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特集:第72回ライスボウル

関学完敗、光藤主将のタッチダウンで幕

4回生たちは、鳥内監督からの最後の言葉を食い入るようにして聞いた

第72回ライスボウル

1月3日@東京ドーム
富士通(社会人Xリーグ) 52-17 関西学院大(学生)

アメリカンフットボールの日本一を決める日本選手権第72回ライスボウルは1月3日、東京ドームであり、社会人Xリーグ王者の富士通フロンティアーズが52-17で関西学院大学ファイターズを下し、3年連続4度目の頂点に立った。最優秀選手賞にあたるポール・ラッシュ杯には26回のランで206ydを走り、二つのタッチダウン(TD)を挙げた富士通のRBトラショーン・ニクソンが選ばれた。ライスボウルはこれで社会人チームの10連勝となり、試合後には関学側から、ライスボウルで学生と社会人が対戦を続けることへの疑問と懸念が示された。

第2Q途中までは踏ん張った

試合の焦点は、関学ディフェンスが富士通のRBトラショーン・ニクソンのランをどこまで止められるかだった。ニクソンは昨シーズンまでディフェンスのLBで、身長186cm、体重106kgと大きい。スピードもあって、この秋は社会人Xリーグでも手のつけられないランナーとなっていた。

それでも第2クオーター(Q)の途中まで、関学は踏ん張った。ディフェンス第2列のLBや第3列のDBを相手のRBやQB目がけて突っ込ませる「ブリッツ」を多用。LB海崎悠(2年、追手門学院)やDB西原光平(4年、池田)らがニクソンに食らいついた。社会人の選手でもニクソンに対しては安易に体を投げ出して足元に飛び込む「無責任タックル」に出るシーンがよく見られたが、関学は違った。しっかり見て、足をつかみにいった。ひとりがニクソンを捕まえたところにほかの選手も殺到し、ロングゲインを許さなかった。

QB奥野(3番)が親友のOL高木(65番)をリードブロッカーにつけて走る

0-14の第1Q終盤、自陣28ydから始まったオフェンスでは奥野耕世(2年、関西学院)、西野航輝(4年、箕面自由学園)、主将の光藤航哉(みつどう、同、同志社国際)という3人のQBを併用し、敵陣深くへ攻め込む。最後はWR小田快人(同、近江)が右オープンを突いて2ydのTDランを決めた。第2Q2分すぎ、7-14とした。その後ともにフィールドゴール(FG)を1本ずつ決めて10-17となった第2Q終盤、富士通は自陣からRBニクソンが42ydとこの日初めてのロングゲイン。ここから力負けが目立つようになり、点差が開いていった。

関学は10-52の第4Q終盤、QB西野と光藤がパスを通して前進。最後はゴール前4ydから光藤が右へのラン。味方のナイスブロックに守られ、エンドゾーン右隅へ駆け込むTD。せめてもの意地を見せた。

試合終盤にTDを決め、仲間に祝福される主将のQB光藤(左から2人目)

「お客さんもおもろいんかな?」

試合後、関学の鳥内秀晃監督は社会人Xリーグ王者と学生王者が対戦する形式に疑問を呈した。「あまりにもフィジカルの次元が違いすぎて、戦術や戦略でどうにかなる問題やない。今日も担架で運ばれた数以上に、けが人が出てるはずや。危ないねん。相手は学生時代のオールスターに、規格外の外国人が入ってる。ディフェンスが崩壊してフットボールにならん。正月からこんな試合見て、お客さんもおもろいんかな? 途中でいっぱい帰ってるやん。これが現実やで。こんな試合続けてたら、アメフトファン減るで」。小野宏ディレクターは、チームとしても鳥内監督と同じ意見であることを表明した。

この日も200yd以上走った富士通のRBニクソン

鳥内監督は今シーズンのチームについて「苦しかったけど、ようみんなで頑張ってここまできたと思う。光藤が『全員で勝とう』って言うて学生チャンピオンになったんやから、それでええんちゃうか」と評した。

主将の光藤は言った。「新チームが始まったときから社会人に勝って真の日本一になろうと掲げてきたので、それができなかったのが一番悔しいです。ずっとチームに何かを残したいと思ってたんですけど、いまの悔しさを忘れないで、僕らのチームを踏み台にして、いいチームをつくってもらいたいです。最後にみんなの前でしゃべったとき、みんながほんとに悔しそうな顔をしてたので、『このチームはまだまだ強くなるな』と思いました」

関学ではQBが主将になるのは68年ぶり。この1年をふり返り、光藤は「すごく下級生に助けられました。全員で同じ目標に向かってやっていく中で、かけがえのない仲間もできました。すごく濃い1年だったし、今後は経験できないかけがえのない時間になりました」と語った。シーズンの最後のTDを自分で決めたことについては「あれはみんなが本当にいいブロックをしてくれて、僕は何もしてません。でも学生としての意地を見せられたのはよかったと思います」と話した。キャプテンをやってよかったですかと尋ねると、「はい」と満面の笑みで返した。

「絶対に勝つ」「全員で勝つ」。念じるように言ってきた光藤のラストシーズンが、ここに終わった。

1年間の応援に感謝し、深々と応援席に頭を下げる関学の選手たち

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