ラグビー

花園での喜びと悔しさ胸に早大へ 早実FB小泉怜史

名護戦で大きくゲインする早実FB小泉

12月27日から1月7日まで東大阪市花園ラグビー場で開催された第98回全国高校ラグビー大会は、大阪桐蔭(大阪第1代表)の初優勝で幕を閉じた。大会前から注目を浴びたのが79大会ぶり6度目の出場となった「早実」こと早稲田実業高校(東京第1代表)だった。

早実の強さの大きな要因は、早大と連携して強化に取り組んできたことにある。早実-早大のOBで早大コーチも務めた大谷寛(かん)氏が系列校強化のため、2014年に早実のヘッドコーチ(HC)に就任した。そして16年から3年連続して花園の東京都予選決勝に進出。三度目の正直で、花園優勝5度を誇る強豪・國学院久我山を43-19で下し、花園へたどり着いた。

注目された二世選手たち

大会前から注目されたのは、久々の出場という事実以外に、早大でプレーしたOBの二世選手が多かったからでもある。実に都予選決勝の先発15人中7人がそうだった。

副将のFB(フルバック)小泉怜史(3年)もその一人だ。

1年生のときはWTB(ウィング)、2年ではSO(スタンドオフ)で都の決勝の舞台を踏んでいた小泉は、1988年度に早大の控えSOだった父の剛さんの影響もあり、3歳から神奈川の相模原ラグビースクールで楕円球を追った。幼いころからサッカーも同時にやっていて、左右どちらでも蹴ることができた。プレースキッカーも任されていた。

小泉はスーパーラグビーや各国代表の試合を見たり、試合を分析したりするのが好き。判断力に優れ、U17日本代表でも主将を任された。世代を代表する選手の一人だ。大谷HCは新チームになるとき、早大の相良南海夫監督の息子であるNo.8相良昌彦を主将に、小泉らを副将に指名した。大谷HCは小泉たちに「相良はプレーで、小泉は分析や細かいところでチームを引っ張ってほしい」と伝えたという。

早実が前回出たときは、大阪の花園ではなく兵庫県西宮市の甲子園南運動場で大会が開催されていたため、早実が花園でプレーするのは初めてだった。ワールドカップに向けての改修が終わったばかりの第1グラウンドで12月28日、1回戦で名護(沖縄)とぶつかった。

試合序盤、早実フィフティーンは緊張からか動きが硬く、反則からPG(ペナルティーゴール)で先制された。しかし、副将のひとりでCTB(センター)の植野智也がビッグタックルを決めて流れを引き寄せた。そしてトライで逆転すると、本来の力を発揮し始めた。

小泉はこう考えていた。「名護のディフェンスは(中央に)寄り気味で、早実には速いランナーがいる」。その後は外のスペースをしっかりと攻め、55-3で完勝した。

小泉は花園特有の風に悩まされ、プレースキッカーとしては9本中5本しか決められずに悔しい思いをしたが、FBとして前半のラストプレーは圧巻だった。自陣で相手ボールを奪うとすばやく外へ。小泉はステップで相手をかわして、左のタッチライン際を大きくゲインした。そして少し右に入ると、自分がつくった外側のスペースへノールックパス。仲間のトライを完璧に演出した。

思わず、ベンチにいた大谷HCも「スーパーラグビー、出た!!」と叫んだ。小泉も「後ろに味方がいるのは分かってました。相手が一人だったし、少し右にいったら(左にスペースが)空くのでいけるかなと思ったら、きれいにトライまでいけた。決まってうれしかったです」と、満面の笑みで言った。

小泉は左右どちらでも蹴れる

“アカクロ”着て完敗

2回戦は12月30日、相手は優勝候補の一角でBシードの流通経大柏(千葉)が相手だった。例年以上にFWの選手が大きく、夏の7人制の全国大会を制しているようにBKにも快足ランナーが揃う難敵だった。

早実は元日の3回戦に進出して花園で年を越すことを目標にしていた。小泉は「流経大柏はAシードみたいな強いチームです。名前に負けず、自分たちはチャレンジャーなので、前に前にプレッシャーをかけて、先手を取って、相手を自陣に釘付けにしたい」と意気込んでいた。 

1回戦はアウェーのジャージーだったが、2回戦はOB会から寄贈された、大学と同じデザインの“アカクロ”で臨んだ。早実にとって全国トップレベルの強豪と対戦するのは初めてで、とくに相手FWのプレッシャーは想像以上で、まったく自分たちのラグビーができず、0-53という完敗だった。

強風の中、小泉はキックでうまくコントロールできなかった。「体重やフィジカルの部分で差があって、陣地も取られてしまった。試合の立ち上がりも悪くて、自分たちが受けてしまいました」と言って、肩を落とした。ただ小泉は目標としていた花園に出場することができたことを思い、「全国大会でプレーできてよかったです」と笑顔をみせた。

「日本代表やスーパーラグビーでプレーできるような選手になりたい」と話す小泉は、すでに早大への進学が決まっており、もちろんラグビー部に入るつもりだ。

早大には前年度の花園で優勝したCTB/WTB長田智希やWTB/FB河瀬諒介(ともに1年、東海大仰星)らもおり、「花園で全国優勝した選手たちにもまれて、もう一段階成長したいです。武器であるプレースキックをもっと磨きたいです」と前を向く。

早実で花園に出場した喜びと、大敗した悔しさを糧に、小泉は大学4年間でどこまで飛躍できるのか。そしてその道は目標のプロラグビー選手、世界を舞台に戦う選手へとつながっているのだろうか。

食らいつくようなタックルも小泉の持ち味(15番)

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