サッカー 関学エース中野克哉、あの1年があったから
値千金の勝ち越しゴール
矢のようなシュートがゴールネットに突き刺さった。MF中野克哉(4年、京都橘)は雄叫びを上げ、豪快にガッツポーズ。仲間の元へ一直線に駆け出し、大興奮の輪の中に飛び込んだ。試合終了を告げるホイッスルが鳴る。後半45分プラス4分、値千金の勝ち越しゴールで、関学はびわスポ大を撃破した。「体力的には厳しかった。でも、決めたい思いの方が強かった」。中野は興奮気味に言った。後期リーグ第7節で、貴重な勝ち点3を挙げた。
関学は前半終了間際にMF山本悠樹(3年、草津東)のミラクルゴールで先制。後半16分に追いつかれた。試合残り10分になると、激しい攻防の応酬に。耐えて耐えて耐えた先に、チャンスが訪れた。後半ロスタイム4分、MF岩本和希(3年、ガンバ大阪ユース)からのパスは、きれいな弧を描き、中野の元へ。冷静に振り抜いた右足で放たれたシュートは、キーパーの頭越しに、ゴールへと消えた。「きょうは何もできてなかったから、結果で示せてよかった」。試合後の中野は安堵(あんど)の笑みを浮かべた。
華々しいばかりの4年間ではなかった。
京都橘高時代は「日本屈指のアタッカー」と評された。高校選手権は、1年で準優勝、2年で3位、3年のときはベスト8。京都橘の黄金世代に生きた。「高いレベルでプレーしたい」と関学に進んだが、入学前に左足首を手術。さらに1回生の夏にひざを痛め、長期の戦線離脱を余儀なくされた。「自信を持って入学したから、想像もしていなかった1年でした」。思いもしなかったスタートになった。
3年になってようやく、エースストライカーとして頭角を現した。公式戦初得点は、その秋の前期リーグ初戦。わずか10分の出場で技ありのシュートを決め、会場をどよめかせた。勢いはとどまることなく、前期第8節の関大戦ではハットトリック。年間13ゴールで2017年度の得点王に輝いた。「毎日100%で練習に取り組んだのがよかった」。かつてのスターは苦しい時期を経て、全力プレーで関学のダークホースとなった。
ゆかりの京都でプロの道へ
10月11日、中野のJ2京都サンガFCへの加入内定が発表された。
プロを考え始めたのは、3年で得点王に輝いたころだった。そこからフィジカルの強化を意識する日々が始まった。この1年は筋力トレーニングに徹した。そして、高校時代からなじみのある京都のクラブに内定。サンガには同じ京都橘出身の仙頭哲矢、小屋松知哉、岩﨑悠人が在籍している。「上にも下にも身近な人がいる。一緒にできたら面白いと思った」。ゆかりの地で、新たな一歩を踏み出す。
リーグ戦はあと4戦。現在、中野は7得点で、得点ランキングは10位。「点を取るのが自分にできること」と言いきる。10月28日時点で、関学は1位の大体大と勝ち点3差の2位につける。この先、前期リーグ戦で負けた関大、大体大との戦いを控えている。優勝のためには、ここからが山場だ。「一戦一戦、目の前の試合にどのぐらい集中できるかが大事になる」。しょっぱなに真っ暗な1年をすごした関学のエースが、最後は華々しく締めくくる。