春から國學院大に進む大牟田高・野田顕臣、平林清澄に憧れ「声援を力に変える選手に」
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第40回 U20日本選手権クロスカントリー競走 男子8km
2月22日@海の中道海浜公園(福岡)
優勝 栗村凌(学法石川高校2年)23分20秒
2位 増子陽太(学法石川高校2年)23分24秒
3位 新妻遼己(西脇工業高校2年)23分27秒
4位 松田祐真(大牟田高校3年)23分30秒
5位 野田顕臣(大牟田高校3年)23分34秒
6位 新見春陽(世羅高校2年)23分34秒
7位 牟田颯太(鎮西学院高校3年)23分39秒
8位 椙山一颯(九州学院高校3年)23分42秒
昨年12月に開催された全国高校駅伝の男子で、4区区間賞を獲得した大牟田高校(福岡)3年の野田顕臣は、沿道からの声援にガッツポーズで応え続けた姿でも有名になった。都大路でチームの準優勝に貢献した後は、2月22日のU20日本選手権クロスカントリー競走男子8kmに出場して5位。ここでも積極的な走りが光った。
「ライブ配信があったので、映りたかったです」
282人が一斉にスタートしたレースは、1周2kmの専用コースを4周する形式で行われた。三つの小さな丘を連続で越えたり、砂地での脚力が試されたりする中、上位進出のためには走る位置取りも大事になった。野田は1周目から集団の前方につけ、世羅高校2年の新見春陽、九州学院高校3年の椙山一颯らとレースを引っ張った。
2~3周目にかけては、野田が先頭に立つ場面もあった。意図についてレース後に尋ねると、「ライブ配信があったので、映りたかったです」と答えてくれ、これには質問者の私だけでなく、隣にいた新見も笑っていた。重ねて「順位のことはあまり考えずに、自分にはスピードがないので引っ張らないと、後ろの集団も離れてくれない。積極的に行くことは自分にとってのプランだったので、良い展開にできたと思います」と明かした。
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ラスト1周に入ったところで、先頭集団は8人。徐々にその人数が絞られ、野田も4周目の中盤で遅れ始めた。最後は新見と競り合いながら5位でフィニッシュし、握手を交わして、お互いをたたえ合った。「この大会では、格上の選手と戦うことになる。自分はトラックで結果が出ていなくて、まだ駅伝の1本しか走れていないので、上のレベルでもっと戦って行くには積極的なレースをすることが必要でした。今後の成長につながると思います」と振り返った。
声援に応えるのは「不安を紛らわす」一面も
確かに上位4選手の栗村凌と増子陽太(ともに学法石川高校2年)、同級生の松田祐真は5000mで13分台のタイムを持つ。14分09秒88が自己ベストの野田は、昨年のインターハイ5000mで決勝に残れなかった。都大路で大きなインパクトを残したことがきっかけで、その名が知られるようになった。
今大会でもコース脇から「大牟田!」と声をかけられると、拳を上げて応えていた。「赤池(健)先生から『応援に応えよう』という教えをいただいていて、最後もそこを意識して走ることができました」と野田。走りへの影響について聞くと、「自分自身はこれまで応援されるような選手ではなかったんです。でも、箱根駅伝とかを見て『自分もこういった選手になって、地元に貢献できるようになりたいな』と。実際に声援を受けると、心からうれしいです。自分が思い描いていた選手に近づいていると実感しています」と話した。都大路の反響も、本人に届いているようだ。
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卒業後は、昨年の出雲駅伝と全日本大学駅伝を制した國學院大學に進む。野田が中学1年の時、國學院大が出雲で初優勝を飾った頃から、気になっているチームだったという。アンカーで逆転優勝を決めた土方英和(現・旭化成)の姿は鮮明に覚えている。「その時から入りたいと思っていました。しっかりと伝統を受け継げるように、頑張っていきたいと思います」
目標とするランナーには、「二冠」をつかんだチームを主将として引っ張り、昨年の大阪マラソンで優勝した平林清澄(4年、美方)の名前を挙げた。「大阪マラソンでの走りには、衝撃を受けました。平林選手のように笑顔で駆け抜けるランナーが憧れです。自分の走りに集中するだけでなく、周りの声援を力に変えられる選手が一番強いと思っているので、地道に努力して、そのようなランナーになりたいです」と目を輝かせた。
平林には「どうしたら、レースの本番前から強気な姿勢を貫けるのか」について尋ねてみたいと言う。野田が声援に応えるのは、「レースに対する不安を紛らわせる」という一面もある。これを克服し、レース前から揺るがない自信を抱けるようになれば、さらに強くなるだろう。
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”永遠のライバル”物語、大学でも
今回のレースは、苦楽をともにした松田に先着されたこともあり「80点ぐらいです」と自己評価した。「最後はキャプテン(松田)の意地を見せられました。自分は走りでしか貢献できなかったんですけど、松田は生活面からあらゆるところで後輩たちを引っ張っていた。大学に行ってからも、永遠のライバルです」と野田。青山学院大学に進む松田は、野田について「レース中も視線を感じたので、負けたくないんだなと思いました。チームの誰よりも練習熱心で、本当に強いので、大学でも切磋琢磨(せっさたくま)していければと思います」と話す。
〝永遠のライバル〟物語は、今季の3大駅伝で優勝を果たしたそれぞれのチームに進んでからも続いていく。
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