陸上

熊本の公園から世界へ 競歩・倉原菜摘

神戸でのレースで30位だった倉原

第102回日本選手権 女子20km競歩

2月17日@兵庫・六甲アイランド甲南大学周辺コース
30位 倉原菜摘(熊本大3年) 1時間49分28秒

倉原は前回大会では1時間38分44秒の自己ベストで8位。昨年4月の日本選手権50km競歩では4時間44分45秒で3位。国立の熊本大学に所属する彼女が、どうやって成長してきたのだろう。そう思いながらレースを終えた彼女に声をかけた。「納得はいかないんですけど、いまできることは出し切れたと思います」。前回大会より10分以上タイムが落ちた。ただ、レース展開は復調のきざしを感じさせるものだった。

調子が上がらない

この日の選手たちのナンバーカードは資格記録の順番だった。女子は5連覇のかかっていた岡田久美子(ビックカメラ)の201番から始まり、倉原は11番目に当たる211番。すぐ目の前に岡田がいる位置からのスタートとなった。夏以降、不調が続いていた。けがもないのに、ぱったりと調子が上がらなくなったのだという。フォームを改善し、取り組んでいなかったドリル練習もこなしたが、やればやるほど分からなくなった。「自分の歩きをしよう。自分のペースを刻もう」。そう考え、あえて目標を低くして、この日のレースに臨んだ。

倉原(中央奥)は日本トップ選手の岡田(右端)も視野に入る位置でスタート

ほぼイーブンペースで歩き、1時間49分28秒でゴール。「あきらめ癖がついてきてた中で、自分のペースを守ることに集中して、自分を奮い立たせながら頑張れたので、大きな成長になったんじゃないですかね」。倉原は笑った。

双子の姉に勝ちたくて

熊本市内の中学時代、倉原は水泳部に所属しながら陸上の大会に出ていた。とくに800mでいい結果が出て、「もしかしたら陸上ならいいところまでいけるかも」と希望を抱いた。熊本県立第二高校に進むと、迷わず陸上部の門をたたいた。

競歩を始めたのは、高2の1月からだ。

倉原には双子の姉・未波がおり、姉も同じ高校の陸上部。ふたりは普段から競い合っており、陸上でも「姉に負けたくない」という思いでいろんな種目に挑戦した。1年生のときは400mと800m、2年生のときには七種競技にも挑んだ。元々長距離ランナーだった姉は2年生から競歩へ転向すると、ぐんぐん力をつけて全国大会に出場。「自分は挑戦してもないのに、姉はもう全国大会に出てる。すごく悔しかったんです」。そんなシンプルすぎる「姉に勝ちたい」という気持ちで、倉原も競歩に転向した。

最後の熊本県高校総体には、ふたりそろって5000m競歩に出場。姉が25分20秒60で1位、妹は25分20秒89で2位。競り合って、ともに自己記録を1分以上更新した。インターハイにもふたりで出場。妹は決勝に進んで13位だった。その後、姉は広島大学、妹は熊本大学へと、初めて道が分かれた。

もうすぐ就職活動が始まる

公園で練習、お年寄りからの声援

熊大では陸上部の長距離ブロックに所属しているが、普段の練習は高校時代のコーチに、公園で指導してもらっている。練習メンバーは主に高校生で、時間が合わないときはコーチとマンツーマンになる。コーチとも予定が合わないときは、熊大での補強運動に切り替えている。ひとりで練習するのはつらくないかと聞くと、倉原は苦笑いを浮かべた。「正直、ほかの強い大学がうらやましいと思うことがあって、コーチに見てもらってるのに、素直に感謝できなくなった時期もありました」。2年生と3年生の夏には、強豪大学主催の合宿に参加させてもらった。その1週間の合宿で同世代の競歩仲間が増え、大会で会える楽しみもできた。

恵まれているとはいえない練習環境でも、倉原にはいろんな人に助けてもらっているという意識がある。公園で出会うお年寄りが「頑張れ~」と応援してくれる。別の場所で練習している熊大陸上部のメンバーも、倉原を支えてくれる。昨年7月の国体予選の5000mで23分17秒13の自己ベストを出して以降は調子が上がらないが、自分を見つめ直すことで一つひとつ乗り越えようとしている。

3年生の倉原には、就職活動が目前に迫る。社会人になっても競歩を続けられる環境をひとつの条件として、就職先を見定めようと考えている。将来的には国際大会にも出場できるような選手になりたい。

そのためにも、大学でのラストイヤーで、昨年3位だった日本選手権50km競歩でのリベンジを狙っている。昨年の大会では4時間30分切りと優勝を狙っていただけに、17km付近から失速しての3位は納得のいかないものだった。「いまの調子でどこまでいけるか分かりませんけど、しっかり合わせていきたいです」と前を向く。

「自分の限界に挑戦したい」と倉原。社会人になっても競歩を続ける予定だ

普段でも、鏡があるとついフォームを気にしてしまうという。「ジョギングができる道路なら競歩もOKだろうという感覚で、自分としては周りの目はあまり気にならなくなりました」。競歩選手の「あるある」なのかもしれない。

姉はいま、トライアスロンに転向し、国体出場を目指して日々トレーニングしている。競技が分かれても、よく電話をしてお互いを励まし合うそうだ。「どっちが頑張れるのかなって、まだ競争してますね」と倉原。ふたりの「勝負」のゆくえも楽しみだ。

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