【4years.から新入生へ】ここ一番、走れる人になろう

昨年の甲子園ボウルの試合後、握手する関学主将の光藤(左)と奥野(撮影・松嵜未来)

大学1年生になられたみなさん、ご入学おめでとうございます。4years.編集長の篠原です。

高校3年生の最後の大会が終わって必死で勉強して合格を勝ちとった人、スポーツ推薦で進学を決めた人、浪人生活を経て合格にこぎ着けた人。高校時代を海外ですごした人もいるでしょう。いろんな道を歩んできた人が集まって、新しい生活が始まりました。体育会で頑張ろうと思っているみなさんへ、ある人の生き方を通してメッセージを贈りたいと思います。

一枚の写真の背景にあったもの

ここに載せた写真は、昨年12月16日にあったアメリカンフットボールの甲子園ボウルの試合直後のものです。握手しているのは、勝った関西学院大学の主将でQB(クオーターバック)の光藤航哉(当時4年、左)と、エースQBで年間最優秀選手と甲子園ボウル最優秀選手に選ばれた奥野耕世(当時2年)です。

4years.は昨年10月25日にスタートしました。たくさんの写真を載せてきました。迫力のあるもの、一瞬だけの表情を切り取ったもの……。すばらしい作品がいくつもありました。その中で、私がいちばん好きなのが、この写真です。もちろん、主将として苦労してきた先輩が後輩の活躍をたたえる様子があたたかく、ふたりの表情がすごくいいと思います。でも、それだけじゃないんです。この一枚を撮るに至った背景を聞き、私は激しく心を動かされたのです。

撮影したのは、この春に日本大学を卒業し、社会人として歩み始めた松嵜未来(まつざき・みき)さん(22)です。3年生まで日大新聞の記者として奮闘した彼女は、就職活動の終わった昨秋から、4years.のカメラマンとして、ほんとうに精力的に手伝ってくれました。

彼女は日大新聞時代、アメリカンフットボールと重量挙げを主に取材していました。アメフト担当としての頑張りは、彼女自身が書いた「日大アメフト部 フェニックスの1年」を読んでもらえたらと思います。

日大新聞を引退して就活に精を出していた昨春、アメフト部に例の一件が起こります。誰よりも近くでフェニックスに寄り添ってきた彼女は心を痛めました。秋のアメフトシーズンにはもちろん、フェニックスの写真を山ほど撮るつもりでスケジュールを空けていました。しかし、フェニックスの昨秋のシーズンはなくなりました。そのやるせない思いを、4years.での活動にぶつけてくれました。

甲子園ボウルの試合後のシーンに戻ります。これは関学サイドのベンチ裏で、テレビのインタビューボードが置かれた場所です。鳥内秀晃監督のインタビューが始まったとき、少し離れたところにいた松嵜さんの中に電気が走りました。次の瞬間には、ここへ向けて走り始めていました。

伏線は1年前にありました。日大が27年ぶりに甲子園ボウルで勝った日です。もちろん松嵜さんは取材で現地にいました。試合直後、日大の内田正人監督(当時)の勝利監督インタビューが始まってまもなくのこと。監督のあとにインタビューを受けることになっていたQB林大希(当時1年)に、長谷川昌泳コーチ(当時)が駆け寄り、抱き合ったのです。長谷川コーチは林を日大に誘い、口説き、ずっと寄り添って指導してきた人です。
これ以上ない感動的な場面でした。松嵜さんは、必死でシャッターを切りました。

だからこそ1年後、関学の勝利監督インタビューが始まろうとするとき、「あそこへ行けば何かが起こる。絶対にそれを撮る」と、ダッシュしたのです。走ったから、そこに来ていた関学のふたりを撮れたのです。

その一瞬のために走る

思い起こせば、彼女はほかの競技の取材でも、よく走っていました。黒のジーパンに白いスニーカー。それが彼女の“勝負スタイル”でした。試合に集中しつつ想像力をフルに働かせて、彼女の中でのベストショットを撮るために、妥協なく走っていました。松嵜さんが報道機関に就職したあとの後任カメラマンに誰かを紹介してほしいと頼んだときも、彼女は私に言いました。「いざというときに走ってくれる人じゃないと、軽々しく紹介なんかできないです」

いま彼女が4years.のために撮ってくれた数々の写真を見ると、少し中日ドラゴンズのルーキー根尾昴に似た顔で、眉毛をつり上げ、小さい体で試合会場を走り回っていた姿が頭に浮かんできます。信念と、ど根性の人でした。見上げた大学生でした。

これから体育会でスポーツに打ち込むみなさん、裏方として選手を支えていくみなさん。松嵜さんのように、自分を信じ、自分にウソをつかず、全力で動ける人、走れる人を目指してみて下さい。その姿勢が、ここから始まる4years.の大事な場面で、きっと生きてきます。

ここ一番で走れる人になろう。

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