サッカー

駒大で別れた道、3年目の初「共演」

ポーズを決める星 (左)と森本

関東大学リーグ戦1部第22節

11月24日@千葉・柏の葉公園総合競技場
駒澤大(勝ち点35) 1-0 筑波大(38)

前節にインカレ出場を決めた駒大は、FW室町仁紀(4年、東京Vユース)が挙げたゴールを守りきり、難敵の筑波大に辛勝。2014年5月以来の金星をあげ、リーグ戦ラストマッチを笑顔で締めくくった。

ラストマッチには、もう一つのドラマがあった。試合後、駒大の応援席からひときわ大きな歓声を受けていたふたりがいた。DF星キョーワァン(3年、矢板中央)とFW森本ヒマン(3年、同)だ。

彼らの名前を「懐かしい」と感じるサッカーファンは少なくないだろう。2015年度の全国高校サッカー選手権で、栃木の“巨人”たちは全国の高校サッカーファンを沸かせた。ともにコンゴ民主共和国出身の父を持ち、中学から同じチームでプレー。強豪の矢板中央高へ進み、恵まれた体格と日本人離れした高い身体能力を武器に、3年連続して選手権に出場。攻守の要として猛威を振るった。スポーツ界でハーフの選手たちが目覚ましい活躍を見せるこのご時世だけに、各メディアでも取り上げられた。

対照的な大学での歩み

ふたりは揃って駒大に入学。ここから明暗が分かれていった。星は高校選手権ののち、日本高校選抜にも選出された。大学に入るなりスタメンの座を勝ちとり、デビュー2戦目で初ゴールを挙げた。1年のときはけがもあって9試合の出場にとどまったが、2年になるとはチームの核として最終ラインに君臨。学年が上がるにつれて駒大の柱になっていった。今年に入ってからは天皇杯や総理大臣杯も経験し、駒大には欠かせない存在となっている。

一方で森本は高校時代から抱えていた左膝のけがで、入学したときから別メニューでの調整を余儀なくされた。出遅れてしまった大型FWはその後もトップチームに絡むことができない時期が続く。Bチームで過ごす中で、「嫉妬というか、『いいなあ』というのは1年生の時からあった」と、盟友の活躍に照らした自分の現状に歯がゆさを感じていた。

2年が過ぎ、3年目もクライマックスに差しかかったころ、吉報は突然に入ってきた。最終節の前日、連盟が発表した追加登録のリストに「No.37 FW森本ヒマン」の文字があった。試合2日前の紅白戦でのパフォーマンスが評価され、土壇場でのトップチーム入りを果たしたのだ。2トップを基本とするチームだが、エースのFW高橋潤哉(3年、山形ユース)がけがで戦線離脱し、ここ2試合は副将の室町が1トップを担っていた。

本人は紅白戦でレギュラー組に入った時点で出場を確信したというが、マネージャーの中原早絵(3年)は「キョーワァンが相当喜んでました。ヒマンを最後まで隠したかったみたい(笑)」と冗談交じりに語る。星も突然の”再結成”に試合前から胸を弾ませていた様子。スタンドの仲間たちも、森本へ期待を込めて檄を飛ばし、本人も笑顔で応えていた。

ヘディングでボールをクリアする星(右奥)

星はこの試合もスタメンで、気合の入ったプレーでチームを引っ張った。トップクラスの実力を誇る筑波大攻撃陣にゴールを割らせず、試合は1点リードのまま終盤へ。

そして迎えた86分、その時は訪れた。前線からプレスをかけ、縦横無尽に走り続けていた室町が足を気にする様子を見せると、アップゾーンにいた森本に、ベンチから声がかかった。室町と交代し、待望のトップチームデビュー。前線のターゲットマンとして投入されたが、動きにはやや緊張の色も。しかし、最後まで敵陣の深い位置で体を張ったプレーを続けた。

試合終了のホイッスルが鳴り、駒大サイドは大金星に沸いた。星は「3年ぶり! ようやく!」と興奮気味に言った。その表情には、筑波大に勝ったことだけではない喜びが、確かに見えていた。

デビュー戦終え、「もっとやれる」

試合後、秋田浩一監督(63)は森本のパフォーマンスについて「誰が見てもダメでしょ。不満。あとでちゃんと言っておきます」とひとこと。星も「デビュー戦としてはバツですね(笑)」と手厳しい評価を下したが、森本自身もそれは痛感していた。「まだまだ課題しかない。もっとやれるなと、自分でも感じてます」と話した。

星は森本の今後について、手厳しく言った。「上から目線になってしまうけど、今日の経験をプラスにして能力を発揮する環境を、ヒマン自身が作らないといけない」。とはいえ、ふたりはともにピッチに立ったことへの喜びや充実感も、確かに感じている。星が「あの瞬間をめちゃくちゃ待ってました。試合中だったけど、うれしかった」と話せば、森本は「ようやく一緒にプレーできた。これからはもっと一緒にキョーワァンとピッチに立ちたい」と、素直な気持ちを口にした。

森本(手前中央)がボールを持つたびにスタンドから歓声があがった

ポジションは違えど、ふたりは常に互いに競い合ってきたライバルだ。「誰がなんと言おうと、一番のライバルだと思ってる。同じチームで切磋琢磨できるのも残りわずかなので、長くピッチに立って一緒に戦いたい」と星。森本は「自分もチームから必要とされたいし、やれることをもっと増やしていけば、ライバルとしての関係性も強まっていくと思う」。遅れてやってきた男は、ここからの成長を誓った。

ふたりの来年以降の活躍が楽しみなところではあるが、まずは8年ぶりに出場するインカレへ向けての戦いが始まる。森本が「メンバーに入ってチームに貢献したい。それだけです」と言えば、星は「日本一をとって駒大のサッカーがNo.1ということを証明したい」。4年生を笑顔で送り出すため、決意を新たにしていた。

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