広範囲に整備された球場があるというのが、鹿児島の大きな強みだと考えています。

――鹿児島県としては、どのような支援をされていますか。
西:実行委員会の委員として運営面で協力したり、関係機関と調整したりするほか、広告費による支援を行っています。リーグ戦を通じて、交流人口の拡大や地域経済の活性化を図ることができます。まずは、リーグ戦で鹿児島にご縁ができて、「また次に来てみよう」といったきっかけになってほしい。「交流人口」から「関係人口」への移行ですね。薩摩おいどんリーグが、その入り口になってくれることを願っています。来ていただければ、鹿児島の良さを満喫していただけるという自信は持っています。たとえば出水市にはこの時期、世界のナベヅルの8割が来ています。野球を起点として、その土地を見て、知っていただけることは大きいです。
――「薩摩おいどんリーグ」がもたらす経済効果とは。
西:昨年5月の事務局による発表ですと、2024年の経済波及効果は約7億3千万円でした。2023年の約6億2500万円と比べると、約1億円の増加です。来場者数はほぼ横ばいでしたが、参加チームが増えたことで、選手などの参加者数も増えたことが要因と考えられます。今年もリーグの試合会場や参加チーム、試合数が増えましたので、更なる経済波及効果を期待しています。
他競技のモデルケースとなる可能性も
――鹿児島の「野球熱」はもともと高いのでしょうか。
西:1974年の第56回全国高校野球選手権大会で鹿児島実業高校がベスト4まで勝ち上がった姿は、子ども心にすごく印象に残っています。定岡正二さん(元・読売ジャイアンツ)がエースで。その後も樟南高校が夏の甲子園で準優勝したり(1994年の第76回大会)、鹿児島実業高校出身の杉内俊哉さん(元・福岡ソフトバンクホークスなど)や川内高校出身の木佐貫洋さん(元・読売ジャイアンツなど)といったプロ野球選手をコンスタントに生み出したり、野球が盛んです。
――交流戦には、福岡ソフトバンクホークスも参加しました。
西:ホークスには、奄美大島を背負って2022年春の選抜高校野球大会で甲子園に出た大野稼頭央投手が在籍しています。地元にとっては大ヒーロー。そういう選手が、鹿児島に帰ってきて試合をしてくれる可能性もあるので、とても魅力的ですね。

――「薩摩おいどんリーグ」を参考に、鹿児島県として今後も合宿誘致に力を入れていく方針はありますか。
西:鹿児島県では市町村や各種団体などで構成する連絡会を設置して、誘致から歓迎までを官民一体で取り組む体制を敷いています。昨年度には、合宿を希望する方が競技に応じた練習施設を検索して、情報を得たり、個別に相談できたりするホームページ(※)を開設しました。このホームページでは宿泊施設も検索でき、観光サイトともリンクしていますので、是非ご覧ください。
※かごしまスポーツ合宿・キャンプガイド(https://kagoshima-sport.com/)
