バレー

同じ目線で語り、背中で示す 慶大バレー、マルキナシムの主将像

飛躍を期す慶大バレー部の新主将は身長192cmのマルキナシムに決まった

チームというものは、往々にして主将の「色」に染まっていくものだ。アツい主将、底抜けに明るい主将……。さまざまな主将が、チームをつくり上げてきた。いよいよ始まる新シーズン、慶大バレー部の主将を務めるマルキナシム(3年、川越東)はいったいどんな男で、どんなチームをつくり上げようとしているのだろうか。

リーグ最下位に沈んだ昨秋

慶大の持ち味は、個々の攻撃力と大学界屈指の高さを生かしたブロックだ。それらの武器を生かしながら、強豪ひしめく関東1部リーグで堂々と渡りあってきた。それが昨年の秋リーグ戦では1勝10敗の最下位に。主力選手の負傷離脱が相次いだのをきっかけに、攻守の歯車がかみ合わなくなり、武器のはずのブロックは機能不全になった。集大成として臨んだインカレでは、同じ関東1部の明大を相手に一度もリードを奪えないまま完敗。日本一への道は、3回戦で閉ざされた。

どん底を味わった慶大はこのオフシーズン、トレーニングに励んできた。昨年からスタメンの過半数を1、2年生が占めていたため、コート内の顔ぶれに変化はない。だからこそ、より完成度の高いバレーが求められる。現在は個々のレベルアップはもちろん、ブロックの強化にも取り組んでいる。そしてこのチームを勝利へ導くため、ある男に白羽の矢が立った。それが新主将のマルキだ。

「縦割り班制度」を導入

昨年、マルキは何度かこんなことを話していた。1学年上の主将を引き合いに出し、「僕は(伊藤)祥樹(しょうき)さん(4年、清風)とくらべてリーダーシップがないんです」と。マルキはもともと口数が多い方ではなく、感情を表に出すタイプでもない。主将は自分に向かないと考え、過去には「もしキャプテンの話がきても断ろう」と思っていたことすらあったという。それなのに、マルキは結局主将を引き受けた。

「慶應と言ったらこの人、というふうにはなりたくないんです」。マルキが目指しているのは“特別な存在”としてではなく、部員と同じ目線に立ちながら一緒に考え、答えを導き出していく主将だ。そんな彼の姿勢は、新チームから新しく導入された「縦割り班制度」にも表れている。部員をメニュー班、トレーニング班、ケア班、マネージャーに分け、それぞれに役割を与えた。小グループの中で、学年問わず活発に意見を出し合ってもらい、それらを部に還元していく。意見の吸い上げ策にぬかりはない。

「慶應といったらこの人、という存在にはなりたくない」とマルキナシム

もちろん、ただ同じ目線に立つだけではない。以前、マルキは「ほかの選手に声をかけられるようなタイプではないから、自分はプレーで示すしかないんです」と語っていた。みんなで話し合って決めた方針も、強化してきた戦術も、マルキが先頭に立って体現することで実現する。おそらく部員たちも、彼の背中についていくだろう。

「チームがどんなに苦しいときでも、自分がブレない軸になろうと思います」。マルキのその言葉からは、主将としての覚悟が強く感じられた。部員と同じ目線に立ちながらも、一歩前に出て背中で語る。新しい、マルキナシムらしい主将像だ。

取材のとき、マルキは1冊のノートを携えていた。そこにはびっしりと文字が書き込まれていた。どんなチームにしたいのか、そのためには何をすべきか……。さまざまなアイデアを書き留めているという。目標、課題、理想、失敗、進化……。マルキナシムのノートには、どんな「色」をもったチームの成長がつづられていくのだろうか。

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