四人で一つ、慶應4年生の集大成
インカレには慶大から7人の選手が出場した。その中には今大会で引退を迎える2人の4年生の姿があった。
練習態度で引っ張った「3級」主将
竹居峻治(慶應)は男子3、4級クラスに出場した。東インカレでは「中途半端な演技になった」と悔しさをにじませたが、今大会では冒頭の3連続ジャンプや続く2回転ジャンプを次々と決めた。多くの仲間や先輩、友人の声援を背にミスのない演技を見せ、結果は3位。最後の大会で表彰台入りを果たし、有終の美を飾った。
竹居は今シーズンの主将を務めた。主将には最もハイレベルの7、8級の選手が就くケースが多かったが、竹居は3級。「正直、先輩方と同じように技術面でも引っ張るのはきついと分かってました」。そう語る竹居が意識してきたのは、普段の練習から絶対にあきらめないことと手を抜かないこと。その姿勢が最後の3位という好結果にも結び付いたのだろう。フィギュアスケートという個人競技で「チーム」の意識を高めるには、多くの苦労があった。練習環境づくりや日常的な声かけなど、竹居はいろんな場面で部を盛り上げてきた。
好きなスケーターとして、竹居は2学年上の慶大主将だった小曽根孝浩の名を挙げた。手拍子が起こるような軽快な曲から感動的な曲まで、幅広いプログラムで人々の心をつかめるスケーターだった。「すごく楽しそうに滑ってて、そういう面もすごく尊敬してます」と竹居は言う。
インカレの舞台となった日光のリンクは、高校時代の合宿で使っていた場所だった。たくさん先輩から受け継いだスケートへの思いや、主将としての思いを、すべてぶつけた。さまざまな思い出がよみがえったのだろう。演技後、竹居は感極まった表情になった。先輩を追いかけた竹居の演技は、会場にいたすべての人の心に残るものとなった。
けがに苦しんだ
今大会に出場したもう一人の4年生である橋本將太(しょうた、慶應)は「(成功の)確率は上がってました」という冒頭のトリプルサルコウで転倒。そのほかのジャンプでも細かいミスが出て、納得のいかない結果となった。それでも、いつにも増して自然な笑顔で滑っているように見えた。
橋本は中学までサッカーをしていた。高校では違う部活をやりたいと思っていたときに、かつて習い事としてフィギュアスケートをしていたときのコーチに再会。心は決まった。今大会も演技前にはきっかけをくれたコーチと固く握手を交わした。「お世話になった人たちに少しでも見てもらえるように頑張りたい」。感謝の思いを胸に、最後まで滑り切った。
いままでけがなく滑ってきた橋本だが、昨年3月に右ひざの半月板損傷という大けがを経験した。つらいリハビリと向き合い、ジャンプも制限され、多くの困難を伴うラストイヤーとなった。しかも完治することなく最後のインカレを迎えた。それでも「けがを気にすることなく演技に臨めました」と話した。演技後に見せた笑顔は充実感に満ちたものだった。
4人の4年生が結束
竹居と橋本は高校からのチームメイトだ。「常に自分の道を先に開いてくれる人で、同期以上の存在」。竹居が橋本についてこう語るように、互いに欠くことができない存在だった。7年間苦楽をともにした仲間と、同じ舞台で引退を迎えた。慶大4年生はこの二人だけではない。主務として部を支えた蓮田柚香(ICU)と、けがに苦しみながらも仲間のサポートに徹した山本健弘(戸山)も大事な4年生メンバーだ。橋本は「みんながいなければ、この1年は乗り切れなかったと思います」と言い、同期の大切さをかみしめた。
学生フィギュアスケート大会の大きな魅力の一つは、リンクサイドで仲間の演技を見守る選手たちの姿にあると思う。ジャンプが決まれば自分のことのように喜び、失敗すれば「ガンバ!!」と声をかける。慶大チームも仲間の出番がくれば全員がリンクサイドに集まり、演技を見守った。「仲間に支えられたと思うことはあると思いますか? 」と竹居に尋ねると、「それしかないです。リンク以外でも、すごく支えてくれるのがこの部活。このフィギュア部が大好きです」と言って笑った。
そんな素晴らしい部をつくりあげた4年生たちに、拍手を送りたい。