中央大学・高橋徹平 関東第一でも示した”飛ばす力”を発揮「リラックスできている」

昨年の甲子園で活躍した選手たちが、早くも大学のユニホームに袖を通してチャンスを得ている。第106回全国高校野球選手権大会で準優勝を果たした関東第一(東東京)のキャプテン・高橋徹平もその一人。中央大学のキャンプに参加し、実戦では中軸を任されることもあった。
福岡ソフトバンクホークス3軍との一戦で持ち味
鹿児島県でキャンプを張る大学・社会人チームに加えて、プロも参加する交流戦「薩摩おいどんリーグ」で、高橋の〝らしさ〟が詰まった打席があった。3月1日、中央大にとってリーグの最終戦だった福岡ソフトバンクホークス3軍との一戦。1-1で迎えた五回2死満塁の第3打席で、1ボールからフルスイングすると、左中間に大きな飛球が上がった。
レフト重松凱人の好守に阻まれたものの、関東第一時代からの持ち味だった〝飛ばす力〟は、大学でも十分に通用することを示した。「ちょっと差し込まれたかなって思ったんですけど、想像以上に打球が伸びました。逆風だったんで、反対(追い風)だったら入ってたのかなという風に思います」。試合後は、少し悔しそうな表情を浮かべながら、この打席を振り返った。

鹿児島キャンプの当初から参加し、薩摩おいどんリーグでは初戦のパナソニック戦(2月22日)から出場。慶應義塾大学戦(2月24日)などではファーストとしてスタメンにも名を連ねた。ホークス3軍戦では、高橋を含めて3人の新入生がスタメン出場し、清水達也監督は「(ホークス戦で)1番を打った青木勝吾(中央学院)と高橋は最初から使おうと思っていました」と期待値の高さをうかがわせた。「違うステージの人たちと、この時期に試合ができることはありがたいです。その中で若い選手が試合に出て、結果を出してくれたので、すごくいい体験ができました」
清水達也監督「大学生にも引けを取らない」
関東第一の頃は、通算で60本を超えるホームランを放った。特に昨夏の甲子園準々決勝で東海大相模(神奈川)の大型左腕・藤田琉生(現・北海道日本ハムファイターズ)から、左中間へのソロホームランで均衡を破った姿は記憶に新しい。甲子園後の国民スポーツ大会では木製バットでの豪快アーチも。「飛ばすことに関しては、大学生にも引けを取らない」と清水監督は評価する。
一方で、昨夏の甲子園でも計5試合を戦い抜いて18打数3安打だったように、〝確実性〟には今も課題を残している。「レベルの高いピッチャーに対してしっかりとコンタクト率を上げていきたい」と、本人も自覚。こればかりは高校時代と比べ「同じ球速でも速く感じることが結構ある」とレベルの高さを感じている相手投手陣との対戦を重ねて、慣れるほかない。早くも多くのチャンスをもらえているのは「野球選手は試合に出ていかないと、うまくならない」という清水監督の方針も大きいだろう。

高橋にとっては守備の面でも、現状を把握する上で大事な実戦の機会になっているようだ。ホークス3軍戦では2022年秋のドラフト1位、イヒネ・イツアが放った強烈な打球を処理しきれない場面があった。「前日も1個エラーをしているので、守備の面でももっと確実性を上げないと、試合には出られないと思います」。高校3年目は反発性能を抑えた新基準のバットが採用されたことで、守っている際は打球のスピードがそれまでと比べて落ちていた。木製バットの芯でとらえた鋭い打球に慣れることも、今は求められている。
牧秀悟や森下翔太のようになれるか
中大の硬式野球部に合流して間もないが、トスバッティング中には笑顔が見られるなど、すでにチームに溶け込み始めているようだ。「雰囲気は高校の時に似ていて、自分としてはやりやすいです」と高橋。新しい環境での気疲れみたいなことは感じていないか、と聞くと「先輩方が優しくしてくれているので、あんまり無いです。リラックスしてできていると思います」と答えてくれた。
チームからは近年、横浜DeNAベイスターズの牧秀悟(2020年度卒)や阪神タイガースの森下翔太(2022年度卒)といった球界を代表する右打者が輩出している。高橋も大学4年間で長打力と勝負強さを兼ね備えた彼らのようになれるか。「試合に長く出れば出るほど、今はミスも出てしまっているので、まずはそれを無くしたい」。1球に対する執着心をさらに身につけ、初めて迎える東都1部リーグへとつなげたい。

