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特集:第88回早慶レガッタ

早大漕艇部マネージャー、膨大な準備の先に見る早慶レガッタの未来

早大漕艇部主務の山中(右)と副務の鈴木は早慶レガッタに向け、昨年10月から動き始めた(撮影・松永早弥香)

今年で88回目を迎える早慶レガッタが4月14日、東京・隅田川で開かれる。この歴史ある大会において、裏方が担う役割は大きい。歴代のマネージャーが、昼夜を問わずスムーズな競技運営のための準備にあたってきた。早慶レガッタにおけるマネージャーの取り組みについて、早稲田大学漕艇(ボート)部主務の山中裕一朗(新4年、本庄第一)と、副務の鈴木美和(新4年、長野日大)の二人に話を聞いた。

――早慶レガッタの準備はいつごろからスタートするのでしょうか。

山中 部門によって異なるんですけど、私が担当している施設部だと、10月から11月にかけて、お世話になる業者さんや役所の方々へのあいさつ回りに出かけます。そこからは施設の仮予約を入れる作業を12月までにします。年が明けて1月には、再度あいさつ回りに出かけ、メインの仕事となる役所への申請などの業務は2月です。その申請の許可が3月には下りますので、それをまとめつつ、隅田川周辺の、例えば客船や遊覧船を運営している会社や、消防や警察への報告会議の準備をして、関係各所へ説明します。そこまで終わるともう、開催まで2週間前後になってますので、詰めの作業をします。

鈴木 私が担当しているプログラム制作ですと、印刷会社へのごあいさつを11月から12月くらいまでにさせていただきます。そこから内部の引き継ぎをしたり、台割を組み始めたりしていって、いちばん忙しいのは2~3月ですね。

――なるほど。早慶レガッタの運営部門はいくつに分かれているんですね。

山中 運営委員会の中で学生が関わる部分に関して言いますと、お金の管理を含めた全体的な総括をする総務部、河川の使用申請や周辺施設の手配や使用申請を手がける施設部、コース設営がメイン業務の水路部、そしてプログラムを含めた宣伝活動を担う広報部の4部門ですね。

鈴木 水路部には私も所属していたんですが、実際にモーターを動かしてコースの設営などをする部門です。

早慶レガッタの舞台となる隅田川の使用申請もマネージャーの仕事だ(写真は早稲田大学漕艇部提供)

――マネージャー全員が早慶レガッタの運営に携わっているのですか。

鈴木 全員ではないですね。

山中 ただ、ほとんどは関わってます。4部門に全員が関わってるわけではないんですけど、早稲田と慶應それぞれのマネージャーは、何らかのかたちで携わってはいます。運営委員会に入っているのは、私と鈴木を含めた3人ですね。

鈴木 それ以外のマネージャーに関しては、広告金や協賛金を集める担当がいて、それを大学内のマネージャーに割り振って営業に回ってもらうという感じですね。

――山中さん、鈴木さんにとって、早慶レガッタの運営業務をするにあたって、苦労したことは何ですか。

山中 会場は台東区と墨田区、中央区をまたいでいる隅田川なので、それぞれの区役所に川の占用使用申請を出したり、建設事務所がまたそれぞれ違う場所にあるので、そこともやりとりをします。あとは、大会本部周りにテントを設置したり、選手たちの船を保管しておく場所の確保なんかも担当しました。

例えば役所に申請する書類も、ただ記入して提出すればいいのではなくて、一つひとつに理由をちゃんと説明できないといけません。役所の担当者の方から「これはどういう理由で使うの? 」と聞かれても答えられないことがあって。そうすると、「もう一度やり直してきて」と、追い返されてしまうこともありました。

鈴木 私は副務として主務の山中を支える立場でやってきました。山中が見えない部分なんかをサポートするというか、支えていくのが仕事かなと思ってます。早慶レガッタ関連ですと、山中が施設の仕事で忙しいならば、私はそれ以外の広報関係であったり、プログラム制作だったりとか、そういう仕事のサポートなどを意識しています。ですから、私は役所と交渉するというような業務ではなく、OBやOGの方々であったり、広告のご協賛をいただいている方々への対応だったりが主な仕事です。

プログラムを作成するとき、OB・OGの方々やご協賛いただける企業の方々との交渉をしたり、印刷会社と制作金額についての交渉をしたり。広報関係については、電通さんや博報堂さんと一緒に、盛り上げるためにはどうしたらいいかを考えて進めていきます。でも、どうしても運営資金的に厳しい部分も出てきます。そういうとき、やりたいことと予算を照らし合わせて、双方が納得できる折衷案を出さないといけないので、その調整が大変ですね。

――社会人さながらの仕事内容と量ですね。

山中 そうですね(笑い)。でも、学生のうちから社会の難しさというか、社会人として大切なところを学べるのは、早慶レガッタの運営に携わる中でのやりがいだと感じています。

――反対に楽しかったと思えることはありましたか。

山中 苦労したことでもあるんですけど、やりがいを感じた瞬間はあります。パンフレットやプログラムに載せる広告や協賛金が大会運営の大事な収入源になるんですけど、それをいかに集めるかが難しいところなんです。担当者が回る企業さんのリストを自分で作成して、それをまとめるという作業をしてたんですけど、目標金額を達成するためにはどうすればいいかを考えないといけません。いままで通りでも大丈夫の場合もありますけど、やはり時代は変わってきますから、新しい案や作戦も練らないといけなくて。

