山口智規選手、谷中晴選手も快走!全国男子駅伝3位の福島県チームをサポートしました
今回の「M高史の陸上まるかじり」は第30回全国男子駅伝のお話です。都道府県対抗で行われる今大会は長野が4連覇を飾り、千葉が2位。福島が3位となりました。M高史は今年も福島県チームのサポートスタッフとして帯同させていただきました。
7区・山口智規選手の付き添いを務めました
福島県チームの安西秀幸コーチが、M高史にとって駒澤大学の1学年後輩というご縁もあり、一昨年から3年連続でお手伝いさせていただくことになりました。前日練習のタイム計測やミーティングにも参加。レース当日は昨年に続いて最終7区を務めた山口智規選手(早稲田大学3年、学法石川)の付き添いをさせていただくことになりました。福島県の目標は5年ぶりの入賞となる8位以内。チームの状態もよく、それ以上の順位も十分に狙える布陣となりました。
選手は各中継所まで選手輸送バスで移動しますが、付き添いは先に移動して待機場所で陣地を準備します。その後、選手輸送バスが到着し、選手の皆さんが続々と待機場所に来られます。
午後0時半に号砲が鳴ると、待機場所では各チーム付き添いの皆さんがテレビを囲み、レースの状況を選手に伝えていきます。選手の皆さんもウォーミングアップの合間にレース展開を確認します。
福島県チームの1区(7.0km)は増子陽太選手(学法石川高校2年)。5000mで13分34秒60の自己記録を持ち、中学時代には当時の3000m中学記録を更新しました。今回は自ら志願しての1区出走となりました。
前半から積極的に走り、兵庫県の新妻遼己選手(西脇工業高校2年)とともにレースを作って区間3位の好スタートを切りました。福島県チームの佐藤修一監督は「増子君が区間賞を狙おうと思えば、先頭についていってラストまで出ないで力を温存することもできたはずです。でも、チームに良い流れを作りたいと前半から攻めてくれました」とねぎらいの言葉をかけられました。
2区(3.0km)は伊藤瞭太選手(三春中学3年)。全日本中学校陸上選手権では3000mで決勝に進出し、14位に入りました。区間7位、8分39秒の走りで2位に浮上し、トップの長野県チームに3秒差まで迫りました。
谷中晴選手の走りに藤田敦史監督もしみじみ
3区(8.5km)は谷中晴選手(駒澤大学1年、帝京安積)が出走。全日本大学駅伝4区3位、箱根駅伝3区6位と駒澤大学に入学してからも力を伸ばし、駅伝で好走しています。先頭でスタートした長野県の吉岡大翔選手(順天堂大学2年、佐久長聖)に追いつき、中盤以降は谷中選手が先頭に立って差をつけました。後方から実力のある選手たちが猛追してくる中、トップを守りきり、記録としても柏原竜二さんが持つ福島県記録を更新しました!
ちなみに、駒澤大学の藤田敦史監督は「大学2年生のとき、第2回都道府県駅伝で、私も3区でしたが、谷中と同じように先頭が見える2位で襷(たすき)を受け、先頭に追いつき引き離して、後半は後ろから実業団の先輩方に猛追を受けるも逃げ切って、トップで中継しました。谷中がまったく同じ展開だったのを見て、谷中との縁を感じました」とお話しされ、ご自身の学生時代を思い出されながら、谷中選手の走りを見守られました。このときも福島県チームは総合3位だったそうです!
谷中選手から襷を受けたのは4区(5.0km)の栗村凌選手(学法石川高校2年)。5000mのベストは13分48秒32。全国高校駅伝では1区6位と好走しています。今大会では区間新記録を目標にスタート。前半から積極的に攻めて後続との差を広げ、14分10秒で区間2位。2位と25秒差まで広げました。
ちょうどこの頃、7区の選手たちは最終点呼のため、待機場所から中継所へ移動するタイミングでした。山口選手にも随時、レースの状況をお伝えしました。
5区(8.5km)は村越柊哉選手(帝京安積高校3年)。千葉県の鈴木琉胤選手(八千代松陰高校3年)や長野県の佐々木哲選手(佐久長聖高校3年)といった超高校級の選手が猛追してくるという大きなプレッシャーの中、逆転を許して6位での中継となりましたが、2位までのチームが見えている状態で襷をつなぎました。単独走が得意で、長い距離になればなるほど強いという村越選手。今後が楽しみな選手です。
付き添いの役割をお伝えします!
