サッカー 東洋大、首位早大相手にゴールショー
勝負は何があるか分からない。関東1部の首位をひた走る早大から、東洋大が前半だけで6得点。日本中、いや世界中の誰もが予想しなかった圧巻のゴールショーを披露して完勝し、創部初のインカレ出場へ、また一歩前進した。
FW小林衝撃の22分間
この試合を観戦した人はみな、主役はFWの小林拓夢(3年、帝京長岡)だったと言うだろう。前半10分、すべてはここから始まった。自陣からMF高橋宏季(4年、FC東京U-18)が前線に大きく出すと、これに反応した小林が一気にペナルティエリアに進入。角度のないところから右足を振り抜くと、ゴール左に突き刺さった。先制から5分後、今度は左サイドから崩し、ゴール前でフリーとなった小林が頭で押し込んで2点目。その後1点を加えた東洋大は28分、またも小林が相手のクリアミスを蹴り込んでハットトリックを達成した。
さらに32分、FW松崎快(3年、大宮Y)との阿吽の呼吸でラインをブレイクすると、世代別日本代表にも選ばれている早大GK小島亨介(4年、名古屋U-18)との1対1を確実に決め、4点目。先制ゴールから22分間で4点を奪う大車輪の活躍だった。東洋大は前半アディッショナルタイムにも1点を追加し、6-0と大差をつけて試合を折り返した。
後半、J1名古屋への入団が内定している早大MF相馬勇紀(4年、三菱養和SC・Y)に1点を返された。だが、その後は前節4得点した早大自慢の攻撃陣を封じ込め、6-1という想定外のスコアで早大を撃破した。
チーム全体が待ち望んでいたゴール
「悔しくて眠れない日もありました」。小林はこれまでのリーグ戦で一つのゴールも決めていなかった。第12節の東国大戦では自らが反則を受けてPKを獲得し、自ら蹴ったが、失敗。リーグ戦の後期はここまで全試合でスタメンに名を連ねているが、ストライカーとして記録に残るプレーが一切なかった。第13節以降負けのないチームの好調さとは裏腹に、小林は一人悔しい時間をすごしていた。そんな中迎えた今節、早大のDFには高校時代のチームメイト、大桃海斗(3年、帝京長岡)がいた。小林は手の内を知られた元同僚との対戦に打ち勝ってみせた。溜まっていたものを一気に吐き出すかのような4得点。これには古川毅監督も「辛抱強く起用して、それに応えてくれた」とひとこと。小林が得点するたび、ピッチに立つ全員が彼に駆け寄って声をかけた。そう、小林のゴールはチーム全員が待ち望んでいたものだった。
勝利を喜ぶ表情から一転、小林は「これがスタートです」と気を引き締めた。東洋大は今節を終えて8位。インカレ出場圏内である6位圏内(すでに出場を決めている明大を除く)との勝ち点差はわずかに2。創部初のインカレ出場に向け、残りの4試合が大事になってくる。その意味でも、今節で小林がブレイクしたのはチームにとって大きな収穫だろう。次節は勝てば順位が入れ替わる7位流通経済大との対戦。首位の早大相手に起こした“東洋旋風”を次につなげたい。小林は次節もストライカーの仕事ができるだろうか。覚醒した男から目が離せない。