アメフト

立命DB松山は思いっきり輝き、散った

試合後、松山は涙をこらえられなかった

甲子園ボウル西日本代表決定戦

12月2日@大阪・万博記念競技場
関西学院大(関西1位) 20-19 立命館大(関西2位)

8月末の開幕からずっとリーグ戦を見ていると、気になる選手が何人か出てくる。私にとって、立命の21番がその一人だった。4回生でDB(ディフェンスバック)の松山陸。京都の鳥羽高ではバスケ部で、今年からDBのスターターになった。

フットボーラーとしてのたたずまい

きっかけは、彼のしぐさだった。第2節の近大戦をフィールドレベルで写真を撮りながら見ていると、関西学生連盟の廣田光昭事務局長が私に声をかけてきた。「すごい気になる選手がおるんやけど」。聞けば相手のレシーバーの真ん前にタイトにセットしたとき、前かがみになって、両手をひざの前あたりで小刻みに上下させているという。注目してみると、確かに手を動かしている。気になって試合後、初めて松山に話を聞いた。レシーバーが走り出したときにスッと手がでるように動かしているとのことだった。その理由自体は想定内のものだった。でも、それ以降の試合もずっと、松山が気になった。

それは、フットボーラーとしてのたたずまいがかっこよかったからだ。これはもう、ひとことでは非常に表現しにくい。私自分が選手だったころから20年以上アメフトを見ていて、いろんな要素で決めてきた。ユニホームの着こなし方、歩き方、走り方、プレーとプレーの間に仲間とコミュニケーションをとるときの様子、プレー中の身のこなし……。いろいろ総合して、その選手がフットボーラーとして醸し出す雰囲気が、かっこいいかどうか。松山はかっこよかった。男が男に「かっこいい」というのも変かもしれないが、長くアメフトをご覧になっているみなさんには、分かってもらえる気がする。

大一番で二つのインターセプト

そんな松山が、最後に思いっきり輝いて、散っていった。

立命が3年ぶりの甲子園ボウル出場をかけた西日本代表決定戦。その2週間前に関西学生リーグ最終戦で7-31という完敗を食らった関学との再戦だ。ご存じの通り、試合残り2秒からのプレーで関学に逆転サヨナラフィールドゴールを決められ、19-20で立命は負けた。この試合で、今シーズンのインターセプトがゼロだった松山が、2度も相手QBのパスを奪った。

第2Q、相手のパスを奪った松山は68ydを駆け抜けてタッチダウン

まずは第2Q最初の関学の攻撃シリーズ。攻め込まれ、相手がタッチダウンを狙って投げたパスを、エンドゾーンで松山が奪った。ランのフェイクにひっかかり、「やばっ」と思って必死で下がったところにパスが飛んできたそうだ。二つ目も第2Q。10分すぎに相手QBが不用意に投げたパスを左サイドでインターセプト。味方が必死で関学のオフェンス陣をブロックしてくれたこともあり、松山は左サイドライン際を68yd駆け抜けてタッチダウン。またこの走り方がなんともいえず、かっこよかった。

試合残り1分56秒から、2点を追う関学のオフェンスが始まった。ゴールまでは64yd。20yd以内に入られると、ほぼ確実にフィールドゴールで逆転される。松山は「相手が嫌なプレーをしよう」と思い、フィールドに入った。しかし立命はパスを2度通され、ゴール前7ydまで迫られた。負けた瞬間、立命ディフェンスの面々は地面に崩れ落ちた。号泣した。

でも松山は泣いていなかった。サイドラインに戻ってきて整列したあと、周りで泣く選手の頭をポンポンとたたき、声をかけた。関学の光藤主将へのテレビインタビューが流れると、光藤の言葉に3度うなずいた。でもそのあと、監督、コーチや仲間の言葉を聞くと、涙をこらえられなかった。4回生のディフェンスメンバーで集まり、輪になって肩を組んだ。「俺ら、ようやったよ」。みんなで泣いた。

苦手だったタックル

その輪がとけたところで、松山に話を聞いた。彼は涙目で会釈した。でも話し出そうとすると、またこみ上げてきて、泣いた。少し落ち着くと、今日の試合前のことを教えてくれた。立命ディフェンスを長く率いる池上祐二コーチの言葉で、松山は腹をくくったそうだ。「池上さんが『甲子園ボウルもライスボウルも関係ない。いまできるフットボールを、死ぬ気でやってこい。全部出してこい』って。いままでで、いっちゃん気持ち入れてやりました」。こうして、二つのインターセプトが生まれた。

抜群の運動能力を誇る松山でも、高校までのフットボール経験者が全国から集まる立命では3回生までスターターになれなかった。ようやくその座をつかんだこの春、試練がまっていた。松山はタックルが苦手だった。4回生になっても、相手にまっすぐ当たっていくタックルができなかった。すると池上コーチに言われた。「お前だけは練習でも全部フルタックルでやれ。タックルができるようにならんと、結局使いもんにならん」と。正直、タックルにいくのが怖かった。だから毎日、気持ちをつくって練習に行った。やっと、怖がらずにタックルにいけるようになった。この秋のシーズン、松山の相手に刺さるようなタックルを何度も見た。4年目で初めて、試合に自分の場所ができて、そこで戦い抜けた。「いい仲間と最後までやれて、ほんまによかった。最高です」

スターターで臨んだラストイヤーを松山は全力で駆け抜けた

4年間のフットボール生活の中で、ラストに最高のプレーができた。松山自身がいろんなことを乗り越え、準備し、腹をくくれたからだろう。負けはしたが、人生の大きな自信になったはずだ。

松山陸は、最後までかっこよかった。

この記事をシェア

in Additionあわせて読みたい

Their Stories大学別・競技別に読む