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アメフト 立命引っ張る小さな走り屋

立命のRB藤岡は、選手としては自分の小ささを嘆いたことはない

関西学生リーグ1部第4節

10月6日@エキスポフラッシュフィールド

立命館大(4勝) 35-3 龍谷大(4敗)

立命#7 RB(ランニングバック)の藤岡峻平(しゅんぺい、4年、立命館宇治)に、一度ちゃんと聞きたかった。メンバー表の身長は161cmになっているが、本当のところはどうなのかと。どうも、もっと小さく感じる。

10月6日の龍谷大戦で開幕4連勝を決めたあと、この日2タッチダウンの彼は、数人の報道陣に囲まれた。質問が一段落したとき、失礼にも私は尋ねた。正確には身長はいくつなのかと。「160.なんぼです。161はないです」。そうか、その程度の誤差か。立命の周りの選手が大きすぎるから、もっと小さいのではなんて思ってしまったのだろう。藤岡君、ごめんよ。

スピードと鋭いカットバックは一級品

今シーズンここまで、大男の間から小さな背番号7が飛び出してきて、キュキュッというステップでタックルをかわすシーンを何回も見た。藤岡は4試合で45回ボールを託され、計267ydを走って4TD。堂々の成績だ。それでも龍谷大戦後は反省しきりだった。「練習からランで1回平均5yd出すって言ってたのに、全然ダメでした」

この試合ではチームとしてラン1回平均約3.3yd。ランプレーでOL(オフェンスライン)の5人が相手を圧倒してRBを走らせるというシーンが、まだまだ少ない。これは、ここまでの関学にも同じことが言える。現状のランのゲインは、RBの個人技に頼っている部分が大きいと感じる。

体は小さくても、藤岡のスピードと鋭いカットバックは一級品。最後もしっかり当たりにいって、少しでも前に倒れる。去年はどうしていたのか聞くと、春先のけがで1年を棒に振ったそうだ。「ポジションリーダーやったのに、ほんまに悔しかったです。RBにけが人が多くて、先輩がWRから回ってきたんです。その人につきっきりでいろいろ教えただけで、シーズンが終わってしまいました」

持ち前のスピードと鋭いカットバックで敵を翻弄する

だからこそ、最後のシーズンにかける思いは強い。「OLとしっかりタイミングを合わせて、毎プレー5yd進めるランオフェンスをつくります。去年の分まで走るつもりです」。細く整えた眉毛が勇ましい。

私はしつこく聞いてしまった。背が大きかったらよかったな、と思ったことはないかと。藤岡は即答した。「選手としては、ないっすね。人として、男としてならありますけど」。女性と食事に行く機会があると、極力席を立たないようにするのだそうだ。「小さいのバレますから」。それ以前に相手は分かっているはずだか、彼のいたずらっぽい笑顔につられて、私も笑った。

抜ける穴を瞬時に見つけ、鋭く切り込んでいく(撮影・廣田光昭)

1対1になったら、タッチダウンまで

そんな話ばかり引き出している場合ではない。最後に5戦目以降の抱負を聞いた。「一線を抜けて1対1になったら、タッチダウンまで持っていけるようにしたいです」。気持ちを取り直して、力強く言った。エースRBで去年は1回生ながらリーディングラッシャーに輝いた立川玄明(たつかわ・ひろあき、大阪産大付)がパワー派のRBなら、藤岡は抜ける穴を瞬時に見つけ、鋭く切り込んでいく。「立川とは違うタイプなんで、お互い切磋琢磨していきたいです」。至極まっとうに締めた。

立命のゲームを見るときは、小さくて速くて愉快な走り屋に注目してほしい。

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