例えば今年取り組んだことで言えば、来年に東京オリンピックがありますから、各自治体のボート協会さんが合宿を誘致している、という事実を知ったんです。そこで「早慶レガッタでコースを宣伝してみませんか」という新しい広告掲載のアイデアが出ました。今年はそれに取り組んでみて、2、3件新規で広告を得ることができました。

そうやって、自分で考えて動けば結果も出て今後につながることが分かりましたし、自分一人の力ではできないことも、周りの仲間たちが一緒に頑張ってくれることで達成できることもあると知りました。今年の分はまだ終わってませんけど、すでに目標達成率は高いものになっているので、OBやOGの方々からもほめていただけました。「いま、本当にいい経験ができているな」と実感してます。

本番での選手たちのサポートも、もちろんマネージャーの大事な役割だ(写真は早稲田大学漕艇部提供)

山中 もちろん早稲田大学漕艇部の主務として、部の会計も自分が担当してます。大会運営に関わるお金と部のお金を合わせると、相当な金額を動かしてますので、やはり緊張感はありますよね。1円でもミスがあってはいけませんから。そういうところには若干ストレスは感じますけど、自分の中ではそういう責任のある業務にはやりがいを感じますし、楽しんでやれてるかな、と思いますね。

鈴木 私は昨年、プログラム作成を担当させていただきました。山中が広告金を集める、と言いましたけど、集めたからといってそれで終わりじゃなくて、その広告をプログラムに掲載する、という仕事が残ってます。その広告って、すごい量があるんですよ。膨大な量の広告を一つのプログラムにまとめていかなければならないので、慶應側のプログラム担当の方とも連携を取りながら、印刷会社の人と相談して台割を決めたり、掲載スペースやデータを調整したりしていきます。

実は昨年、私がこの広告掲載でミスをしてしまって……。すごく落ち込みました。今年はこの業務を後輩たちに任せてて、私はサポートに回ってるんですけど、昨年の自分の失敗がすごく生きてるんです。失敗したことでたくさん叱られましたけど、私はそのおかげでたくさん成長できました。それに、その失敗を生かせる場があるということ、昨年の経験がムダにならなかったということが、とてもうれしいです。

――慶應サイドとも連携を取るのですね。

鈴木 基本的に仕事をする上で担当が早慶で決まってて、早慶の二人で仕事をしていくかたちになってますので、やりとりは頻繁にしてますね。

山中 雰囲気は仲よくやってますね。僕たち施設部の場合は、毎年担当大学が入れ替わっていくんです。今年が早稲田だったら、来年は慶應、という感じです。だから、担当する年によっては、早稲田側の後輩たちと接する時間よりも、相手の慶應側の後輩たちと話す時間の方が長いかもしれませんね(笑い)。

――88回という伝統のある大会ですが、新たに取り組みたいと思うことはありますか。

山中 具体的な話になると難しい面もあるんです。それこそ浅草寺周辺には、いつも人が多いですよね。そのあたりから人を引っ張ってくると、もっと盛り上がるんじゃないかと。新たに来てもらう人を増やすには、出店なんかも出しながら、人が集まってる場所から早慶レガッタの会場に人を連れてくるという考え方もアリなんじゃないかと思います。お祭り感覚の一部に、早慶レガッタという対校戦が広まっていく。そんなのも面白いと思うんです。もちろん、それらを実現するには、もっとたくさんのところに申請や交渉をしていかなければならないんですけど、それも早慶レガッタを盛り上げる一つの方法なのではないでしょうか。

鈴木 私はもっとたくさんの人たちに早慶レガッタを観てもらいたいと思ってます。いまは開催にこぎ着けることで手一杯になってしまって、その先の、ファンを増やしたり、観客を増やしたりするところまで、意識が回っていないように感じています。もちろん開催しないことには始まりませんから、開催に全力を尽くすのは大切です。もっと慶應と連携して、効率よく進める方法を考えつつ、次のステップに進んでいかなければならない時期にきてるのではないか、とは思っています。

早稲田と慶應の合宿所は実は隣同士。選手同士も日常的に交流がある(撮影・松永早弥香)

――最後の質問になります。これまで早慶レガッタを運営してきて、山中さんも鈴木さんも最後の年になりますよね。自分たちが携わってきた早慶レガッタが、この先どんな大会になっていってほしいと思いますか。

山中 やっぱり学生自身ではできないこともあるんですけど、それを受け止めてくれるOBやOGの方々がいます。だから、自分たちが思ってることや、やりたいことをしっかり伝える。そして実行するにあたって、OB・OGの方々が手をさしのべてくれるようなところまで持っていくところが、今後の課題ですね。僕たちのような運営に少しでも長く携わってきたマネージャーが、できるだけ業務をマニュアル化したり簡略化したりすることによって、進行に余裕を持たせてあげる努力をしていかなければなりません。

鈴木 これからどういう大会になっていってほしいかってことを考えたときに、いまもそれは実現できてるとも思ってますけど、やはりさらに地域に根付いた大会にしていってほしいなって思ってます。いまはまだ観客の多くがボート関係者だと感じてます。もうちょっと地域の方々や、隅田川付近の方々の交流の場としての早慶レガッタを作っていけたらいいのではないかな、と思ってます。

もうすでに、早慶レガッタというものを隅田川でやることによって、OB・OGの方々とか選手であったりとか、それぞれの人たちの心に響く、心に残る大会になっているとは思うんです。でもそれが漕艇部の関係者だけじゃなくて、地元の人とか、ボートと関係ないファンの方々の心にもっと訴えかけるような大会になっていってくれたらうれしいです。

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