アメフト

再びの関学vs立命 すべて出しつくす決戦

リーグ戦の立命戦で独走タッチダウンし、OLと喜び合うRB山口(中央奥)

甲子園ボウル 西日本代表決定戦

12月2日@大阪・万博記念競技場
関西学院大(関西1位)vs 立命館大(関西2位)

あす2日、学生王者を決める甲子園ボウル(12月16日)のカードが決まる。その西日本代表の座をかけ、関学と立命が再び戦う。
2週間前のリーグ最終戦では関学が31-7で勝った。関学オフェンスが立命ディフェンスを手玉にとった。しかも関学ディフェンスが立命オフェンスを破壊した。私は立命が優位と書いたが、まったく反対の結果になった。「なんやかんや言っても関学」。戦前、周りにはそう言う人が多かった。それでも立命のリーグ戦での成長度合いが関学を上回っていると考えたこと、そして関学のエースRB山口祐介(4年、横浜栄)が前節のけがでぶっつけ本番を強いられることなどから、私は「立命推し」でいった。

その山口が走った。第1Q9分すぎ、ハーフライン付近からの第1ダウン10yd。OLのナイスブロックを生かして中央付近の第1線を抜けると、右へコースをとり、左からタックルに来た立命のDB荒尾亮汰(3年、関西大倉)を左腕でいなし、エンドゾーンに入った。試合後に鳥内秀晃監督も「あれが大きかったんちゃいますか」と評した先制の52ydタッチダウンランだ。ここで私の予想は音を立てて崩れた。

痛み止めを施して試合に臨んだ山口だが、試合中も患部は痛んだ。この日は自己判定で本来の8割ほどのパフォーマンスだった。彼がたたえたのはOLの5人だ。シーズン序盤からずっと、山口はOLに関して不満を漏らしていた。1回生から試合に出続けているからこそ、OLのブロックのタイミング、向き、強さがプレーに対してフィットしたものであるかどうかは、誰よりもよく分かる。だから注文をつけ続けてきた。山口は言う。「京大戦や関大戦はまだOLに不安があったんですけど、立命戦を前に戦えるレベルに達してくれました」。求め続けたエースにOLが応え、関学オフェンスは一つ上のステージに上がった。

前回の対戦直後、負けをかみしめる近田

立命DB近田、倍返しなるか

以前も書いたが、一度目の対戦で関学オフェンスに狙われた男がいる。立命の副将でDBの近田優貴(こんた、4年、立命館宇治)だ。前出の山口の先制TDのときは相手のフェイクにつられて動きすぎ、山口に右手でかすることしかできなかった。あのランを止めるなら近田だった。パスに対してもランのフェイクにつられて上がった裏を狙われたり、味方とのコミュニケーションミスを突かれてTDを許した。再戦を前に、近田は言った。「僕自身、ディフェンスで関学戦に出るのは初めてで、地に足がついてないところがありました。でも一回やって、どういうものか分かったし、逆に自信ができた。次はもっとできると思ってます。やり返したいです」

彼は横浜市の出身だ。中学時代は部活とクラブチームでバスケットボールに取り組む一方、フラッグフットボールチームとタッチフットボールチームに入り、学習塾にも通っていた。高校からはアメフトに専念すると決め、寮のある立命館宇治へやってきた。身長169cmの小さな体で、WRやRBとして活躍。当然パンサーズでもオフェンスで駆け回ってやろうと思っていた。しかしディフェンスコーディネーターの池上祐二コーチに言われた。「お前にはDBをやってほしい」。最初は悩んだ。しかし思い直した。「ずっとチームを見てきてる人が自分をほしいと言ってくれてるんだから、逆にそっちの方が活躍できるんじゃないか」。そして、確実に早く活躍できそうだったオフェンスを捨てた。体を鍛え上げ、頭も鍛え、前だけ見て走ってきた。

4回生にして、ようやくそのときがやってきた。春から試合経験を積み、思いっきりのいい上がりでランプレーをしとめた。インターセプトもした。しかし最大の目標だった関学戦では痛い目にあった。
私は「近田、やり返せ」という記事を書いた。彼は読んでいた。再戦前の記者会見のあと、近田を呼び止めて、私は言った。「あんな記事書きやがって、っていうぐらい活躍してくれよ」と。「はい」。近田は笑ってうなずいた。

甲子園ボウル出場を決めるトーナメントに関西2位校も出られるようになったのが2年前。現在の東海や九州などとの力関係から考えて、西日本代表決定戦が3年連続で関西1位と2位になったのは自然なことだ。だが、かつて関西学生リーグの魅力だった一発勝負のヒリヒリ感は薄れた。ここに来年からは関西3位校まで入ってくる。
それでも明日の再戦だけは、双方がすべてを出しつくす戦いになる。この1年、いや4回生にとっては4年間のすべてをぶつける戦いになる。山口はまたスタジアムを沸かせる走りをするだろうか、近田は関学に倍返しできるだろうか。

最後は4回生の意地で決まる。彼らの4年間を感じに、万博記念競技場へ行こう。

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