フィギュアスケート

慶應フィギュア愛にあふれた新主将、鈴木星佳

鈴木はフィギュアスケートを始めて18年目を迎えた

「みんなが本気でお互いを応援し合えるこの部活が大好きだし、自慢です」。新たに慶大スケート部フィギュア部門の主将となった鈴木星佳(3年、慶應湘南藤沢)は、こう話した。主将になったのは、後輩からの信頼の厚さとひたむきに練習に取り組む姿勢があるからにほかならない。それは彼女の愛にあふれた言葉の数々からも、十分にうかがえた。

一人ひとりと向き合う主将に

鈴木が主将になるにあたって強調したのは、一人ひとりと向き合うということ。慶大には、初心者から7級クラスまで幅広い実力の部員がいる。練習環境もさまざま。スケートに対する思いも、一人ひとり異なる。

そんな部員たちがチームとしてまとまり、意識を高め合うには、お互いを知ることが不可欠だと考えた。「ほかの人のこともよく見て、相手に対して何ができるか、チームに何ができるかを考えられるようにしたいです」と鈴木。それぞれがチームの力になることを理想に、全体練習のメニューを見直していく。

前主将の引退試合で受けた刺激

一方で、継続する部分もある。昨年、チームの目標として掲げていたのは「みんなで強くなる」だった。前主将の竹居峻治(4年、慶應義塾)はこの1年間を振り返り、「普段の練習から最後まで諦めない、手を抜かないというのをトレーニングでも、氷上でも絶対に意識してやってきました」と話した。

竹居は引退試合となった今年1月のインカレで自己ベストを更新。表彰台に立った。あきらめない姿勢が、必ず本番に生きてくるのを証明した。その気持ちのこもった演技を間近で見届けた鈴木は「すごく感じるところがあった」と振り返る。そして「普段の練習から出しきる、強くなるんだという気持ちで取り組む雰囲気を大事にしたいです」と、竹居の思いを引き継ぐ決意を話した。

部活があるから頑張れた

鈴木は「キャプテンになったとき、なぜこんなに部活が大切なのか、これからキャプテンとして何がしたいのかをたくさん考えました」と話す。その問いに対する答えは、自身の経験にあった。

鈴木にはいちど、スケートから離れようとしていた時期があった。さまざまな苦悩や葛藤を抱える中、鈴木をスケートへつなぎ止めたのが「部活」だった。「いままで一人で頑張っていた私が、みんなで頑張る楽しさや心強さを、ここで教えてもらいました」

フィギュアスケートは個人競技であり、たった一人で氷上に立ち演技をする。そんな孤独ともいえる競技を続けるなかで、「みんなで頑張る」ことが鈴木自身の原動力になっていた。

「部活に救われた」という経験があるからこそ、鈴木は「全部員の原動力となる部活を作りたいですし、人としてもそんな存在になりたいです」と語る。「18年間たくさん壁にぶつかり葛藤してきた私だからこそ、みんなに寄り添いたいと思うし、私がいまもスケートを頑張れているように、後輩たちも『あきらめずに頑張ってきてよかったな』と心の底から思えるようにするのが、私の役目かなと思います」。鈴木の部活に対する思いがあふれた。

すべてを出しきれた瞬間の達成感

フィギュアスケートの好きなところを問うと、鈴木は「どんなに練習しても終わりがないところ。それと、その人の経験や思いが演技を通じてひしひしと伝わってくるところです」と答えた。また、大学でフィギュアスケートを続けていく価値を、こう力説する。

「地道な練習を毎日積み重ねて、やっと一人で氷上に立ちます。それでもすべてを完璧にこなすことなんて、そう簡単にはできない。だからこそたった一人の氷上で、あの緊張感の中、すべてを出しきれた瞬間の達成感は何にも代えがたいものになるんだと思います。その達成感を味わうために、また練習を頑張ります」

18年間続けてきた大好きなフィギュアスケートも、ついにラストイヤーを迎える。昨シーズンのパフォーマンスについて鈴木は「気持ちの面でも調整が難しくなって、調子の波がありました」と振り返る。足に負ったけがの影響もあり、思い通りに滑れない試合があったのも確かだ。そしていま「いままでやってきたことすべてを出しきれるように、一つひとつの試合が最後だと思って大事に滑りたいです」と語る。新しいシーズンに向けて、しっかりと前を見すえる。18年かけて積み上げてきた経験や思い。それは、数分間の演技の中に、しっかりと詰まっているはずだ。

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