6区(3.0km)は星柊斗選手(猪苗代中学3年)。全国中学駅伝1区4位の実力者です。福島県チームは中学生の実力も拮抗(きっこう)しており、伊藤選手と星選手のどちらが2区で、どちらが6区を走るのか、最後まで首脳陣は悩まれていました。
6区の中学生を待つ第6中継所。最終7区は社会人・大学生の一般区間で、元日のニューイヤー駅伝や箱根駅伝で活躍した選手ばかりなので、中継所にいるだけでワクワクします(笑)。
普段は同じチームの仲間でも、男子駅伝ではライバルチームになるというのも新鮮。距離が短いですし、箱根駅伝のように途中のタイム差が細かくわかるわけではないのですが、福島県チームスタッフのLINEグループにも連絡が入るので、できる限りの情報を集めて、山口選手に伝えていました。
昨年も7区を経験している山口選手は、6区で懸命に襷を運んできた星選手に「柊斗ーーー!!」と大きな声で名前を呼び、星選手も最後の力を振り絞りました。
「2位との差を教えてください」と山口選手に言われていたので、中継所のほんの少し先でスタンバイ。走り出していった山口選手に大きな声でお伝えしました。
中継所付近は沿道の大歓声と、中継所で待つ選手の声、ナンバーを読み上げる審判の方の声などもあり、選手に言葉を伝えるのは一発勝負。「できるだけ短い言葉で、ハッキリと大きな声で」を心がけました。
山口選手がスタートした後は、星選手をお出迎え。8分49秒で区間6位となり、順位を一つ上げてアンカーの山口選手に勢いをつけました。星選手が着替えてダウンジョグを行い、選手輸送バスに乗る姿を付き添いは見送ります。バスには選手しか乗れないので、ここから他のチームの皆さんとフィニッシュ地点に向けて大移動です。
7区付き添いの場合、アンカーのフィニッシュには間に合いません。選手の皆さんは13.0kmをあっという間に走りきってしまいます。電車で移動中に福島県チームが3位にフィニッシュしたというのを駅伝ファンの方のXへの投稿で知りました(笑)。
山口選手は実力者がそろうアンカーで37分15秒をマークし区間4位。前回は38分01秒で区間6位でしたので、昨年ご自身が出した記録も順位も上回る快走でした。チームとしては目標である8位入賞を大きく上回る3位。総合記録でも、福島県記録を更新しました!
3人の大学生にインタビューしました
レース後、大学生の皆さんにインタビューさせていただきました。
7区・山口智規選手
「昨年の経験から余裕を持って、ラスト5kmや3kmが勝負になるのを頭に入れて、レースをしていました。後半を考えて自重してしまった部分はありますが、追える位置で持ってきてくれた後輩のために、絶対に3位は守ろうと思って走っていました。途中、前後の差は全然わからず(2位を走る千葉県チームの)羽生(拓矢)さんと差が開いているのはわかっていましたが、後ろから近づいているのはあまりよくわかっていなくて、ラスト3kmで思いっきり行きました」
記録や区間順位については「満足のいく順位ではないですが、昨年よりもタイムは上がりましたし、前半から攻めればもっとタイムが出るなと思いました」。2025年の目標については「個人としては、世界陸上とワールドユニバーシティゲームズをしっかり目指していきたいです。一番は東京世界陸上です。遠いかもしれないですが、一番大きな目標なので、そこを目指していきたいです。チームとしては箱根駅伝総合優勝を目指しています」。
3区・谷中晴選手
「箱根駅伝後の疲労は気になっていましたが、藤田監督にしっかり休ませていただきました。1区、2区と予想通りの展開で良い位置でつないでくれたので、先頭に出て、やるしかないと思いました。(1区、2区の)彼ら2人の努力を消しちゃいけないと思って、走らせていただきました」。3区の福島県記録を更新し「思ったよりキツかったのですが、柏原さんの持っている23分56秒を1秒更新できたので、自分の中では達成感はあります」。2025年の目標は「駒澤大学としては、主将の山川(拓馬)さん(3年、上伊那農業)を筆頭に三冠を狙っています。個人としては関東インカレなど、春先からタイムを狙っていきたいです。ケガだけは気をつけて、夏合宿を越えて、三冠を目指して駅伝シーズンも走っていけたらと思います」。
主将・木村有希選手(慶應義塾大学4年、葵)
「一般区間には2人、力のある選手がいて、自分は順当にいけば補欠でしたが、どちらになってもいいように準備はしていました。僕が年長者でキャプテンということで、中学生や高校生が伸び伸びと走れるようなコミュニケーションをとろうと、心がけていました。(当日は)3区谷中選手の付き添いでした。谷中選手は箱根で疲労があったと思いますが、それを感じさせない走りをしてくれました。(レース前)入賞は堅いと思っていましたが、3位まで行くとは予想以上でした。中高生、大学生に感謝しています」
大学4年間を振り返り「慶應義塾大学では自分で練習することも多かったですが、コーチの存在も大きかったですし、これからにつながる経験ができました。実業団は今より厳しい環境になると思いますが、自分はそういう方が合っているかなと思います。限界まで走って、何かを見つけられたらと思います」。
レース後、口々に「来年は優勝を狙おう」
レース後は、スタッフ陣や選手から「来年は優勝を狙おう」という言葉が自然と出るほど、福島県チームの皆さんは手応えを感じていました。今回、高校生区間を走った増子選手と栗原選手が2年生ですし、一般区間も山口選手が大学3年生、谷中選手は大学1年生ということで、今後さらなる飛躍も期待されます。中学生もまだまだ楽しみな選手がそろっているので、2019年の第25回大会以来となる頂点を見据えて、それぞれが所属するチームに戻って活躍されることでしょう。
今回は福島県チームのサポートスタッフだったこともあり、かなり福島愛の強い記事となりましたが、出場された全チームの選手の皆さま、スタッフの皆さま、関係者の皆さま、本当にお疲れ様でした!
中学生から高校生へ、高校生から大学あるいは社会人へ、次のカテゴリーで出場を目指せるのも、都道府県対抗駅伝の魅力ですね。選手の皆さまのさらなるご活躍を応援しています!現状打破!