サッカー

特集:第67回全日本大学サッカー選手権

新監督のもと、変革に挑んだ早大の1年

新監督のもと、変革に挑んだ早大の1年
2018年、早稲田に新たな一歩を刻んだ選手たち(11月25日、味の素フィールド西が丘にて)

全日本大学選手権

12月17日@東京・味の素フィールド西が丘
準々決勝 順天堂大 2-1 早稲田大

インカレの準々決勝で順大に逆転負けを喫し、新生早大ア式蹴球部の1年目が幕を閉じた。8年間監督を務めた古賀聡氏が2017年度限りでチームを去り、外池大亮監督に変わった。1年で2部からはい上がってきたチームは新監督のもと、関東リーグ戦で優勝。夏冬2度の全国大会にも出場した。早大がたどってきた軌跡を振り返る。

手堅いサッカーと決別

これまでの早大は、守備的で手堅いサッカーを目指していた。フィールドプレイヤー全員がハードワークすることで、相手から自由を奪う。ボールを奪ったら最速でゴールを目指す。ロングボール主体で、手数をかけずに攻め込むスタイルだった。守備に注力する分、常に得点力の課題を抱えていた。関東リーグ戦を制した2015年も、総得点数は12チーム中9位だった。その翌年、シーズン後半になって悪循環に陥り、2部に降格。一試合ずつを見ると大崩れは少なかったが、常に上位を目指すには、このスタイルに限界も見えてきていた。

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今シーズンから早大の指揮をとっている外池監督

新監督は就任が決まるとすぐ、幹部学年を迎える選手たちに対して、創部以来のチームビジョン「ワセダ・ザ・ファースト」の解釈を見直すよう促した。抽象的だったフレーズをア式蹴球部の歴史や現状を踏まえ、より現実的で明快な言葉に置き換えた。そして生まれたのが、「日本をリードする存在になる」という新たなビジョンだ。従来の早稲田のサッカースタイルについて外池監督は「それでもし優勝できたとしても、大学生の中での一番にしかなれない」と話し、ロングボール多用のサッカーと決別。日本のサッカーをリードできる存在への歩みを始めた。

「タイトル奪還」という目標を実現するべく重視したのは、試合を迎えるまでの過程だ。早稲田自身と対戦相手の分析を入念にやり、それに基づいて丁寧に準備を進めた。その際、外池監督は「変化こそが成長」と繰り返し説き、常にメンバーやフォーメーションに変化を加えてきた。公式戦出場経験のない選手を抜擢したのも一度や二度ではなかった。トップチームはすべての選手にとって常に手の届く場所へと変わり、し烈なポジション争いが繰り広げられた。ミーティングもできるだけチーム全員でやり、約90人の部員全員が目標を共有。チームは一枚岩となっていった。

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7月、Bチームでの好調を受けて抜てきされ、公式戦初出場初得点を決めて祝福される佐藤(34番)

主将のFW岡田優希(4年、川崎フロンターレU18)やMF相馬勇紀(同、三菱養和SCユース)といったタレントを生かしたカウンター攻撃を軸に、対戦相手や試合状況に応じて臨機応変に戦い、大躍進をとげた。関東リーグ戦では開幕4連勝で周囲を驚かせ、5月中旬以降は首位に定着。前期を終えて、9勝1敗1分とした。後期は順風満帆とはいかず、何度か苦境も訪れた。試合に向き合う姿勢を見直し、突き詰めていくことで苦境から脱出し、悲願のリーグ優勝達成まで走り抜けた。

チームに新しい風が吹き込まれたことで目覚ましい変化をとげたが、これまでの歴史や伝統をないがしろにしたわけではない。新人監督としてチームの雰囲気に気を配ってきたDF小笠原学(4年、青森山田)は「古賀さんと外池さんと、二つのやり方が合わさる中で、これがいいという点を監督やスタッフと模索してきました」と振り返った。1年生のときからピッチに立ち続けてきた相馬も「ワセダとして絶対にブレてはいけない部分というのが、チーム全体の雰囲気としてはなくなったんですけど、個人としては持ち続けられました」と証言する。今シーズンの躍進は、創部から93年間積み重ねてきた謙虚でひたむきな「ワセダらしさ」が、選手たちの中に生き続けていたからこそだ。

変革はまだ序章

しかし、インカレは不本意な結果に終わった。一年間主将としてチームを引っ張ってきた岡田は「悔しさはある」としながらも、「清々しい」と晴れやかな表情で話した。リーグ戦最多優勝を誇る名門でありながら、インカレでは近年、思うような成果を継続的に挙げられていない。ただこの1年間で、「強いワセダ」を取り戻すための礎を築き上げたといえるだろう。

「やれることはやりました。『あの一年があったからいまがある』と思ってもらえる瞬間をたくさん残せたら、という思いでやってきました」と岡田は振り返る。変革はまだ序章が終わったに過ぎない。今後求められるのは、今年積み重ねてきた取り組みを一過性で終わらせず、チームの文化として定着させていくことだ。結果を残したことで、来年は強豪として定着できるかどうかの分水嶺のシーズンにもなる。MF栗島健太(3年、流経大柏)は「4年生の存在は大きかったです。来年はこの悔しさを晴らして、日本をリードする存在になりたい」と前を向いた。勝負の変革2年目に向け、思いはしっかり受け継がれている。

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インカレ準々決勝で順大に敗れ、悔しがる選手たち

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