ラクロス

「All Box Member」で挑んだ青学

1部昇格を夢見て臨んだ法政大戦。その夢は後輩に託された

関東学生男子1、2部リーグ入替戦

11月17日@葛飾区奥戸総合スポーツセンター陸上競技場
法政大 10-6 青山学院大
法政大1部残留

この1年、青学が目標としていた舞台の相手は古豪の法政大だった。それは主将としてチームを引っ張ったAT(アタッカー)勝大(かつ・ひろし、4年、春日部共栄)をはじめ、4年生が「AOYAMA」のユニフォームを着て戦う最後の日でもあった。

あと一歩で昇格ならず

この舞台に立つまで、青学は多くの改革をしてきた。青学大男子ラクロス部は前年の副将が翌年の主将になる。つまり、勝が主将になることは本人が3年生のときから決まっていた。昨年も1部昇格を目指して戦ったが、結果、降格をかけた3部との入れ替え戦に。残留はしたものの、目指す場所にはかすりもしなかった。

勝は新チームが始まる2、3カ月前から“相棒”のMF冨永一真(4年、青陵)とともに動き出し、勝てるチームになるには何が必要かを模索した。そしてチームの目指す姿として、チームビジョンを掲げることを決めた。言語化して明確にし、チーム全員が同じ方向を向くことを目指した。掲げたのは「All Box Member」。青学ラクロス部に関わるすべての人々と、勝利を経て、喜び・感動を共有する。チーム全員で決めた渾身のビジョンだ。

よりラクロスに集中できる環境をつくるため、プレー以外の仕事をすべてマネージャーに任せた。幹部からマネージャーに提案し、マネージャーリーダーと副リーダーも共感して実行に至った。本気で勝つために、一部の舞台をつかむために、やれることをすべてやってきた。

リーグ戦ではその成果を存分に発揮した。初戦から大量得点で白星を飾ると、破竹の勢いで連勝。1試合を残して1位を確定させ、リーグ戦全勝で入れ替え戦へ進んだ。万全の準備をして臨んだ試合、序盤から立て続けに失点を許した。一時は追い上げを見せるも、最後まで流れに乗りきれず敗戦。15年以上1部で戦ってきた法政大の壁は厚かった。夢にまで見た1部の舞台だったが、あと一歩のところで涙をのんだ。「法政はずっと1部にいる。積み重ねてきたものがあった」と、勝は試合を振り返った。

一時は追い上げを見せたが、10-6で法政大に敗れた

2つのチームから学んだこと

勝はもともと野球少年だった。ラクロスはカレッジスポーツとも呼ばれる通り、勝のように大学から競技を始める選手が大半だ。自身のことを「根がめちゃくちゃ真面目で、一つのことに本気で打ち込まないと気が済まないタイプ」と評する勝は、小さい頃から野球に打ち込んできた。

中学のときに都大会で優勝。そのときのチームが、勝の思う理想的なチームだった。「部員一人ひとりが主役だし、応援してくださる方々も全部含めて、みんなが同じ方向を向いていた。だからこそ一人では生み出せない力を生み出せたチームだった。そのチームがずっと頭に残ってて、そういうチームを作りたいな、と」

しかし高校では多くの時間をBチームで過ごし、監督の思いがほとんど共有されなかった。チームに溶け込めていないという気持ちのまま、3年間があっという間に過ぎた。みんな同じ方向を向いておらず、もどかしい思いを抱えていた。そのときのつらい思いは、今でも強く残っているという。

中高と2つの対称的な経験が、今シーズンのチーム作りをする上で大いに生きた。「いいチームを作らないと、つらい思いをする人がいる。逆にいいチームを作れば、いい思いができる人がもっと増えるんじゃないかな、と思ってた」。それを実現させるため、溢れんばかりの情熱を持って、この日まですべてをチームにささげてきた。

チーム作りに心を砕いた1年だった

結果としては、最大の目標である1部昇格を果たせなかった。しかし、リーグ戦全勝という歴史に残る偉業をやってのけた。今シーズンのチーム改革は来シーズンの礎となるだろう。主将の背中を見てきた後輩たちが1部の舞台で戦うため、その先にある日本一をつかむため、「All Box Member」を体現する。

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