野球

「点を取られなかったら、負けない」 関大エース肥後の覚悟

肥後はすでに、関大が誇る歴代ピッチャーに名を連ねている

関西学生春季リーグ 第2週

4月13~15日@滋賀・皇子山球場
1回戦 京大 1-0 関大、2回戦 関大 3-2 京大、3回戦 関大 5-4 京大

球春到来とともに驚きのニュースが飛び込んできた。関大が開幕戦で京大に敗北。大学選手権出場を目指す関大は、出鼻をくじかれた。関大の開幕投手は肥後皓介(4年、広陵)。昨年の絶対的エースだった山本隆広(現・大阪ガス)がけがで離脱したチームを守り抜いた実力派だ。昨シーズンは防御率リーグ3位の好成績を残した。ゼロにこだわり続ける新エースを、関大打線は援護できなかった。

エースの力投に、3回戦で打線が応えた

1回戦は京大先発の藤原風太(4年、東海大仰星)に苦しめられた。関大のヒットはわずか3本。9イニング中7イニングを三者凡退に抑えられ、終わってみれば藤原の球数はわずか90球。攻撃の糸口さえつかめない完封負けだった。

関大先発の肥後も、エースらしい投球で京大打線を封じた。8回、相手投手の藤原に二塁打を打たれ、そこから連続ヒットを許して1点を失った。「点を取られたらダメ」と、肥後。決して悪い内容ではなかったが、藤原に粘り負けた。

一夜明けての2回戦は延長11回に及ぶ激闘となった。
なんとしても勝って3回戦に持ち越す。その思いを背負って関大のマウンドに上がったのは、左の高野脩汰(3年、出雲商)。この日好調のストレートを武器に、10回で16奪三振。そして11回、その力投が実る瞬間が訪れた。1死二、三塁のサヨナラ機で、本城円(4年、履正社)が代打で登場。死に物狂いで狙った5球目のスライダーをレフトへ落とし、3回戦への道を切り開いた。

2回戦でサヨナラタイムリーを放った本城(左から2人目)

運命の3回戦。ここまでつないでくれた仲間の思いを胸に、エース肥後がマウンドに立った。立ち上がりは好調とは言えなかった。連打を浴び、1回に2失点。「強気の気持ちを忘れかけてました」と肥後。そこからは意地だった。相手打者に次々と三振にとっていった。

関大打線は1回戦で抑え込まれた藤原から突破口を開いた。2回から4回まで1点ずつ。3番の野口智哉(2年、鳴門渦潮)や4番の倉川竜之介(4年、桜宮)だけでなく、リーグ戦初出場の1番安藤大一郎(2年、西条)、代打で出た目片洸希(2年、比叡山)ら、フレッシュな顔ぶれも目覚ましい活躍を見せる。2点リードで迎えた9回、肥後は1点を失ったが、何とか逃げ切った。全員の力でつかんだ勝ち点だった。

2点以上取られたら負け

エースの肥後は開幕節の1回戦と3回戦を完投した。どちらも内容にはまったく納得していない。9回1失点の好投を見せた1回戦は、その1点に唇を噛んだ。12奪三振で勝利を収めた3回戦は「手応えはなかった。ヒットをいっぱい打たれすぎた」と振り返った。タフさに自信はないというが、中1日で9イニングを投げ切ることをつらいとは感じない。気持ちで勝負してきた。

肥後はバッターに立ち向かう強い気持ちと、ゼロへのこだわりを胸に、マウンドに立つ。昨年は勝てた試合よりも負けた試合の方が多かった。「勝てるピッチングがしたい」と強く思った。関大打線に爆発力がないのは否めない。そんなチームを勝たせるために必要なのは、点を取られないピッチングだ。「今年は2点以上取られたら負けのつもりで。点を取られなかったら負けない。取られても1点まで」。そう簡単に、満足はできない。

肥後は「勝てるピッチング」を目指している

関大が誇る歴代のピッチャーたちに、肥後は名を連ねつつある。エースとしてのプレッシャーは確かにある。だが、マウンドに上がれば吹っ切れる。メンタルも技術も、すっかり成長した。「エースが打たれたら、チームの雰囲気も悪くなる」。自分が抑えることで、野手が楽に打席に入れるようにしたい。

関大の投手陣に不安はないと、誰もが口をそろえて言う。なぜなら、肥後がいるからだ。

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